↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恐竜ダンジョンで30年生き抜いた男、ドラゴンを素手で止めたらダンジョン配信でバズった~新人F級ですが、相棒のティラノサウルスも人間になったので一緒に無双します~  作者: レイヴ
第一章 帰ってきた原始人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/28

第007話 原始人、探索者登録

「これ、どのくらいまで耐えられる?」


 ロッカが尋ねたのは、力を測る機械の頑丈さだった。


 二〇五六年十月二十四日の朝。立川にある日本探索者協会東京支部の地下試験場で、ミカは隣の男を見上げた。


「そういうの先に聞くんだ。えらいね」


「壊したら悪いし」


 青梅の管理棟から協会の連絡車で来た三人は、上の階で帰還者の手続きを済ませていた。


 ロッカとティーラは、名前の入った仮の身分証を受け取った。そのあと探索者の窓口へ行き、今は登録試験の最中だ。


 ミカは取得済みの探索者証を見せ、付き添いとして入れてもらっていた。ポチも撮影を止めて、肩の横に浮いている。


 ロッカの鞄は、実技の間だけミカが預かっていた。槍と牙斧は、青梅の管理棟に置いてきている。


 試験場は、学校の体育館ほどの広さがあった。入口に近い側には測定器が並び、奥には障害物と、打撃を受けるための分厚い的が置かれている。


 ロッカの前にあるのは、胸の高さに二本の握り棒がついた機械だった。


「両側をつかんで、ゆっくり内側へ押してください。上限が近づいたら音が鳴りますから、そこで止めていただければ」


 試験官が答えると、ロッカは頷いた。


 棒を握る。


 肩が少し動いたところで、機械が鳴った。


「はい、そこまで!」


 ロッカが手を離す。


 試験官は画面を確かめ、もう一度、本人を見た。


「……今、どのくらいの力でした?」


「まだ、あんまり」


 ミカは機械へ目を向けた。画面の棒グラフは、端まで伸びたまま止まっている。


「これ、S級の人も使う機械ですよね?」


「ええ。普段は、こちらで測れます」


 試験官は少し考えてから、記録に何かを書き込んだ。


「力は上限を超えていると記録します。次は、怪我人を運んでいただきます」


 次は、奥の障害物がある区画へ移った。


 低い梁と狭い曲がり角を組み合わせた通路の入口に、大人ほどの人形が寝かされている。


「怪我人を想定しています。この人形を、向こうの白い線まで運んでください。頭や手足を壁に当てないようにお願いします」


 ロッカは人形の前へしゃがんだ。頭を支え、膝の下へ腕を入れて抱き上げる。


 通路へ入る前に一度奥を覗き、身体を横にした。


 人形の足先を先に曲がり角へ通す。低い梁の下では、自分が屈むより先に、人形の頭を胸元へ寄せた。


 梁にも壁にも触れず、白い線の向こうへ出る。


 最後は片膝をつき、人形の背中からゆっくり床へ下ろした。


 試験官が手元の画面を確認する。


「接触なし。結構です」


「よし」


 ロッカが人形の腕を胸の上へ戻した。


 ミカは、青梅の待合室で迷子の子へ場所を空けた姿を思い出していた。


 あの力で触っても、痛くないようにできる。


 ティーラが隣から、通路を覗き込んだ。


「昔、ボクも運んだ」


「ああ。小さい頃はな。途中から俺の方が運ばれるようになったけど」


「ロッカ、よく落ちる」


「背中で寝ると揺れるんだよ」


 ミカは二人を見比べた。


 背中で、寝ようとしたんだ。


 続いてティーラも人形を運び終え、二人は打撃の試験へ進んだ。


 黄色い線の向こうに、三つの的が並んでいる。拳を受ける板の背後には太い金属の支えがあり、床へしっかり固定されていた。


「光った的を一度ずつ叩いてください。離れた場所へ移る速さと、打撃の強さを測ります」


 ティーラは両手を開き、握り直した。


「噛まなくて、いい?」


「叩く方でお願いします」


「分かった」


 ミカはロッカの隣へ下がった。


 最初はゆっくりだった。


 右端の的が光ると、ティーラはそこへ走り、拳を当てた。次は左端。さらに真ん中へ移る。


 試験官が速さを上げた。


 ティーラは追いついた。


 もう一段、速くなる。


 ミカが光った場所へ目を向けたときには、もう拳が入っていた。


 足音が短く続き、重い音が三つ響く。


 右端へ走ったはずのティーラが、次の瞬間には左端の的を押し込んでいた。


 受け止める金属の支えが、深く縮む。


 的の光が消えた。


 ティーラは最後に叩いた板の前で止まり、試験官を振り向いた。


「もう一回?」


「……いえ。十分です」


 試験官が、端末をこちらへ向けた。


 反応も、打撃も、S級の基準を示す線を越えていた。


「ティーラも、こんなに……」


「俺の背中、ずっと守ってくれてたんだぞ」


 ロッカは、少しも驚いていなかった。


 ティーラがこちらへ戻ってくる。その途中で、一枚の床板を避けて足を置いた。


「ここ、音が違う」


 試験官が頷く。


「荷重で沈む踏み板です。足元を確認する課題で使います」


「……私、試験のとき、それ踏んだ」


 ミカが呟くと、ティーラが振り向いた。


「次、一緒に見る」


 ミカは笑って頷いた。


「うん。お願い」


 そのあとの確認も終わり、昼前には三人で一階の登録窓口へ戻った。


 ロッカとティーラは、並んで椅子へ座った。ミカはその後ろに立ち、二枚の新しい探索者証が机に置かれるのを見た。


「お二人とも、登録は完了です。受けられる仕事は、まず低い等級のものからになります」


「さっきの試験でも、そこからなのか?」


「はい。力と、仕事の実績は別に記録します。今日の結果は残りますので、実績を積めば上の等級へ進めます」


 ロッカは少し考え、尋ねた。


「今の俺たちでも、金をもらえる仕事はある?」


「あります。調査や荷物の運搬など、今日の試験結果に合うものをご案内できますよ」


「じゃあ、やってみたい」


「ボクも」


 二人が探索者証を受け取った。


 ティーラは自分の名前があるのを確かめ、紺の上着のポケットへしまった。今度は、ロッカの鞄へ預けなかった。


 ミカも自分の探索者証を机へ出した。


「私の配信で、二人の調査に同行したいんです。撮影の申請も一緒にできますか?」


「できます。依頼によって撮影できる範囲が違いますので、申し込むときに確認してください」


 ミカは頷き、二人へ向き直った。


「ロッカ、ティーラ。私、二人と番組を作りたい」


 言ってから、少しだけ息を吸った。


「二人が探索して、私が撮る。配信で稼げた分も、ちゃんと分ける。……そういう仕事、どうかな」


 ロッカはすぐに頷いた。


「いいよ。ミカも一緒に来るんだろ?」


「うん」


「じゃあ、そうしよう」


 ティーラも頷いていた。


 ミカは端末を持ち直した。二十三人に向かって、次の企画をどうしようかと話していたのは、つい四日前だった。


 今は、その次に一緒に行く人がいる。


 手続きを終え、ミカは預かっていた鞄をロッカへ返した。三人で支部の正面玄関から外へ出ると、道路の向こうには店が並び、駅へ向かう人が歩いていた。


「このあと、寄ってほしい店があるんだけど」


 ミカが言うと、ロッカが顔を向けた。


「仕事の店か?」


「喫茶店。ミナトっていうの。私、よく行くんだ」


「飯も食える?」


「食べられるよ。店主のリラさんにも、二人を紹介したいし」


 隣でティーラが、自分のお腹に手を当てた。


「ボクも、行く」


「昨日みたいに、いきなり三キロは頼まないでね」


 ロッカが笑って頷いた。


 駅前の通りから一本入ったところに、喫茶店ミナトはあった。ミカが木の扉を押すと、コーヒーの匂いがした。


「リラさん、こんにちは。今日、二人連れてきたんですけど」


「いらっしゃい。どうぞ、空いている席へ」


 カウンターの向こうで、リラが顔を上げた。


 窓際には、見覚えのある大男が座っていた。いつも、カップが妙に小さく見える人だ。


 名前は知らない。話したことも、ほとんどなかった。


 その男がロッカを見るなり、笑って立ち上がった。


「おお! あんた、あの竜のやつか!」


「ああ。見てたのか?」


「見た見た! 俺、あんたと話してみたかったんだよ!」


 差し出された右手を、ロッカが握った。


 離しかけたその手が、止まった。


 ロッカが少し握り直す。大男の顔が、ぱっと明るくなった。


「おっ、いいな!」


「……すげえな、あんた」


「はっは! 分かるか!」


 握手をしているだけなのに、二人とも楽しそうだった。


 ミカはロッカの顔を覗き込んだ。


「何? どうしたの?」


 ロッカは手を離し、自分の手を一度握った。それから、大男を見上げる。


「なあ。あんた、俺より力が強いのか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。