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うん、これは私の出番だね。

通学路、昔から声をかけてくれたおば様がいた。


 それは入学から3年間、毎日続いた。


 卒業してからは、会う機会は無くなっていたけど。


 まさか、こんな形でまたその顔を見ることになるとは。



 〇〇市、ある民家が全焼して住人とみられる遺体が見つかった。

 

 犯人は16歳から20歳の男女4人。 

出火まで住人の女性を殴ったり蹴ったりする暴行を加えたと供述。

男女4人を殺人と現住建造物等放火の疑いで逮捕。


「あら、おはよう、今日も綺麗ねぇ」


 おば様は一人暮らしだった。


「おはよう、今日は午後から雨が降りそうよ、傘ちゃんと持ってる?」


 人の良さが全身から滲み出ていて。


 そこをつけ込まれたのだろう。


 犯人達は車で生活していて、たまたま顔見知りになったおば様の家に転がりこんだ。


その善意は踏みにじられた。


 遺体は真っ黒で、頭には焼け焦げた包帯が。



 おば様はいつも明るく、でもその目はどこか寂しそうで。

 

 今でも鮮明に映るあの笑顔。


 それを奪ったのは四人の男女。金を毟り、暴力を加え、最後には生きたまま放火。

 おば様の黒焦げの遺体は、玄関前で見つかった。手は外へ伸ばすように。必死に這って逃げようとしたのだろう、誰かに助けを求めるように、まだ生きたいと。


 私は自分勝手で、だからね、自分の事はどうでもいい。

 私が思い、私の好きなようにする、他はどうとか、自分がどうとか、なにも関係ない。

 私には理屈もなにも干渉しない。

 私は私のまま行動する。


 犯人はすでに身柄を拘束されている。


 裁判はこれからだが、推定レベルは成人してるのが6、未成年は4もありうる。

 初犯でまだ若いので更生の余地ありと判断されたらその下の可能性も。


「おば様ぁ~、それじゃあ気が済まないよねぇ、熱かったろう、痛かったろう」


 私は立ち上がった。

 

 自慢のツインテールを揺らせながら。



◇



 時は夕刻。

 ある学園の放課後。


「す、好きですっ! 俺と付き合ってくださいっ!」


 一人の男子生徒が、眼鏡の女性に告白をしている最中だった。


「え、わ、私、ですか」


 少女は途惑う。

 それもそのはず、自分は地味でそれほど美人でもなく。


「い、いつも見てました、入学してからずっとっ!」


 少女は目を丸くして。


「・・・・・・え、あ、あの、わ、私でよ、ければ」


 その思いに答えた。


 

 その日、二人は一緒に帰る事に。

 男の方はそれはもう嬉しそうに語りかける。

 少女は、恥ずかしそうに顔をうつむけていた。


「あ、あの、木下、くん、ちょっと、寄りたいところがある、んだけど」


 帰路の途中、少女がそんな事を言い出した。


「ん、勿論、いいけど、どこかな?」


 男に断る理由もない。快く了承した。


「ありがとう、す、少し遠いけど・・・・・・」


 そう言い、二人が向かった先は。



 廃工場。

 周囲は閑散としていて。

 人の気配はまるでない。


 中に入る。

 夕焼けがボロボロの天井から差し込み、どこか儚げな光景を見せた。


 先に入った少女が、中央付近で歩みを止めた。


 そして振り返る。

 少女の顔がオレンジ色に照らされた。


 ゆっくり、男子に近づく少女。


 二人の距離はどんどん縮まり。

 男子の鼓動が高鳴る。

 目の前にいるのはたしかに自分が好きになった人。

 だけど、今はいつも以上に綺麗に見えた。


 少女の腕が男子の頭を包み込むように差し出され。


 互いの顔が。


「・・・・・・・・・・・・・・・いじゃあがっっ!」


 男子が急に叫んだ。


 それもそのはず、密着した身体の間には。


 差し込まれたナイフ。


 それがどんどん深くまで。


「いがあ、ああああふぁああああああああああァァ」


 少女を突き飛ばしたが、その反動で自身も尻から倒れる。


「いだあ、いだあああ、な、なんで、えええ、いだああ」


 見上げる少女の眼鏡が夕焼け色に光っていた。


「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い・・・・・・」


 少女はブツブツ言いながらまたナイフを取り出す。


「あぁ、気持ち悪い、気持ち悪い、ずっと見てた? え、私を、影から、ずっと、キモチワルイ、キモチワルイ」


 少女がへたり込む男子の腹に、膝から落ちた。


「うがあっ」


 そのまま少女は馬乗りになって。


「キモチワルイ、私をその目で、ずっと、きっと、とんでもない事を想像して、気持ち悪い、その目で、全身を、私の顔を、胸を、腰を、足を、見てたんだ、キモチワルイ、アアアア亜、吐きそう」


「や、やめ・・・・・・」


振り下ろす。

 ナイフを。

 

 男子の顔に、その目に、首に、胸に。

 

 キモチワルイと。


 掛け声のように言葉を共に。


 ナイフは男子の肉を裂く。



制服と顔に返り血を浴びて。


「はぁはあ、死んだ、もう見えてない、私を」


 特に目を重点的に刺した。

 なので顔は血の色だけ。

 流れる血が髪にこびり付いて。


 ここで少女の顔に笑みが浮かんだ。


「はぁあ、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ちいい、キモチイイ」


 天に顔を向け興奮していた少女のスマホが音楽を奏でる。


 血だらけの手でそれを取り出す。


「はい、奏です。タシイさん、なにかご用でしょうか?」


 昂揚させながら男の死体から離れる。


「今からですか、ええ、勿論大丈夫です」


 少女は、殺人鬼連合所属、殺人鬼アダムキラー奏。

 今、ある者からの招集を受けた。



ほぼ同刻。

 別々の場所でスマホが着信を伝える。


 ある者は、全裸で返り血を浴びながら人を殺している最中で。


 ある者は、放火した建物の中で人を殺している最中で。


 ある者は、獲物を自宅の地下室で監禁、背中の肌に直にフックを差し込みつるし上げ、色々な道具で弄んでいる最中で。


 ある者は、いつも冷たい同級生にこびへつらっている最中で。


「あ、タシイさんですか。ええ、すぐに向かいます。この紅子が誰よりも早く馳せ参じるしだいで」


 それぞれが了承。

彼女は自由。

 彼女だけは独断で殺人鬼連合を動かせる。

 彼女だけがボスを通す必要がない。

 


 総勢、11人。

 その内、9人が所定の場所に集まった。


 少し遅れて、二人の女が建物に入ってきた。


「「お疲れ様ですっ!」」


 全員がその二人に深々と頭を下げる。


「おー、悪いなぁ、ちょっと野暮用だ」

「丁度、バイト終わったから良かったけど、タシイはたまにこういう事をする」


 ツインテールの美少女。

 おかっぱの目の周りが真っ黒の女。


 彼女達がこの殺人鬼連合のWエース。

 

 これでボスを除いた殺人鬼連合が全て揃った。


「おー、もう話は付いてる。こいつらさらってこい」


 タシイがスマホを操作、一斉送信。


 各、メンバーの端末にターゲットの詳細が送られた。


「拘留所から執行局の移動のさい車に乗せろ。すでに拘束されてるからお前らはただ受け取ってくるだけでいい」


 執行局に入れられると、そこから引き出すのはかなり厄介。

 あそこからは彼女の領域。


「さぁ、行けっ、あいつの重い腰が動く前に行動だ。奴が動いたらもう終わりだ、それまでに連れてこいっ!」


 号令。各自それに声を上げ答えたのち、すみやかに行動は開始された。



 それから数時間後。


 辺りはすっかり真っ暗に。


車を乗り換え、いくつか囮を作って、ここまで無事に標的が到着した。


「ほら、さっさと降りるんだよ」


 車から降ろされたのは、四人の男女。


 すでに手は拘束、口も塞がれていた。


 メンバー達がへたり込む四人を囲む中。


 奥から進んできたのは。


「よぉ、よく来たなぁ」


 バールを引き摺るツインテールの少女。


「ん~、ん~っ、ん~っ!」


 喋れない男女はただ怯えた目で少女を見るだけ。


「まずは挨拶代わりだ、おいっ」


 タシイが後ろのメンバーに目配せをする。

 それに答えて、メンバー達が標的の一人の腕を後ろから押さえた。


 バールを思い切り振りかぶって。


 その突き出された顔目掛けて。


 フルスイング。


 標的の顔が不気味な音を共に、血を撒き散らす。

 鼻の骨が粉砕、その潰れた穴から流れる鮮血。


「うがぁ、うがああああ」


 悲鳴すら上げられず、目から涙を流すしかできない。



(タシイちゃん、おはよう、あ、アメをあげるわ、これ美味しいのよ)



 たまにくれたアメ、少女は正直好みの味ではなかったが。

 それでも毎回舐めながら登校していた。


「おー、そっちのガキは全裸にしてとことんやれ、殺さない程度に壊しながら夜が明けるまで手を休めるな」


「タシイさん、私はどうすれば?」


「紅子は、奏と一緒にそっちの男をやれ。指先から皮剥いで、中の肉はじっくりだ」 


「タシイ、アタシは~?」


「目黒ちゃんは、とりあえず、全員の目玉、片方だけ取っちゃって、それ目の前で潰してよ」


 各メンバーに指示を送って。


 少女は最初にバールを打ち込んだ標的に目を移した。


「お前は主犯格ぽいから私が直々に遊んでやる。とりあえず、指一本ずつ出せや。一つずつ潰していくからよぉ」


 メンバーに腕を押さえつけられ、手の甲が少女の前に差し出される。


 それを少女はツインテールを振りかざしながらバールで押し潰していく。


殺人鬼連合による拷問が夜通し行われ。


 日がうっすら辺りを照らす頃には。


 吊された四つの身体はもう人の形を保ってはいなかった。


 肉は抉られ、臓器がはみ出し、色々な箇所が欠損し。


 それでも、まだ全員が辛うじて生きていた。


「よし、仕上げだ、ファイアーフラワー、全部燃やせ」


「分かりました」


 顔の上半分が焼けただれている男が前に出る。

 手慣れた手つきで四人の身体に灯油をかける。


「後は、丸焦げになった頭を切り取ってどっかに曝せ。できるだけ拡散させろ、ちゃんと名前付きでなぁ」


 少女は最後にそう告げて燃えさかる死体から遠ざかっていく。


「今日バイト休みで良かったよ、さぁ帰って寝よ。しかし、タシイがこんな小物を標的にするなんて珍しいね。なんか訳でも?」


「別にぃ、ただアメのお礼がしたかった、それだけ」


「ふ~ん、ま、アタシは楽しかったからいいけど」


 これは一つの繋がりが起こした事柄。


 人と人はどこかで必ず結ばれていて。


 その糸は殺人鬼も例外ではない。

 あー、そういえば今日はエイプリルフールでしたね。それをネタにすれば良かったかなぁと今更思ったり。

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