わわ、受け継がれし者達に目をつけられたんだよっ!
今回結構適当です。
チョリラリ~ン、紅子だよ。
今日も、つまらない学校へ来ている。
あぁ、勉強も嫌い、上辺だけの友達付きあいも面倒。
唯一いいことは、白雪さんに会えることだけ。
私は一日中、彼女を目で追っていた。
そしてそれは昼休みの事。
「白雪さん、今日は学食なんだっ!? じゃあ、私も行こうかなっ」
「いや、来なくていいから」
白雪さんはいつもは自分で作ったお弁当を持ってきてるのだけど、今日は違うみたい。
相変わらず態度が冷たい、だが、そこもいいっ。
「まぁまぁ、そう言わず、学食は私も初めてなの、だから少し興味があるんすよ、えへへ」
「・・・・・・勝手にすれば」
実際、私もお昼は朝コンビニでパンを一つ買ってきてそれを食べてるから学食は行ったことがないのは本当。
私は、白雪さんにお供をすることに。
ここ聖フィリップラヴクラフト女学院の学食は高等部、中等部が合同で使用できる施設。初等部は栄養バランスを考慮して各教室でとるようになっていた。
なので、学食場所は体育館ばりに広い。
お昼時ともなれば学生でごった返していた。
「う、人、多いね。白雪さん、どこで食べようか」
「別に一緒の席じゃなくていいから」
二人とも利用は初めてだったので少々途惑ったのが原因か、すでに席はほぼ埋まっていた。
「ぽつり、ぽつりとは開いてるけど、グループとグループの間に入るのは勇気いるよね、それに開いてるのも一個だけだし」
「私は別に構わない・・・・・・」
いやいや、一緒に食べるからっ、だから最低でも二つ開いてる場所を探さねば。
「ん、おっ! あそこ開いてるよっ!」
「・・・・・・本当だ」
フードコードの奥、日当たりもよく、その周辺だけは妙にスペースが空いている。丸い大きなテーブルが一つ、椅子は三つあった。
他は埋まっているのに、そこだけは誰も使おうとはしない。
「あそこに座ろうっ! 私、とってくるっ!」
たまたま開いていたか、私はダッシュで場所取りに向かったんだけど。
私が、そのテーブルにランチのトレイを置いた瞬間。
一斉に、他の学生の視線がこちらに集中した。
「ん・・・・・・?」
皆、あり得ないような表情でこちらを見ている。
その理由を私はすぐ分かることになる。
「あらあら、貴方、中等部の子かしら?」
「ふふ、そこはね、専用席なのよ」
「そうそう、私達、受け継がれし者のね」
人垣が割れ、そこに現れたのは高等部の生徒だった。
三人には確かに気品はあった。
だが、それは表面上だけのものだったようで。
「早く、お退きなさい、下品な臭いが移ってしまうわ」
「折角、妹達が毎日綺麗にしているというのに、これじゃやり直しだわ」
「ここは私達の専用席なのよ、お馬鹿さん」
三人は口々に私も見下し、ついには。
一人がトレイのコップに手を伸ばした。
それを。
「分かったら二度とここには近寄らないで頂戴」
私の頭上で逆さにした。
中に入っていたオレンジジュースは当然のように私の頭に落ちる。
頭から流血したようにオレンジ色の血が流れた。
「・・・・・・そうっすぁ、それは知らないとはいえ、申し訳ないことしたっ・・・・・・」
瞬間、私の手がトレイのナイフに伸びた。
「すねぇぇえええええええええええっ!」
ナイフはジュースをかけた女生徒の首へと。
それが届く直後、甲高い音が周囲に飛んだ。
「紅いの、なにしてんの、ここは学校、外とは違う」
白雪さんのフォークがそれを直前で止めた。
「あぁ、あぁ、そうでしたわ。ついうっかり、いやぁ、助かったっす、お互いねぇ」
私はこれでもかと高等部の三人を睨み付けた。
今すぐ殺してやりたい。
このナイフで体中、穴だらけにしてやりたい。
大勢の前で、顔を血で染めてやりたい。
でも、それはやらない方が賢明そうだ。
「あ、貴方、今、私をそれで刺そうとしたわねっ!」
「ち、中等部の子が、上級生の私達になんてことをっ」
「しかも、私達は受け継がれし者よっ! これは大問題だわっ!」
三人は激昂して私を捲し立てる。
つ~か、さっきから言ってる受け継がれし者ってなんすかねぇ。
「もう、食欲がなくなったわっ!」
「貴方達、覚えてなさい」
「今日から敵よ、私達受け継がれし者達のねっ!」
そう捨て台詞を残し、三人はヒステリックぎみにその場から去って行った。
「あ~、なんか敵になっちゃったみたい」
「・・・・・・貴方達って言ってた、助けたのになんで私まで・・・・・・」
その日から、あからさまな嫌がらせが頻繁に起こるように。
「靴がない」
「・・・・・・私なんて椅子がない」
後から知ったのだが、あの三人は以前この学園を牛耳っていた3椿の正当な流れを組む妹達だそうで。
紅椿、蒼椿、白椿。数年前この学園には大きく三つの派閥があった。
彼女達には誰も逆らえず、ここの生徒はどれかしらの派閥に所属していたみたい。
そんな多大な影響力を持った3椿。
だけど、ある日転校してきた二人の女生徒によって、派閥は一つに纏められその風習自体無くなったと聞いた。
その纏め上げた女生徒はもう一つの椿になったんだけど、名前は確か・・・・・・。
「あ~、やっぱ殺そう。あの三人殺しちゃおう」
「・・・・・・さすがにあの三人を殺したらあんた達でももみ消しは無理」
そうなんだよ。あの三人は家柄もかなりいいし、三人纏めて死んだら流石の殺人鬼連合の後ろ盾を使っても庇ってもらえない。
「タシイさんに相談してみようかなぁ」
「私もお姉ちゃんに・・・・・・いや、それじゃ駄目」
多分、私達が頼ればなんとかしてくれるだろうけど。
「いつまでも頼ってばかりじゃ駄目か」
「・・・・・・そう。これは私達が乗り越えるべき案件」
タシイさんはともかく円様にこれをいったらあの三人まずただじゃ済まないだろうし。
とはいえ。
私達は。
「今は堪えるしかない」
「そうですよねー」
私達は頭も特に良くなく。運動も人並み。芸術的な才能もあるわけじゃない。
つまり至って普通。
タシイさんのように容姿に秀でてるわけでもなく。
円様のように、才能の塊のような事もない。
ただ、人より少し頭がイカレテルだけ。
それが有効に働くような事が起こればだけど、そんな都合いいことがそうそう。
数週間後、それが有効に働くような事が起こった。
相変わらず、私達への嫌がらせは続いていたの。
「椅子がパイプ椅子になってる」
「机がミカン箱に・・・・・・」
今まで友達面していた生徒達はあの日以来さっといなくなった。
私の機嫌をとっていた周囲の人間も、それより強い人間が現れると途端にそちらに付く。
人間的には間違ってはない。
戦国時代なら裏切りで生き延びた武将も多いだろう。
その判断が間違いかといえば、そうでもないし。
「まぁ、私は白雪さんがいればいいんだけど」
「・・・・・・私は元々一人だったし」
その日、白雪さんはまた学食へと足を運んだ。
この状況でまた学食にいくそのメンタル。
本当に、自分の事に対する事には無関心。
いや、そうするように対応したのか。
彼女の過去が今をそうさせているのだ。
学食に来た私達。まぁ視線が凄い。今や私達は学園中を敵に回したようなものだからね。
「いっそ、またあの席にいこうかな」
「またジュースかけられるから」
私も白雪さんを見習って極力気にしないようにしますか。
噂をすれば。
あの三人が優雅に入り口より登場した。
混み合っていたフロアに道が出来る。
髪を掻き上げ颯爽にあの場所へと向かう三人。
食事を注文するのは取り巻きの役目、彼女達はただあの特別な席に腰をかけるだけ。
そんな中。
「麗子ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!」
この女だらけの学園では珍しい男の声が響いた。
ここは女学園。
男がいるとすればそれは教師くらい。
案の定、その男は高等部の若い先生で。
「な、なぜだ、私はお前をこんなにもっ!」
麗子ってたしか受け継がれし者の一人。
先生は目が血走り、ゾンビのようにフラフラとあの三人に近づいて行く。
「ちょっと先生やめてください、ちょっとからかっただけですのよ。私が貴方のような貧乏人をまともに相手するわけないでしょう。それなのに貴方ったら」
「あらあら、これ以上近づいたらどうなるか分かってるのかしら」
「もうこの時点でもう終わりだけど。麗子のおふざけにマジになっちゃって本当に馬鹿な人」
お、よく分からないが、修羅場だ、いいぞ、いいぞ。
あの感じだと、あいつやるな、うん、絶対やる。
「な、なんだと、くそガキが、お、大人を舐めくさって、もういい、どうせ終わりだ、なら、とことんやってやる」
先生は懐から刃物を取り出した。お、なかなかでかいぞ。
「お前を殺して、俺も死ぬっ!」
教師が刃物を取り出した瞬間、周囲に悲鳴がわき起こった。
温室育ちには少し刺激が強すぎたか。その場で膝を崩す者、口を押さえ呆然とする者も多数。
「ちょ、ちょっと冗談でしょっ!?」
「お、おいっ! 誰かはやく警備員を呼べっ!」
「いやいや、私は関係ないから、麗子でしょ、悪いの」
あれだけ強きだった三人も一気に怯えだした。
おー、よいぞよいぞっ! そのままいっけー、めった刺しにしちゃえっ!
私はあの教師を全力で応援することにした、口には出さないけど。
「・・・・・・あれ、利用しよう」
そんな私と白雪さんでは考える事が異なった。
白雪さんが、ゆっくりと教師に近づいて行く。
「え~、助けるんだ。まぁ、それもありかな」
皆、教師の行動に怯んで動けない。
この大勢の生徒の中で全く動じてないのは二人だけ。
そう、白雪さんと私のみ。
白雪さんが背後から教師の元へと。
その途中で、テーブルからナイフを手にした。
「ねぇ、先生」
ぴったり背中へ。そして声をかける。
教師は驚いて後ろを振り向くが、そこには誰もいない。
同じタイミングで白雪さんが背後に回り込んだからだ。
膝の裏側を蹴りつける。
教師の膝がカックンと折れる。
標的の頭が下がった。
その場へ私は一気に距離を詰め。
その顔目掛けて。
ハイキック。
教師の顔が斜め上へと振り上がる。
「あ、今、パンツ見たっすねぇ、もう先生はエッチだなぁ」
そのまま上がった足で続けざまに踵を落とした。教師の頭は今度は床へ叩き付けられる。
「先生には同情しますけどねぇ。殺るならもっとうまくやらなきゃぁ」
教師はピクリとも動かない。
手の平にはナイフが突き刺さっていた。
初手で白雪さんが刺したんだ。これにより教師の手から刃物が落ちた。
だから、私も躊躇なく接近できた。
「さて、白雪さん、改めてランチにしよう」
「・・・・・・そうだね」
食堂はシンと静まりかえっていた。
「あぁ、あそこ開いてるね~」
「・・・・・・じゃあそこで」
こうして、私達はあの場所へと足を向ける。
今度は誰も文句を言う者はいなかった。
口を開けこちらを見る生徒達の中で、私達はランチの時間を楽しんだ。
その日の、午後の授業は当然のようになくなり。
校門近くには警察車両が何台も停まり赤いサイレンがクルクル。
警官達に囲まれて事情を聞かれていたのはあの三人。
そして私達も当事者として呼ばれていた。
ある程度状況を説明してやっと解放される。
「あ~、面倒くさい。やっぱ関わらなきゃ良かった」
「・・・・・・確かに、保護者に連絡するって言ったし」
一応、緊急って事で私達の行為はさほど問題視されなかったけど。
ヒーロー扱いというよりは、むしろみんなに引かれてしまった。
「あ、貴方達、いい気にならないでよねっ」
「そうよ、その気になれば私達だけでなんとかできたわ」
「話合えば分かったはず、なのにあんな暴力で解決するなんて」
先に帰ろうとした私達にそう言ってきた受け継がれし者達。
まぁ、今まで散々陥れていた相手に助けられたってのもその大きなプライドが許さないっすよね。
これでせめて嫌がらせだけでも止まればいいけど。
その時だった。
校門にさしかかろうとした所で青の車が勢いよく横付けされる。
車のドアが上に開いて、そこから出てきたのは。
「白頭巾、連絡があって迎えにきたのだ」
黒いスーツ、黒いネクタイ、いつもと雰囲気が違うけど、あのお方は紛れもなく。
「お姉ちゃんっ!」
「円さまっ!」
あぁ、今日はなんて素晴らしき日だ。円様にも会えるなんてっ!
私達は急いで駆け寄る。
それを見ていた三人の表情が一変した。
「え、あれって・・・・・・」
「髪の色は違うけど、間違いないわ、あの方は・・・・・・」
「ま、円様よ。あの黒椿さまの妹・・・・・・」
三人がなにか言っている、振り向いた私はそれを聞いてもよく意味がわからない。
だが、明らかに私達を見る目が変わった。
「今、あの子お姉ちゃんて。ちょっと待って、それじゃあ、あの白雪って子は、黒椿の系等・・・・・・!? 真の受け継がれし者って事じゃない」
三人がわなわな震えている。
そして、円様の登場から少し遅れて。
今度は赤いクラシックカーが。
ジャガーEタイプ、その貴重な車から降りてきたのは。
「よう、紅子、なんか知らないけどオネニー様が迎えいけってさ」
超絶美少女、ツインテールの我らがタシイさんっ。
「あぁ、タシイさんっ! 態々ありがとうございますっ!」
この馬鹿みたいに生徒数がいるマンモス校の中でも、このタシイさんほど綺麗な方はおられまい。それ程の美貌、スタイル、雰囲気、全てが超一級品。
「な、なんて素敵な方・・・・・・」
「ま、円様もいいけど、あの方の輝き尋常じゃないわ」
「あぁ、あんなお姉様が欲しい」
三人は一気に魅了されていた。
よし、完全にマウントを取ったでっ!
「あれ、切り裂きじゃん、なにしてんだぁ」
「バールこそなんなのだ。私は可愛い妹を迎えにきたのだ、お前も一緒か?」
あぁ、昆虫採集部のエースと殺人鬼連合のエースが会話している。なんと微笑ましい光景。
「おー、じゃあこの後暇か? 折角だどっか寄ってこうぜ。ご馳走してやるよ」
「まぢか。なら行く、のだ」
え、本当っすか。流れ的にこの三人とご一緒できるんすか。
「白頭巾、そういう事なのだ、さぁ乗るのだ」
「おー、紅子も早く乗れ」
私は嬉しさで歯が全部抜け落ちそう。
もうこの後、めちゃくちゃ楽しんだ。
ちなみに、その後、あの席は。
「白雪さん、貴方こそこの席に座るに相応しいわ」
「そう、貴方はあの黒椿様こと葵様の妹円様のスール、その系譜はこの学園においてもはや女王のそれといっても・・・・・・」
「あぁ、紅さんも、とても素晴らしいお姉様をお持ちで、で、できれば、こ、今度、どうにかお近づきに、なれないものかしら」
そんな訳で私達専用になりました。
椿うんぬんは、リョナ子本編の学園潜入編参照です。




