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恐竜ダンジョンで30年生き抜いた男、ドラゴンを素手で止めたらダンジョン配信でバズった~新人F級ですが、相棒のティラノサウルスも人間になったので一緒に無双します~  作者: レイヴ
第二章 飛べない最強、空へ行く

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第028話 恐竜育ちの二人、五人で海へ行く

 ティーラは、砂浜へ出たところで足を止めた。


 木立の向こうに見えていた青が、視界いっぱいに広がっている。波打ち際は砂の粒まで透け、その先は明るい緑、もっと遠くは濃い青だった。


 向こう岸がない。


 白い波が崩れ、足元の砂を濡らして戻っていく。


「……海だ」


 ロッカも隣に立った。しばらく二人で眺めてから、ティーラが鞄の肩紐を握り直す。


「ボク、早く入りたい」


「着替えてこよう。あっちで借りられるって」


 十一月二十三日。五人は、石垣島へ来ていた。


 朝、ミカがミナトの裏庭へ迎えに行くと、二人のテントはもう畳まれていた。ロッカは靴も履き終えて、門のそばで待っていた。


 三日前に受け取った紺のジャンパーも、五人分揃っている。立川では首まで閉めていたが、ここでは前を開けてちょうどよかった。


 ミカが浜の店で撮影を確かめ、ポチを呼んだ。


「皆さん、こんにちは! 今日は石垣島に来ています。五人、揃いました!」


 レンズが海へ向き、砂浜にいる四人を順に映す。


〈海だあああ〉

〈カインさんまで来てる!〉

〈肩のFでっかw〉


「いいだろ! どこから見てもFだぞ!」


 ヴィクターが肩を突き出した。その向こうで、カインは木陰に椅子を広げていた。


「もう休憩ですか」


「景色を見に来たんだ。よく見える場所に座る」


 ミカも、椅子の向こうへ目をやった。


 木陰から波打ち際までは、まっすぐ砂が続いている。泳ぐ場所の浮きも見えた。荷物を置いて、あとで休むのには、確かによさそうだった。


「じゃあ、鞄もお願いします。濡らしたくないもの、預けますね」


「恐竜のカップも、ここでいいか?」


 ロッカが袋を持ち上げると、カインは椅子の横を示した。


「砂が入らないよう、閉じておけ」


 四人は、買った水着の上に、借りたウェットスーツを着て戻ってきた。店の人に使い方を教わったマスクと、浮くためのベストもつけている。


 ポチは浜に残し、水際から撮ってもらうことにした。


 ティーラが、ロッカと並んで波へ足を入れた。


 膝まで来た水が引くと、踵の下で砂が動く。彼女は少し足を開き、次の波を待った。


 今度は、来るのに合わせて歩いた。


「これ、気持ちいいね」


 ロッカは水の中の自分の足を見た。向こうに、ティーラの足も見える。波が通るたび、二人の影が砂の上で揺れた。


 小さな魚が、浅瀬を横切った。


 二人が同時に顔を向ける。


「捕らないでね! 今日は見るだけ!」


 後ろからミカが声を掛けると、ロッカは片手を上げた。ティーラは、伸ばしかけた指を引っ込める。


〈今ちょっと手が出たぞw〉

〈水族館連れていくときも気をつけて〉

〈今日は見るだけだからな!〉


「分かってるよ。小さいし」


「大きくても駄目!」


 ティーラが笑った。


 浮きの内側まで進み、マスクを顔へ下ろす。水へ顔をつけると、背中が浮いた。腕で水をかき、足を動かす。


 すぐ下を、さっきとは別の魚が通った。


 目で追いかけているうちに、少し先まで泳いでいた。顔を上げると、ロッカが隣で待っている。


「見えたか?」


「黄色いのがいた。石の下に入ってった」


「俺は、青いやつも見たよ」


 ティーラは、もう一度マスクを直した。


「次、そっちを見てくる」


 今度は、顔を上げずに少し長く泳いだ。ロッカもついていく。


 ミカは二人の背中を見送り、遅れて浅瀬へ来たヴィクターへ手を振った。


「ヴィクターさんも、魚を見ましょうよ」


「おう! そっちか!」


 大きな腕が水をかいた。


 ミカの顔まで、しぶきが来た。


「私の向こうで泳いでください!」


「悪い! ちょっと離れる!」


 顔を拭っている間に、また水音がした。ミカは目を閉じたまま笑った。


 ひと泳ぎして戻ると、ティーラは波打ち際へしゃがんだ。寄せてきた水に手を入れ、指の間からこぼす。


 ロッカも隣へ腰を下ろした。


「足、疲れたか?」


「ううん。もうちょっと、ここにいる」


 海は、座って見ても広かった。


 ティーラは肩の濡れた髪を払い、遠くへ目を向けた。ロッカも何も言わず、隣で波に足を洗われていた。


 ミカはポチへ合図を送り、二人から少し離れた。


 夕方、着替えた五人は、浜の店のテラスで休んでいた。


 持ってきた折り畳み椅子三脚に、店で借りた椅子を二脚足して、テーブルを囲んだ。風が冷たくなってきたので、紺のジャンパーもまた着た。


 ロッカとティーラの前には、白い恐竜マグが並んでいる。


「よし。今度は、ちゃんと聞いて淹れたぞ」


 道具を借りたヴィクターが、ポットを持って戻ってきた。


「またヴィクターさんのコーヒーなんですね」


「任せとけ。今日は火で豆を煎ってねえ!」


「そこから心配されてるの、分かってたんだ……」


 ロッカが一口飲み、マグを見た。


「……前のより、飲める」


「おっ。いいぞ!」


 カインは、先に牛乳を注いだ。


「おい、まだ飲んでねえだろ!」


「前回は飲んだ」


 ミカが吹き出すと、ポチの向こうでもコメントが流れた。


〈前回の経験が生きてるw〉

〈コーヒーだけ毎回強敵〉

〈そのマグ、ちゃんと持ってきたんだ〉


 ティーラも牛乳を足し、両手でマグを持った。横のティラノサウルスを指でなぞってから、ひと口飲む。


「これで飲めて、よかった」


「俺も。割れずに来たしな」


 ロッカが自分のマグを並べた。


 ミカは端末を見た。青い海の映像の横に、視聴者の言葉がいくつも重なっている。


「今日は、ここまでにします。私もちょっと、飲みながら海を見たいので。またね!」


 配信を止めると、航から連絡が来ていた。


【姉ちゃんと見てました。きれいって、笑ってます】


 ミカは画面をロッカへ見せた。


「紬さんも、病院から見てくれてたって」


「そっか。帰ったら、会いに行こう」


「うん。予定、聞いてみるね」


 ティーラが鞄から青いノートを出した。


 開いたところにある、海の文字。その横へ、ゆっくり丸をつけた。


 ロッカが覗き込むと、彼女はノートを少し寄せた。


「来られたね」


「ああ。ちゃんと泳げたな」


 ノートを閉じたティーラが、ロッカの手の甲を三回たたいた。


 とん、とん、とん。


 ロッカも三回、たたき返す。


「次、どこに行こうか」


「次は、みんなにも聞こう」


 話を聞いていたヴィクターが、ポットを置いた。


「肉がうまいとこ!」


「そこは変わらないんですね」


 ミカは笑いながら立ち、ポチを海側へ回した。


「その前に、写真。今日、五人でちゃんと撮ってない」


 ヴィクターが肩のFをカメラへ向ける。カインはカップを置き、少し椅子を寄せた。


「ポチ。私も入れてね」


 ミカが空いた椅子へ戻ると、シャッターが鳴った。


 写真には、五人と、大きなFが五つ写っていた。

【第一部完結】


ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!


初期からレビューや感想で応援してくださった皆様、そして読み続けてくださった皆様に、心から感謝しています。


『恐竜帰還』は、私が書いてきた作品の中でも特に思い入れが強く、一番時間をかけて作ってきた物語です。


三十年間を一緒に生き抜いたロッカとティーラが、今度は五人で海へ行く。そんなところまで描けたことを、作者として嬉しく思っています。


ここで第一部は一区切りです。


ロッカとティーラには、まだ見せたい景色があります。五人で行ってほしい場所も、描きたい冒険も、まだまだたくさん残っています。


もし「この五人の続きをもっと読みたい!」と思っていただけたら、★評価や作品フォロー、感想で応援していただけると、本当に励みになります!


いただいた応援を励みに、第二部についても前向きに考えていきたいと思っています。


また、この五人と新しい冒険へ出かけられたら嬉しいです。


ここまで五人の冒険を見守っていただき、本当にありがとうございました!


レイヴ


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