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おや、これは新生昆虫採集部の出番ですね。

 こんにちは、蓮華です。



 その日は澄み渡る空のいい天気で。


 ある街での伝統的なお祭り会場。


 大通りを解放してのパレード。屋台も数多く出店。

 観客は歩道から溢れるほどおりました。


 そこで事件は起こったのです。


 観客の密集する場所で大爆発。

 これは明らかにテロによる犯行でした。



 その一報を聞いた私は、円さんと白雪さんを連れて現場へ急行。


 円さんの車で問題の場所まで急ぎます。

 

 近づくにつれて一気に視界が悪くなりました。


「よし、行きますよ」


 すでに警察、消防は到着しており。

 私達も、車から降り、まずは状況確認。


 と、その前に。


「う、うげぇえ、ひ、ひどいよ。いくら二人乗りだからって。私をトランクに詰め込むなんて・・・・・・」


「しょうがないのだ、後から来いっていったのに、付いてくるって聞かないからなのだ」


 円さんの車、アヴェンタドールは走るタメだけに生まれたような車なので、そういう所に実用性はないのです。

 トランクも、後ろではなく、この車はフロント部分にあります。

 それもキャリーバックがすっぽり入る位の狭さなので、小柄な白雪さんが折り畳まれるように入れられてました。


「はやく、白雪さんを引き出してください、急ぎますよ」


 私は二人を急かして、黒煙の立ちこめる現場へと足を向けました。



 そして、私達がさらに奥へと足を踏み入れた時、それは起こったのです。


 二度目の爆発でした。


 

 耳鳴りが周囲の音を消し去り。


 しばらくして聞こえてきたのは悲鳴。


「くそっ、犯人はまだ逃げていなかった、のだ」


 私達は比較的爆発地点からは近すぎず、遠からずの絶妙な位置にいたのが幸いでした。


即座に爆発点へと。


 そこにはガラス片やススにまみれて倒れる人達が。


 難を逃れた人は、泣くことも叫ぶ事もせず呆然としていて。


 その中で一人の女の子に気付きました。


 足が吹き飛んで骨が見えている。


 私はすぐに抱きかかえ声をかけます。


「大丈夫ですかっ! しっかりしてくださいっ!」


 血がどくどく流れ出ています。


「・・・・・・はぁ・・・・・・はあ」


 顔面蒼白。これはかなり危険な状態です。


「円さん、すぐに救急隊員をっ! この子が一番重体ですっ!」


「分かったのだっ!」


 円さんが呼びにいってる間、私は必死に声をかけ続けました。


「はぁ・・・・・・お姉・・・・・・ちゃん、なんだ、か、とって、も・・・・・・眠、い、よ」


「寝ては駄目ですよっ! 気をしっかりっ!」


 なんとか女の子の目が瞑らないようにと、大声で叫んでいたのですが。


「レンレン駄目だっ! 人が足りなすぎるっ!」


 円さんが私に報告に戻った時には女の子は私の胸の中で息絶えておりました。


 

 この後、すぐに地区、市、政府の機関が集結。


 その統轄指揮を私が請け負いました。


「まずは現場、そして病院での聞き込みを開始してください。そしてコンピューターによる追跡調査もお願いします」


 捜査機関に次々と指示を送ります。


「私はこの二人と現場を見てきます。なにかありましたら連絡ください」


 いつもはどっしり椅子に座って構えてるのが私です。

 そして、今の立場上もその方がいいのでしょう。


 ですが、私はいても立ってもいられない、そんな心情だったのです。



 境界線を越えて、私達は再びあの場所へと。


 数多くの警官達が現場の検証をはじめておりました。

 物的証拠を探している最中に腕や足が見つかることも。

 

 その中で、私が最も見つけて欲しいものは。


 爆弾の破片。


 爆破装置の材料が分かれば、その精巧さもわかります。

 それはその装置を作れる人物の特定に繋がります。


 この日、建物の屋根から圧力鍋の蓋が見つかりました。

 これで圧力鍋を使った爆弾と判明したので専門家にあたります。


 そして、初期段階で重要なのは、現場で撮影された映像の分析です。

 監視カメラ、そして観客がとった写真、映像、それらを集めます。


「うまくいけば誰が爆破装置を置いたか確認できるはずです」


 10分間の映像を切り分け繰り返し分析。それはとても粘りのいる作業。


 私は何度も何度も繰り返し見ました。


私には一つ、確信していたことがあります。


 それは、私の胸の中で息を引き取ったあの女の子。


 彼女の髪を必死に撫でているときに、見つけたのです。

 絡まっていたのは、ナイロン製のなにか。


 私の判断するに、これは爆弾と一緒に飛び散ったもの。

所々溶けていますし、この素材の物に爆弾が入っていて爆発と同時に吹き飛んだのでしょう。

 

 それは思うにリュックの一部です。


 なので、私はリュックを背負っている人を注視して画像の確認をしておりました。


 何度も何度も、あの爆発があった周囲を確認。

 そこにはまだ元気に動いているあの子の姿も確認できました。

 正直、見るのも辛い。

 でも、やらなきゃなのです。


 そしてその時が。


「・・・・・・見つけた」


 今の時間が分からないほど集中しておりました。

 ここで、私はある一人の人物に目を見張ったのです。


 帽子を目深に被ったリュックの男。

 こいつは、二度目の爆発の15秒前に現場を立ち去っており。

 そして、背負っていたリュックはその時にはありませんでした。


「円さん、白雪さんっ!」


 私の傍で、うつらうつらと寝ていた二人を声で起こします。


「よく、見ておいてくださいね」


 目を擦る二人にしっかり画面を見せます。


「私達が追うべき犯人は・・・・・・この男です」



 特定した私は、その後、他の機関と協議。

 犯人の映像を公開、身元の特定と逮捕を優先させました。


 ただ、これによるリスクもある。

 公開により、犯人が捨て身の犯行に及ぶ可能性。


 だけど、このまま犯人を野放しにもできません。



 公開から数時間後。

 また新たな事件が。


 時間は真夜中。


 現場を警戒していた警官が一人撃たれたのです。


 犯人は、さらに警察車両を盗難して逃走。


「ヘリを要請して空から監視してください!」


 私はそう指示して、自ら犯人を追う事に。


「円さん、車をっ!」


「ういうい、飛ばすのだ、白頭巾はトランクでいいなら付いてこい、だ」 


 青のアヴェンタドールが心地いいエキゾートを奏でます。


 私は警察、そしてヘリと連動して犯人の元へ。


 

 情報を元に、目的の車を補足しました。


こちらに気付いたあちらもスピードをあげなんとか逃げようとしますが。


「うくく、遅い、遅すぎなのだ、こっちは全然踏んでない、ぞっ」


 こっちの車に勝てるはずはありません。


「犯人のあのスピード、車の制御性能を越えてますね。もうすぐですっ!」


 これが警察なら巻き込み事故の危険性から多少気を遣うのですがね。

 私達、というか円さんにはそんなの関係ありません。

 見えているのは、前の車のみ。

今が夜中だったのがまだ幸いしております。

 

 まぁ、こっちが追突したらトランクの白雪さんはぺっちゃんこでしょうが、そこは円さんのテクニックを信じましょう。


 私の予想通り、前の車がカーブで制御を失いました。

曲がりきれずに標識に激突。車は停止しました。


「よし、確保しますよっ!」


 私は銃を取り出し、いち早く外へ。


 ここで、私はインカムで指示を出します。


「チャンネル1、切り替え。ヘリは戻るように。他の警察車両も指示があるまでその場で待機です」


 ここからは私達だけのお仕事です。

 ヘリの映像はマスコミに傍受される可能性もあります。


 あくまで、私達、昆虫採集部は極秘機関なのですから。

 できるだけ、働いてる姿は見せたくない。


「うげぇ、死ぬ、普通の人なら絶対死ぬ・・・・・・」


 白雪さんも外へ出て、これで準備は整いました。


 警戒しつつ、犯人の乗った車に近づきます。


 すると。


「くそがぁあああああああああああああ」


 爆弾魔が、車の外へ。

 すでに銃を持っていて、私達に向かって発砲してきました。


「白頭巾、あいては素人なのだ、蛇師匠みたいに当たらない、のだっ!」


 私もシグちゃんで応戦、その脇を二人が高速で駆け抜けていきます。


 左右から回り込むように、近づく二人。


 それよりも私の銃弾が先に相手に届きました。


 ですが、もはや銃弾をくらっても構わない様子。

 映画や漫画じゃ一発当たれば吹っ飛んで死んだりしますが。


 現実は一発くらい撃たれても向かってきます。


 白雪さんが急停止、そこでナイフを一投、相手の腕に勢いよく突き刺さりました。


 さすがに怯んだ犯人。

 

 そこに円さんが接近。


 これで終わり。


 とはなりませんでした。


 犯人の男は懐から棒状のなにかを取り出し。


 一瞬、太い木の枝にも見えましたが、それは紛れもなく爆弾。


「し、死ねぇえええええええ」


 今まさに投げつけようと腕を振り上げた瞬間。


 その腕は爆弾ごと宙に舞います。


「うくく、だから遅すぎなのだ、お前もお前の車と一緒だ」

 

 その前に、円さんのナイフが切り裂き。


 手首付きの爆弾は、犯人の頭上からゆっくり落ちてきます。


 円さんは瞬時にその場からバックステップ、一気に距離を取りました。


 そして、犯人の前で、カンカンカンという音がして。


 それは爆発しました。


 閃光と衝撃で、私は一瞬目が回りましたが、頭を振ってすぐ元に戻しました。


 円さんと、白雪さんはっ。


「う、耳を塞いだのに、ちょっと痛い、のだ」


「瞑るの遅れた。目がちかちかする・・・・・・」


 あ、もう私の近くまで戻ってましたね。さすがです。


 もう少しスマートな方法もあったのですがね。

 犯人自体が爆弾を巻き付けている可能性も考慮した結果です。

 

 現に犯人はまだ生きていました。

 足は吹き飛んでいて虫の息ですが。


「彼にはなんとしても生きていて貰わなきゃいけません」


 動機、そして単独なのか、組織的な犯罪なのか、色々聞くことはあります。


 なにより・・・・・・。


「貴方には、簡単に死なれちゃ困るんですよ。私の友人を紹介しますので、きっちり罰を受けてくださいね」


 死者四人、負傷者に関しては数百人です。

 

 本当は私達が八つ裂きにしてやりたい所ですが。


 私達の仕事は残念ながらここまでです。


「・・・・・・ちゃんと犯人は捕まえました。だから、安らかに・・・・・・」


 私は星が煌めく夜空にそっとそう呟くのでした。

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