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ういうい、捕まったのだ。

 はい、こんにちは、最初だけの蓮華です。


 私は、今日もあれです。パソコンと睨めっこしておりました。

 仕事するふりしてたまにソリティアとかマインスイーパとかやってるのは内緒です。


 そんな中、急に私の携帯が着信を知らせます。


 ん、白頭巾ですね。これは珍しい。


 普段、私との連絡は円さんからが多いのですが。


「はい、蓮華です」


 少しの胸騒ぎ。

 それは的中しました。


「あ、蓮華お姉ちゃんっ! ま、円お姉ちゃんがっ!」

 

 通常時は感情の起伏が乏しい白頭巾が慌てております。

 これは、よほどの事が起きた、と。


「どうしましたか?」


「円お姉ちゃんがっ! インターポールとかいう5人組に掴まったのっ!」


 インターポール。国際刑事機構ですね。

 略称ICPO、あの世界的な怪盗を追ってる警部さんが所属していることで有名です。

とはいえ。


「それはおかしいですね。実際のインターポールには捜査権も逮捕権もありませんよ」


 確かにインターポールは国際指名手配などを司りますから、海外でも大暴れの円さんにそれが及ぶのは別段驚くことではありません。

 

「とりあえず、掴まった時の状況を報告してください」


 普通に考えれば、このインターポールオフィサーは偽者でしょう。

 逮捕権が無い事は円さんも知ってるはず。


 白頭巾の話はこうです。


 円さんの車で走行中、急に数台の車に囲まれ急停止。

 中から、5人の外人女性が出てきて自分達をインターポールと名乗りました。


 円さんは、特に抵抗することもなくその人達について行ったと。


 なるほど、この5人ていうのが相当やばい人達だったのですね。

 円さんなりに感じとったのでしょう。

 だから、白頭巾を巻き込まないように無抵抗で拘束された。


さてさて、円さんは今どこに。

 そして、この5人は何者でしょうか。



 ういうい、円なのだ。

 なんか、掴まったのだ。


 目隠しをされ、どこかに連れていかれた。


 ついた場所は倉庫。

 私は椅子に縛られた状態で目隠しを解かれた。

 手足は鎖で拘束されているが、椅子は回転するタイプで左右になら回れる。


「まずはここまでご足労願いご苦労」


 私を囲む五人の女性は全員金髪。ついでに私も金髪。なのでここには金髪しかおらぬ。


「お前ら、何者、なの、だ」


 ICPOってのはどうせ嘘だ。

 そもそも、あの機関には逮捕権も捜査権もない。

そして、こいつらからは強い血の臭いがする。

 それがとても深く染みついている。


「そうだな、自己紹介しておくか。私はシュミット。で、この子達が右から・・・・・・」


「フォッケ」「ブローム」「ドルニエ」「ハインケル」


 椅子を回され、それぞれの前に顔を向けられる。

 皆、私の顔を見ながら名を呟いた。


「で、私達全員で・・・・・・ミドガルドシュランゲ」


 その名を口にして・・・・・・。

 椅子は元の位置。

 全員の雰囲気が一気に豹変した。


 まるで深い地の底へ引き釣り落とされるように。

 黒い炎に包まれる。


「見つけたぞぁぁうぇっ! 貴様、貴様、貴様、貴様ぁああぁあああああああああああああ」


シュミットとかいうリーダーっぽい女が私の髪を鷲津噛む。


「数年前、私の同胞が殺されたっ! そいつを探して、探して、探して、探して、やっと見つけたっ! なのに、なのに、そいつはもうこの世にいなかったっ!」


 う~ん、なんとなく話が繋がってきたの、だ。

 つまり、その同胞とやらを殺ったのは・・・・・・。


「もう分かったなぁぁあぁ? それは貴様の姉貴分、ドールコレクターとかいう小娘だっ!」


やっぱり。私は姉御の代わりって訳なの、だ。


「貴様、奴の後継者なんだろ? なら負債は払ってもらわんとなぁああ」


 長い天然金髪を振り乱しながら、顔を近づけてきた。

 う~ん、さっきまで普通に美人だったのに、今は目が完全にいってるのだ。


「分かったの、だ。姉御が殺って、この状態、ならこれはこれでなにかあるのだ」


 姉御が私に被害が及ぶ状況を作ったままにしておくわけがない。

 これは、姉御なりの置き土産と考えるのが妥当。

 

「で、大人しく殺されればいいの、か? 拷問されればいいの、か?」


 よほど、恨みが強いと見える。ただでは殺さないだろう。


「・・・・・・本当はこの場の全員で八つ裂きにしてやるところだが・・・・・・」


 シュミットが私の目をじっと見る。


「貴様も殺人鬼。なら、本当の舞台は別にある。だから、今はテストをしてやろう」


 そういうと、シュミットが一本のナイフを取り出した。


「今から、貴様の拘束を取る、それは右手だけだ」


 言った通り、鎖は解かれ私の動かせなかった右手だけが自由を得る。


「さぁ、その手でナイフを握れっ。試験を始めるぞっ」


 渡されたのは、元から私が持っていたナイフ。


 一体、なにをさせようと言うの、だ。


「これから私達の内誰か一人が貴様を攻撃する。それを瞬時に判断して防いでみせろっ!」


 ん、殺気とか感じろって事か。

 いや、それは無理なの、だ。

 だって、こいつら全員私への殺意が半端ないのだ。


「ヒントをやろう、この中で一人だけ本当の事を言い、残りは全部嘘だ。それを踏まえて考えろ、制限時間は五秒」


 五秒て。


 5人が私を取り囲む。手には全員ナイフ。


「ブロームがお前を攻撃する」とフォッケが言った。


「フォッケは嘘を言っている」とブロームが言った。


「私は貴様に攻撃しない」とドルニエが言った。


「お前を攻撃するのはブロームだ」とハインケルが言った。


「ドルニエが言った事は本当だ」とシュミットが最後に言った。


 この中で一人だけ本当の事を言っている。

 てことは、私を攻撃してくるのは。


フォッケが本当なら、同じ事を言ってるハインケルも本当になる。なので、この二人は除外。

 そして、ドルニエが本当なら、シュミットが嘘になり矛盾する。

 となると、本当の事を言ってるのはブローム。他の全員が嘘。


 なら攻撃してくるのは・・・・・・ドルニエ。


 甲高い音が室内を駆ける。

 

 ドルニエが振り下ろしたナイフを私のナイフが受け止めた。


「ギリギリなの、だ」


「ほう、防いだか。なら、次だ」


 なんだ、まだ、あるのか、なのだ。


「今度はこの中の誰か一人が嘘をついて攻撃する、制限時間は同じく5秒」


 同じく五秒て。


 言うなりシュミットが一歩下がった。

 逆に他の四人がさらに近づく。

 

 先ほどより判断する時間をさらに早くする必要がある、のだ。


「では始める。いいか、この四人の中の誰かが攻撃する、よく話を聞いておけ」


 シュミットが薄ら笑いでそういうと四人がナイフを構えて・・・・・・。


「私はお前を攻撃しない」とフォッケ。


「フォッケもハインケルもお前を攻撃しない」とブローム。


「私は貴様を攻撃したりしない」とドルニエ。


「ドルニエの言ってることは本当だ」とハインケル。


 全員が言い終えて。


 カウントは始まる。


 5。

 

 フォッケが嘘ならブロームの発言と矛盾する。


 4。


 ブロームが嘘ならこっちもブロームと矛盾する。


 3。


 ドルニエが嘘なら、ハインケルの発言も嘘になる。


 2。


 ハインケルが嘘なら、ドルニエ自身も嘘をついてる事になる。


 1。


 四人の発言は辻褄が合う。


 なら嘘をついて攻撃してくるのは・・・・・・。


 0。


 奥から凄まじい踏み込みで、私にナイフを突き立てるのは。

 シュミット。


 交差するナイフ。


 火花が散る勢いで刃先同士が滑る。

 

 間髪で軌道を逸らせた。


 首に一筋の赤い線が浮き出る。


「・・・・・・ふん、合格にしてやろう。決着はエミールがやられた殺人鬼決定戦でつけるとしよう」

 

 あぁ、あの時か、なのだ。

 たしか、私が一晩中、大雨の中踊ってて風邪引いた時の・・・・・・。

 なんで、あんな事したのか。


「例え逃げても、地の果てまで追いかける。覚悟しておけっ!」


 こうして、ミドガルドシュランゲの面々は去っていったのだ。


 椅子に縛られたままの私を残して。




「いやー、円さん探しましたよー。で、貴方をさらったのは誰だったんです?」


 一〇分くらいでレンレンと白頭巾が助けにきたのだ。

 レンレンは全く慌てた様子もない。

 私の位置はつねに把握してるから、その気になればもっと早く対処できたはず。


「ミドガルドシュランゲとか言ってたの、だ」


 鎖を専用のチェーンカッターで切ってもらい立ち上がる。


「ほー、某国で有名な殺人集団じゃないですかぁ。よく無事でしたねぇ」


 そう言いながらもレンレンは全く驚いた様子もない。

 さては、私が狙われてることすでに知ってたの、だ。


「そういや、ドールコレクター宛てに届いてました。殺人鬼決定戦のご案内。彼女は前回優勝者ですからね。でも、彼女は出られませんね、そして、ミドガルドシュランゲもそれに出てくるでしょう、う~ん、そうなるとどうしたものか」


 やれやれなのだ。なにがどうしたものか、だ。


 あの時、姉御は参加者全員皆殺しにしたから結局情報は全く得られなかった。


 もしかしたら、ミドガルドシュランゲの他にも色々いたかもしれない。


 レンレンは今度こそ情報が欲しいよう、だ。


 レンレンの思い通りに動くのは癪だが。


「・・・・・・姉御が優勝した大会なの、だ。なら、私もその道、なぞるべき、か」


 もし、今の私とあの時の姉御が敵同士でその大会に参加したとすれば、私は普通に負けて殺されるの、だ。


 だが、今の世に姉御と同等、それ以上の殺人鬼など存在しない。


 なら、その大会、私の一人勝ちなのだ。


 誰がこようと、


姉御のように皆殺しにしてやろう。

 ちょっとだけ血がでました。

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