↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恐竜ダンジョンで30年生き抜いた男、ドラゴンを素手で止めたらダンジョン配信でバズった~新人F級ですが、相棒のティラノサウルスも人間になったので一緒に無双します~  作者: レイヴ
第二章 飛べない最強、空へ行く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/28

第027話 恐竜マークの店で、恐竜育ちが沼に落ちた

「ミカ。あの店、入ろう」


 ロッカが足を止めた。


 十一月十九日の朝。立川の通りに面した店の看板には、大きなティラノサウルスが描かれていた。短い前脚を曲げ、口を開けている。


 その下に、ダイナソウの文字。


「そこが今日の一軒目だよ。キャンプ用品の専門店」


 ミカが答え終える前に、ティーラも看板を見上げた。


「かわいい」


「もう、二人とも捕まってる……」


 五人で中へ入ると、大きなテントがいくつも張られていた。棚には鍋やランタンが並び、奥には寝袋の入った袋が、色ごとに積まれている。


 撮影の許可をもらったミカがポチを呼ぶ間に、ロッカは緑のテントへしゃがみ込んでいた。


「これ、一人で使うやつか?」


「はい。冬にも使える型です」


 店員が入口を開けてくれた。


 中へ手を入れたロッカは、値札へ顔を向ける。


「七万八千円。……これ、一個の値段?」


「そう。寝袋と下に敷くものは、別だよ」


 ミカが言うと、ロッカはもう一度、中を覗いた。


「今のは、全部で四千円だったぞ」


「ここ、ちょっといいお店だからね」


〈恐竜マークに吸い寄せられたw〉

〈ダイナソウは危険〉

〈五十万持って来るとこがそこか〉


 隣では、ティーラが青いテントの布を触っていた。


「畳んだら、どのくらいになる?」


 見せてもらった袋を抱え、物置の棚へしまうときの大きさを確かめている。


 ロッカも選びかけていたが、奥の売り場へ目を向け、そのまま立ち上がった。


「あれ、何するところだ?」


 黒い金属の台に薪が組んであった。脇には低い椅子が二つ。その間の小さなテーブルに、マグカップが載っている。


「焚き火の道具です。椅子に座って、火を見ながら過ごしていただくんですよ」


 店員が説明した。


 ロッカは、小さな椅子の背を押した。


「これ、俺が座ってもいいのか?」


「どうぞ」


 腰を下ろすと、足を楽に投げ出せた。背中を預け、火のついていない薪を見る。


「いいな、これ」


「料理をしなくても、火を見てるだけでいいんだよ」


 ミカが言うと、ロッカは隣の椅子をティーラへ勧めた。


「座ってみろよ」


「うん」


 二人が並ぶと、テーブルのマグまで手が届いた。


 ティーラが片方を取り、両手で包む。白いカップの横には、看板と同じティラノサウルスがいた。


「これにも、いる」


「ほんとだ」


「ボク、この子のがいい」


 ロッカも、もう片方を取った。


「俺もこれにしよう。椅子も欲しいな。あと、この台」


 ミカは二人と、テーブルと、薪を順に見た。


「ああ、沼ってる……!」


「沼?」


「一個欲しくなると、ほかの道具も欲しくなるの。椅子を買ったらテーブル、テーブルを買ったらカップ、みたいに」


 ロッカは手元のティラノサウルスを見た。


「……これ、抜けるの難しそうだな」


「今、抜ける気ないでしょ」


「うん」


〈即答w〉

〈恐竜マグは買うしかない〉

〈その椅子で肉食ったら帰れなくなるぞ〉


 ヴィクターは小さなポットを持ち上げた。


「コーヒーにも使えるな。これ!」


「ヴィクターさん。道具が原因じゃないですからね」


「次はうまく淹れるって!」


 その奥では、カインが別の椅子へ座っていた。


「海にも持っていけるか」


「はい。畳めば、この袋に入ります」


「これを一つ」


「カインさんまで!」


 ロッカとティーラは緑と青のテントを選び、暖かい寝袋と、充電して使う敷きマットも買った。椅子とマグは一人ずつ。焚き火台と低いテーブルは、二人で使うことにした。


「焚き火は、今度キャンプ場に行ったときね。海へ行く分のお金も、残しておこう」


「分かった。今夜は、椅子だけ出そうかな」


「朝は、ちゃんと畳むよ」


 ティーラも言った。


 会計は、共用するものを半分ずつにして、一人十六万八千円だった。


 大きな荷物はミナトへ届けてもらい、二人はマグの袋だけを持って店を出た。


「これで飲むの、楽しみだな」


「うん」


 ティーラは袋の中を、もう一度覗いた。


 次の店は、二本先の通りにあった。入口に探索者向けの武器が並び、奥には、買う前に試せる場所もある。


「手につける武器を見たいんです。爪があって、殴ることもできるもの」


 ミカが伝えると、店主は棚から一組の手甲《てっこう》を下ろした。


 手の甲に短い爪が三本。拳を覆う部分は丸く厚く、掌と指は開いている。


 ティーラは左手にはめ、指を曲げた。


「もっと爪が短いの、ある?」


「こちらなら。物をつかむときも邪魔になりにくいですよ」


 替えてもらうと、今度は拳を作ってから、ゆっくり開いた。


「こっちがいい」


 店主の案内で、奥へ進む。


 台につながった鉄の輪へ爪を掛け、引いた。重りが持ち上がる。手を開けば、すぐに離せた。


 続いて、吊られた練習袋へ拳の丸い部分を当てる。揺れて戻ってきた袋を、同じ手でつかんで止めた。


「握れるね」


 ティーラがロッカへ見せた。


「うん。動かしやすいか?」


「すごく」


 店主は、止まった袋を見ていた。


「……お使いになる力に合わせて、留め具も確かめましょう」


 調整してもらう間、ティーラは右手の分もはめた。左右の手を確かめてから、ミカを見る。


「ボク、これを買う」


「うん。気に入ったのがあって、よかった」


 一組、八万八千円。ティーラは自分のお金で払い、袋に入れてもらった武器を受け取った。


 ヴィクターも、大斧を一本選んでいた。


「借りたあの斧、使いやすかったからな。俺にも一本、欲しくなったんだ」


 握りを合わせてもらい、試し場で短く振る。刃を止めてから、満足そうに持ち上げた。


「これにする!」


 武器をしまって店を出ると、ミカは道の向こうを指した。


「次はあっち。探索者用の上着を作ってくれるお店」


 防具屋の中には金属の胸当てもあったが、壁の半分は上着だった。店員が、軽くて擦れに強い生地のジャンパーを広げてくれる。


 ヴィクターが袖を通し、腕を曲げた。


「おっ。これなら動くぞ」


「お客様の分は、肩と袖を少し広げましょう。五着とも、この紺色でよろしいですか?」


 ミカがロッカたちを見る。ティーラは胸元に当てた上着を、鏡へ向けていた。


「ボク、これがいい」


「俺も」


「じゃあ、五人分、お願いします」


「肩に入れる文字は、こちらの大きさで?」


 店員が小さなFを示すと、ヴィクターの指が伸びた。


「もっとでかく! このくらい!」


〈わざわざFを拡大する客〉

〈絶対見逃せないFになるw〉

〈五人で着たとこ撮ってくれ〉


 カインも、布に置かれたFを見ていた。


「いいな」


「カインさんも、それでいいんですね」


「俺の分も同じにしろ」


 五着で十二万円。一人二万四千円ずつ払い、翌日の夕方に受け取ることになった。


 店を出たミカは、ポチを少し下げた。


「最後に、もう一軒」


「まだ何か要るか?」


 ロッカが聞くと、ミカは端末の地図を開いた。日本の南へ画面を動かし、小さな島を指す。


「行き先、石垣島にしよう。沖縄の島。海で泳ぐなら、水着も買おうよ」


「そっちは、寒くないのか?」


「こっちより暖かいけど、十一月だからね。海の様子がいい日に、水着の上からウェットスーツを着て入ろう。向こうで借りられるって」


「海に入るときの、暖かい服?」


「そう。それの下に着るものを選ぶの」


 水着の売り場へ着くと、ティーラは青いものを見つけた。肩から腰までつながった形で、背中にも細い線が入っている。


「これ、泳ぎやすい?」


「試してみよう。腕を動かして、きつくないかもね」


 ミカは撮影を止め、ティーラと試着室へ向かった。


 戻ってきたティーラは、選んだ水着を胸の前で持っていた。


「これにする」


「テントも青で、水着も青だな」


 ロッカが言うと、彼女は嬉しそうに頷いた。


「うん。これで泳ぐ」


 ロッカも緑の水着を買った。ヴィクターは大きなサイズを探してもらい、ミカも自分の分を選ぶ。


 カインは、その間、買ったばかりの椅子に座って待っていた。


「お店にも椅子、あるんですけど」


「俺のを試している」


「気に入ったんですね」


「海は、これでいい」


 買い物を終えると、ティーラは武器と水着の袋を見比べ、それから恐竜マグの袋を抱え直した。


「海にも、これ持っていこう」


「ああ。使おうな」


 ロッカが答えたとき、ミカの端末に予約の画面が出た。


「飛行機、五人分取れたよ。十一月二十三日、出発」


「あと四日か」


 ティーラが指を四本立てた。


「寝て、起きて、四回」


「新しい寝袋から、ちゃんと出てきてね」


 ミカが言うと、ロッカはマグの袋を持ち直した。


「その日は、一回で起きるよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。