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あのね、殺人鬼ナンバーワン決定戦みたいなの。

 二日遅れの葵誕生日記念回。おふざけ回に近い感じです。

どうも、どうもー、葵だよ。


 私は今、一人である国に来てるんだよぉ。


 それもこれも・・・・・・。


 時は三日前。


「殺人鬼ナンバー1決定戦ー?」


「ええ、四年に一度開催される、殺人鬼達のオリンピックみたいなものですね」


 ここは、蓮華ちゃんの仕事場。つまり執行局の最下層。 


「えー、それに出ろって? 私はそんなのに興味はないよぉー」


「まぁまぁ、そういわず、これは世界中から有名な殺人鬼達が集まるイベントですからね、私としてもあの世界の現状を知っておきたいんですよ」


 本来、殺人鬼ってのは闇で蠢く存在。だから蓮華ちゃんですらその全てを把握出来てるわけもなく。

蓮華ちゃん的には、いつ関わるかもしれない殺人鬼の情報が事前に少しでも欲しいんだね。


「う~ん、理由は分かるけど・・・・・・」


 そう言いながら、すぐ近くのベッドに視線を向ける。


「う~、うう~」


 円ちゃんがとても苦しそうに悶えている。


「円さんは昨晩、猛烈に雨が降りしきる中で、なぜか一晩中踊り狂っていたのでこうして風邪をひいてしまいました。なのでドールコレクター一人で行ってきてください」


「いや、だから行くとは一言も・・・・・・」


「あ、姉御、スマネェ・・・・・・スマネェ、のだ・・・・・・踊れば、雨は止むと、思って・・・・・・」


 円ちゃんが譫言のように唸っている。たしかに晴れたけど・・・・・・。

そもそも、こんな状態の円ちゃんを置いて私だけ出かけるなんて。


「勿論、タダでとは言いませんよ。ここにリョナ子さんの使用済みストローがありま・・・・・・」


「蓮華ちゃんっ! そんなのっ・・・・・・やるっきゃないじゃないっ!」


 

こうして、私は殺人鬼ナンバーワン決定戦が行われる会場に来たのでした。



ここ実際数年前にオリンピックが開催された都市だね。終われば、こういう箱物は維持費だけが膨大にかかり朽ちていくだけ。そこをうまく再利用した感じかな。


 ドーム型のスタジアムに入る。

受付もなにもない。


 参加資格は殺人鬼って事なんだけど。実際、そんなの自己申告。

 でも、一般人じゃここでこんな事が行われてるなんて知るよしもない。


「ふ~ん、そこそこいるじゃない」


 私が入った時点で、参加者っぽいのが100人以上はいた。

 これ全部殺人鬼なのかなぁ。


 横目でちらちら顔を確認するも。


「特にめぼしい人は・・・・・・」


 そう思っていたら、会場がどっとざわついた。


 入り口から誰か入ってきたみたいだね。


「お、おい、あれ、たしかあのゾディアックファミリーの幹部達だよな・・・・・・」

「あ、ああ。超有名な殺人鬼集団だ。背の小さい眼鏡の方が知力のセオドア、長身の女が武力のキャロライン、どちらもゾディアックファミリーの要」


私も彼らに目を移す。

 青と黄色の外套を羽織る二人組。

 ふ~ん、なるほど。たしかに他の者とはちょっと違うかも。

 

 ゾディアックファミリーって名前だけは聞いたことがあるよ。だけどボスと直近の幹部だけは本当に存在してるのかって位全くの謎みたいだね。他の幹部達は各地に散らばって暗躍してるらしいけど。


「あっ! き、来たぞ、ミドガルドシュランゲのエミールだっ!」


 またも響めく会場内。

 今度は金髪三つ編みで某国の民族衣装ディンドゥルっぽい衣装を着た女性。


 ミドガルドシュランゲ。これもよく耳に挟むね。たしか女性5人で構成された殺人グループ。彼女はその内の一人か。


「あぁ、奴らがいるんじゃ勝ち目はねぇ。これは棄権するしか・・・・・・」

「だな、賞金は魅力的だが、死んだら終わりだ」


 あの人達を見た参加者の何人かが来た道を戻っていく。


 その後も・・・・・・。


「あっ! あいつはリドルシーカーのっ!?」

「待て、あっちはバタフライプリメールのっ!」

「そっちはイレジュラーバウンドのっ!」


 誰か入ってくる度周りが騒ぎ出す。


 有名な人どんだけいるんだよぉ~。


 そもそもみんなに顔ばれしてるってどうなのかな。


「駄目だ、こんな連中相手じゃみすみす殺されるだけだっ」

「お、俺は降りるぜ、まだ死にたくねぇ」


 こんな感じでどんどん参加者は減っていき。


 最終的には40人くらいになりました。


「ザ、ザザ、ザザ、み、皆さん、お集まりですね、ザ、ザザー」


 出入りが落ち着いてきた所でドーム奥の巨大モニターが光り出した。


 ノイズとともに機械的な音声が流れる。


「これより10分後に大会を開催したいと思います。皆様は指示があるまでそのまま待機してくださいますようお願いいたします」


 ついに始まるみたいだね。


 さて、そうなると・・・・・・。


 私は改めて周囲を探る。


 いた、いた。

 最初にいたお仲間とは離れて今は一人。


「どうも、どうもー」


 私がまず近づいたのは。


「あ? なに、あんた。私になにか用か?」


 青と黄色の外套、ゾディアックファミリー、武力のキャロラインちゃん。


「いや、有名な貴方と是非お話がしたかったんだよぉ」


「は、失せな。始まったら私は仲間以外を皆殺しにする。お前もすぐに殺してやるさ」


 おやおや、怖いねぇ。いきなり殺す発言。これはかなり好戦的な性格みたい。


「相当な自信だよぉ、今まで相当修羅場を潜ってきたんだね」


「当たり前だっ、私の前に立って今まで生きてた者はいない。ゾディアックファミリーの中でも私が一番人を殺し、そして誰よりも強いっ」


 ただの人殺しではなく、腕も立つって事か。

 確かに長身でさらに肉体も鍛え抜かれてる。言葉も自信に満ちあふれてるね。


「おいおい、いいのか、もう始まるぞ、私からは出来るだけ離れたほうがいい、じゃなきゃ真っ先に殺すぞ」


「うふふ、それは困るよぉ~」


 一言、二言会話していると、時間が来たみたい。


 再びモニターが白い光を放った。


「ザーザザー、あぁ、皆様、お時間になりました。今回の参加人数、こちらが想定していたより少々多いようですので、これより予選を始めたいと思います」


 予選かぁ。今で40人だから、これをどれだけ減らす気かな。


「ザザー、では予選開始です。まずは・・・・・・」


 妙な沈黙、不気味な間。


「貴方の一番近くにいる人を30秒以内に殺害してください」


 殺害してください。

 その言葉が終わるのと同時に。


 私のナイフが。


 隣のキャロラインの胸に突き刺さっていた。


「・・・・・・あ?」


 キャロラインは自身の胸に深く突き刺さるナイフをじっと見ていた。


「え、あれ、これ、あ・・・・・・れ? なん・・・・・・」

 

 脳が理解し、それにより漸く体が崩れていく。


「うふふ、ちゃんと聞いてないからだよぉ」


 青と黄色の外套にもう一色赤が加わり、元の色を浸食する。


 人間て脆いんだよ。いくら鍛えてようが肉体がナイフを弾くことはない。

 

 殺せという単語に一切の躊躇なくそれを実行する。

 考えるよりも早く。

 当然の行為のように。


 この会場で誰よりも早くナイフを取り出し。

 この会場の誰よりも純粋にそれを振るう。


「最初に少しでも途惑ったらそこで終わり、考えても終わり、呼吸と同じように人を殺せなきゃ駄目だよぉ」


 脳が指示を理解してから構えても、三十秒で相手を仕留めるには相当の実力差がなければ無理。

 実際、そこら中で泥仕合が始まっていた。


「ザザー、はい、時間でございます。実行できなかった者は不合格、速やかに退場してください」


 何組かはお互い傷を負わせてはいるものの致命傷にはならず向かい合っている。

 この中で相手を殺したのはごく僅か。


 終了の合図、それと共に視線が一気に私に集まった。


「あ、あのキャロラインが・・・・・・」

「な、なんだ、あの女」


 あぁ、しばらく猫被ってようと思ったけど、もう無理みたいだねぇ。

 どうせ注目されたなら、いっそ。


「うふふ、私は葵だよぉ、ドールコレクターって呼ばれてる殺人鬼。この大会、優勝するつもりだから・・・・・・」

 

 これからちゃんと見てるんだよ。一切の油断をしちゃ駄目、つねに私を警戒して。

 私だけを見つめて。


「よろしくだよぉー」


じゃなきゃすぐ終わっちゃう。


 薄氷のような笑顔で、奥底に沈んでいた感情を浮かせる。

 浮上したヘドロのような塊が肉体を突き破り表に溢れでる。


「・・・・・・・・・・・・な、んだあれ、は」

「・・・・・・・・・や、べぇ」


 自己紹介も終わった所で次の試練だよぉ。


 予選を抜けたのは全部で10人。

 最初に騒がれていた者達は順当に残ってるね。

 あぁ、キャロラインちゃんだけはいなくなったけど。


「ここからは、個人の資質を競って頂きます、まずは各自別室に向かってください」


 ここからは個々の能力を計るみたい。

 私は別室に案内された。


 そこはコンクリートに囲まれた狭い部屋。

 奥に箱には刃物や道具、薬品なんかが無造作に詰め込まれていた。


 中央には椅子に縛り付けられた人間。


 この為に連れてこられた人かな。

 手も足も縄でグルグル巻き、一切身動きは取れない。

 目隠し、そして口にはガムテープ。


 涙を流し、僅かに動く首を横に何度も振っていた。


 しばらくして室内にあるスピーカーから声が流れ出す。


「ザザー、皆様、お待たせしました。では早速予選を始めたいと思います。皆様の前に縛られている人間がいるかと思いますが、その者を合図と共に殺してください。ですが条件があります、出来るだけ外傷を抑えた形でそれを行ってください。殺した時点で傷が小さいほど高ポイントになります。箱の中身をご自由にお使い下さいませ。では皆様のご健闘をお祈りしつつも始めたいと思います。それでは、スタート」


 スピーカーから開始の音が鳴る。


「出来るだけ外傷を抑えるかぁ」


 とりあえず道具箱を漁ってみますか。


 ナイフ、注射器、ノコギリ、アイスピック、各種洗剤、スタンガン、色々あるねぇ。


「さて、何で殺そうかなぁ」


 まず、ナイフ、ノコギリなどの刃物は論外。

 スタンガン、これも例え殺せるほどの威力だったとしても、入り口に電流斑という皮膚凝固ができる。浴槽にでも入ってれば別だけどそれもない。

 アイスピック、注射器などは外傷を小さく抑えられるけど。


「ま、これが正解かな」


 私は2種類の洗剤を取り出す。


 下準備として椅子に縛られている者の口元のテープを剥がす。


「はぁっ! はあっ! た、助けてくれっ! いきなりここに連れてこられたんだっ! た、助けてくれっ!」


 なるほど、この大会のために連れてこれたんだね。


「いや、貴方は今から死ぬんだよぉ」


 男はそれを聞いてさらに騒ぎ出した。


「ふ、ふざけるなっ! 俺はこの前結婚したばかりでっ、もうすぐ子供が生まれるんだっ! た、頼む、た、助けてくれっ!」


 う~ん、そうは言っても助けたら私が失格になっちゃうし。


「ごめんよぉ、でも殺すよぉ」


 私は男を無視して次の準備に移る。


「た、頼むっ! 助けて、助けてください、俺は無関係で、ただ普通にっ! お願い、お願いしますっ! 貴方に少しでも人の心があるのならっ!」  


 人の心ねぇ。


「ないよぉ、そんなの。最初から、生まれたときからないんだよぉ。人を殺すのに罪悪感もないし、むしろ嬉しいし、楽しい位。そう生まれてきたんだからしょうがないよね。生まれつき目が見えなかったり、耳が聞こえなかったり、LGBTみないな、そんな人達と一緒だよぉ。どうしようもない状況でもそれを抱えて生きていかなきゃならない。世間がそれを否定しても私は私でいなきゃならない」


「うるせぇええ、いいから早く縄を解けぇええええ、くそがぁあああああああっ! この異常者ぁああああああああああああああっ!」


 よく言われるよぉ。でも私にしては貴方達の方が異常者。よく人を殺さずに生きていけるねぇ。


 2種類の薬品を混ぜる。


 これにより硫化水素が発生する。


「じゃあ、私は行くよぉ。お子さん、元気に生まれるといいねぇ」 


 ここにいたら私も巻き添えになるから部屋から出る。


「い、行くなっ! た、助けて、頼む、頼むからぁああああああああああああ」


 バタン。声はかき消される。


 硫化水素は毒性が高い。この狭い室内ならすぐに死ぬだろう。

 呼吸抑制作用があるから、まずは麻痺が始まり、凄まじい悶絶。

 猛烈な頭痛、吐き気、悪寒、激しい痛みを伴う気管支炎。

 よく、これを自殺に使う人がいたけど、全くお勧めしないよぉ。


 途轍もなく苦しむ事になるし、後々死体が緑色に醜く変色する。周囲を巻き込む可能性も非常に高い。万が一生き残って全身麻痺なんてなったらもう地獄だよ。


 指示では殺した時点で外傷が少ない方が高ポイントといってたから、これで大丈夫。死んだ時点ではまだ体は綺麗だよぉ。



 こうして、私は無事この試練を乗り越え。

 

 通過したのは私を含め五人。


「ザザ―、これより五人による決勝戦を行いたいと思います。決戦会場はこの巨大迷路でございます。ここには要所要所に道具が置いておりますので、それらを使って効果的に敵を排除してくださいませ。それではスタートです」


 残った五人が連れてこられたのは音声でも言ったとおり巨大な室内迷路。建物を入った感じでは相当広いね。

 まず、スタート地点に用意された道具箱を見る。元々持ってたナイフは取り上げられちゃった。


 刃物の類いはないね。あるのは小型の消火器、ほか電線や工具、後は薬品が多数。一見ガタクタばっかり。

これらを利用して敵を倒せって事ね。

 ペンチやドライバーなんかは武器になりそう。


「他の場所にはもっと強力な物があるんだろうけど・・・・・・」


 今ある物で少しだけ用意してこうか。


 数十分後。漸く、私は道具を持ってここから移動することに。

 

 

 長い直線、そこの奥に一人の女性が見えた。


「おっ」


「あ、標的はっけ~ん」


あちらも私に気づいたみたい。

 あれはたしかミドガルドシュランゲのエミールちゃん。

 金髪の三つ編みを揺らしながらこちらに近づいてくる。


 手にはドライバー。すでに血がこびり付いてる。もう誰か殺ったのかな?


 対して私は小さな消化器を構えた。


「あはは、なになに、それで殴る気? 私の道具の方が断然早いよーっ!」


 ある程度距離をつけたところで、エミールちゃんが一気に加速。


「殴る? 違うよぉ~、こう使うんだよー」


 迫るエミールちゃん目掛けて、消化器を向けて・・・・・・。


 点火。


 消化器は勢いよく発射。


 エミールちゃんの顔面にそれが激しく衝突した。

先端が顔を砕く。


「あぎゃゃああああああああああああ」


 お、上手くいったね。

 消化器を分解、内部に酸素と可燃性ガスを充填、それを一気に燃やす事で高温高圧の燃焼ガスと発生させる。瞬間的なもので動作は一秒もないけど、こうやって使う分には充分。


 顔を潰され地面で転げ回るエミールちゃんに近づく。

 このまま手から離れたドライバーで刺してもいいんだけど。


「せっかくだからお望み通り、殴ることにするよー」


 吹っ飛んだ消化器を拾い上げ、エミールちゃんの前で両手で掲げた。


 それを何度も顔に叩き付けて。


「さて、どんどん行くよぉー」


血と涙が混じる潰れた顔を見下ろして。

 まずは一人目。

 

 迷路の途中でまた箱を発見。

 中身はほとんど同じだね。薬品の種類も増えた。


 ふむ、これとこれがあるって事は、誰かあれを使いそうだね。

 事前に予防しておきますか。


 また消化器があったので、今度は別な物を作ろうー。


 ループする道を把握してまた工作する。

 

 材料、工具、薬品、燃料、ランダムのようで組み合わせによってはなんでも作れるね。


 また消化器片手にレッツゴー。

 結構時間経ったけど、参加者はあとどのくらいかな。


そして、また長い直線にて敵と遭遇。

 

「おっ! いたぜっ!」


 手には大きなレンチ。それに血がこびり付いてる。この人も誰か殺ったのかな。

 あれは誰だっけ、なんとかのなんとかって人。まぁこの際どうでもいいや。


対して、私も消化器を構える。


「はぁ? なんだそれで殴るのか? その前にこれで頭割ってやるぜっ!」


 ある程度距離を詰めたところであっちが加速。


「殴る? 違うよぉ、これはこう使うんだよ~」


 消化器にとりつけたコンプレッサ―ガンのトリガーを握る。


 すると、激しい火炎が放射された。


「うがあぁああああがあああああああああああああああああ」


 炎にまかれ、男が踊り出す。


中身で威力と飛距離が変わるけど、今回は〇〇を使用。あれを外して、あれで圧縮空気をあーしてこーする事で完成。


「大丈夫、火だるまって痛いの最初だけ。すぐに脳内物質が痛みを抑えてくれるから、私は火だるまになったことないから多分だけどねぇ」


 完全に反撃の恐れがなくなった所で真っ黒になった男に近づく。

 その頭を蹴り上げると簡単に折れ曲がった。


 さて、まだ終了の合図はない。後何人残ってるんだろう。



 普通はなるべく慎重に行動するよね。

 待ち伏せもいいけど、私は早く帰りたいから動く。


 こうして迷路をグルグル回っていると。


「やぁ」


「お、いたねぇ」


 意外にもあちらから顔を見せた。


「私はゾディアックファミリーのセオドア。多分、貴方で最後ですね。では早速死んでもらいましょう」


 背の小さな眼鏡の男。

 知力のセオドアさんだっけ。残ってった事はこの人は慎重に行動してたんだね。


 でも出てきた。それはそれなりの勝算があるって事。


「さっき、これを見つけましてね。いまからこれを使用します」


 手には缶らしきもの。多分、毒かな。


「強力な神経ガスです。空調の風下に立ったのが運の尽きですね。効果は一瞬です。それではさよなら」


 バイナリー兵器。VXガスかな。

 化学兵器の中でも最強クラス。殺人専用化合物。

 神経ガスはアルコリンエステラーゼに結合して機能を奪い、過剰興奮を引き起こし痙攣などの後、心停止が起こる。


 発射するまで無害とはいえこれは強力すぎるので使用者も非常に危険。風上とか風下とか正直関係ない。皮膚に少量ついただけで死にいたる。


「それ、私にも効かないよぉ」


 それでも使用してくるって事は、相手は予防していたんだ。

 私と同じでね。


「な、なぜ、平気なんだ。あ、貴方も・・・・・・」


 こんなチートクラスの武器が用意されてるならその対抗策もなければ不公平。


「用意されていたプラリドキシムヨウ化メチルを服用しておいたの。これは貴方も知ってる通り、アセチルコリンエステラーゼに可逆的に結合する事で神経ガスの分子が入ってきても結合して壊してくれる」


「そ、それを、ただの殺人鬼が知ってたなんて・・・・・・」


 私は構わず進んで行く。


「そうだよぉ、私は殺人鬼。だから貴方はそれらしく殺してあげるよぉ」


 猟奇的に、無慈悲に、笑いながら、殺人鬼っぽくね。



「あぎゃっ!」「ひゃなぁっ!」「うがぁ」


 工具箱にあった道具を片っ端から突き刺していく。

 体、顔、耳、鼻、目。


 全部使った所で大きく痙攣していた男が動かなくなった。


 ここで。


「パァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、終了です」


 大会が終わった事を告げるブザーが鳴り響く。



 閉会式は私一人。


 メダルの代わりって事で、なんでも一つだけ与えてくれるって事だけど。  


「いかがでしょう、巨大な麻薬マーケット、人身売買の市場、それらの権利。なんでも貴方の物でございます、勿論、破格の賞金でも、大企業の過半数を占めるだけの株券でも、金塊でも、それこそ人間でも構いません」


う~ん。特に欲しいのはないなぁ。


 ここで電話はかかってきたの。


「あ、ドールコレクターですか、どうです、そろそろ終わった頃かと思いまして」


「うん、今丁度終わったとこだよぉ」


「お、では優勝したのですね。流石です。それで厄介な人はいましたか?」

「ん~、特にいなかったよぉ。それより円ちゃんの具合どうかな?」


 そうそう、円ちゃんの様子がずっと気になってたんだよぉ。


「あぁ、円さんは、姉御早く帰ってきてくれ、プリンが食べたいのだって言ってます」

「食欲があるなら大丈夫そうだねぇ」


 快方に向かってて良かったよぉ。


 ここで、私に一つ欲しい物が出来たの。


「あ、スピーカーの人、欲しい物が決まったよぉ」


「ほう、なんでしょう?」


 私はにっこり笑って。


「プリンにするよぉ。それも飛びっきり美味しいので」


 

ちなみに、帰還後、私が本当に欲しかったリョナ子ちゃんのストローだけど。


「私は、あげるとは一言も言ってませんよー。ここにありますって自慢しただけです」

「わぁ、さすが蓮華ちゃんだよぉ、でもそう言うと思ってたからもう金庫から抜き取っておいたんだよぉ」


「なんですってぇっ! いつの間に・・・・・・ふふふ、な~んて、それも予想済みでしたので、あそこには偽物を置いておいたんですよー」

「えー、そんなぁ・・・・・・うふふ、な~んて、それも読んでいたから別の保管場所にあったのも取っておいたんだよぉ」


「なんですってぇっ! まさかそこまで読まれていたとは・・・・・・な~んて、それも私は気付いていましたので、そこの保管場所にあったのも偽物にすり替わってますよー」

「えー、あれも偽物なのぉ・・・・・・な~んてね、それも知ってたんだよぉ、蓮華ちゃんが本当に大事なものはその机に入っているからそこからもう抜いたよぉ」


「な、なんですってぇーっ! まさかそれすら知っていたたとは・・・・・・な~んて、実はそれも・・・・・・」

「嘘でしょー、もう蓮華ちゃんには敵わないなぁー・・・・・・な~んて、それもお見通しだよぉ」


 これがこの先ずっと続いていって、最終的にお互い疑心暗鬼になり、途中で本物が混じってたけど、もうどれがどれだか分からなくなったの。

 あまりに雑だったので一回お蔵入りにしたのですが、やっぱり出す事に。後で少し修正するかもです。

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