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恐竜ダンジョンで30年生き抜いた男、ドラゴンを素手で止めたらダンジョン配信でバズった~新人F級ですが、相棒のティラノサウルスも人間になったので一緒に無双します~  作者: レイヴ
第二章 飛べない最強、空へ行く

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第026話 報酬二百五十万円! 空飛ぶ車、買えるよな?

「今回の救援報酬は、二百五十万円です」


 喫茶店ミナトのテーブルに、五つの封筒が並んだ。


 十一月十八日の午後。窓際の席には、いつもの五人と、蒼天探索社の代表が座っていた。


 天城宗一郎《あまぎそういちろう》。紬と同じS級の探索者でもあると、来る前にミカが教えてくれた。


 天城はロッカたちへ、改めて頭を下げた。


「六人を連れて帰ってくださって、ありがとうございました。成瀬と真島も、ご家族のもとへ帰りました。道具も、お渡ししています」


「水筒も?」


「はい。一緒に」


 ロッカは頷いた。


 あの水筒を使っていたところは、一度も見られなかった。


「紬は、まだ入院が必要です。航が毎日、顔を出しています。ほかの三人も治療を続けています」


「そっか。今度、会いに行ってもいいか?」


「もちろんです。本人にも伝えます」


 天城は、封筒を一つずつ差し出した。ロッカの名前も、ティーラの名前も書かれている。


「五人で等分して、お一人五十万円です。カインさんの分も、こちらに」


「確かに受け取った」


 カインが答えると、天城はもう一度、五人へ礼を言った。


 リラに見送られ、天城が店を出ていく。入口の鈴が鳴り終わってから、ヴィクターが自分の封筒を持ち上げた。


「五十万か。いい肉が買えるな!」


「ヴィクターさん、全部お肉にしないでくださいね」


「分かってる。コーヒー豆も買う」


「そこじゃないです」


 ミカは笑い、ポチを呼んだ。封筒は皆の鞄へしまってから、撮影の向きを確かめる。


「皆さん、こんにちは。今日は、次の冒険に向けた買い物の相談です。それと、救援の報酬をいただきました。一人、五十万円です!」


〈五十万!〉

〈お疲れさま。ちゃんと五人分だ〉

〈今日の肉は高そう〉


「なあ、ミカ」


 ロッカが身を乗り出した。


「これ、空飛ぶ車、買えるか?」


 ティーラも顔を上げた。


「買ったら、好きなときに乗れる?」


「乗れるだろ。海にも、あれで行けるぞ」


「ボクのも使っていいよ。一緒に買おう」


「おう。二人分なら、もっと大きいのにできるな」


「待って、待って」


 ミカが二人の間へ端末を置いた。画面には、白い車体に四つの回転翼がついた、小さな車が映っている。


「小さいのでも、三千万円くらいするよ」


 ロッカは画面を見た。自分の鞄を見て、もう一度、画面へ戻る。


「……二人分でも、足りない?」


「まだまだ足りない」


「それ、五十万が何回もらえれば買えるんだ?」


「えっと、三千万円を五十万円で……」


 ミカが端末の計算機を開くより先に、カインが答えた。


「六十回だ」


 カインはカップを置きもせず、続けた。


「今回の分を貯めておけば、あと五十九回だな」


「おい、五人で出せばどうなる?」


 ヴィクターが聞いた。


「十二回。全員の取り分を、全部使うならな」


「おっ。急に近くなったぞ!」


「じゃあ、あと十一回か」


 ロッカとティーラが顔を見合わせる。


「それは、一円も使わなかったらね。ご飯も道具も必要だし、車を買ってからも、動かすお金がかかるよ」


「飯が買えねえのは困るな」


 ヴィクターが真っ先に引いた。


〈肉で計画が止まったw〉

〈天才、計算が速い〉

〈操縦できる人はいるんですか〉


「コメントです。『操縦できる人はいるんですか』」


 ポチの声に、ロッカは四人を見た。


「……誰か、動かせるか?」


「俺は持っていない。操縦の免許はな」


 カインが答えた。


 ミカとティーラも、首を振った。


「俺も、あれは飛ばしたことねえぞ!」


 ロッカは、白い車の写真をしばらく見ていた。


「じゃあ、先にそれもいるんだな」


「うん。まずは、乗せてもらおう」


 ミカが次の画面へ移ると、今度は厚手の上着が並んだ。


「最近、朝が寒くなってきたし。二人の寝るものも、冬用を見ようか」


「それ、欲しいな。新品のテントって、どんなのがある?」


 ロッカが聞いた。


「ボクも。青いの、あるかな」


 ティーラが画面へ近づく。今のテントを買ったときと、同じ色を探していた。


「朝は、寝袋から出たくなくなるんだよな」


「ロッカ、最近、返事だけして出てこない」


「起きてるよ」


「起きてるって、三回くらい言う」


 ミカが吹き出した。カウンターでカップを拭いていたリラも、こちらを見て笑っている。


「新しいテントなら、今度は冬用ね。寝袋も暖かいものにしましょう」


「中を暖かくするものもあるのか?」


「充電して敷くマットもあるよ。お店で見てみよう。朝、片づけられる大きさがいいね」


「うん。そこは、ちゃんと見たい」


 ロッカは値札の数字を指で追った。車ほどには、長くなかった。


 ヴィクターが上着の写真を覗き込む。


「なあ。俺たちも、揃いのジャンパー作ろうぜ」


「五人で?」


「おう。肩にFって入れるんだよ。でっかくな!」


 自分の肩を叩き、ロッカを見る。


「並んだら、格好いいだろ」


「いいな。カインのも作ろう」


「当然だ。俺だけ外すな」


 カインがすぐに答えた。


〈自分からFをでかくするの好き〉

〈五人で着てくれ〉

〈カインも着る気満々じゃん〉


「色、どうする?」


 ティーラが聞いた。


「五人でお店に行って、決めようか。ヴィクターさんの腕が入るかも、確かめたいし」


「入るやつにしろよ。Fまで破れちまう!」


「入ってから言ってください!」


 ミカは笑いながら、買うものを端末へ書き留めた。


 冬用のテントと寝袋。暖かいマット。五人の上着。


 その下へ何か足そうとしたとき、ロッカがティーラへ顔を向けた。


「お前の武器も、見てみるか」


「ボクの?」


「槍、使ってたろ。気に入ったのがあれば、自分のも持っておける」


 ティーラは少し考え、両手を持ち上げた。


「ボク、爪みたいなのがいい」


「爪?」


「手につけるの。引っかけられて、握ったら殴れるやつ、ないかな」


 指を曲げ、開き、それから拳を作る。


「つかむ方が、慣れてるから」


「手につける武器はあるよ。爪がついたのも、探してみようか」


 ミカが武器の店の画面を開くと、ティーラは椅子を寄せた。


「これ、握れる?」


「お店で、つけてみよう。指がちゃんと動くかも」


「うん。見たい」


 ヴィクターも覗き、画面の大きな斧を指した。


「これも、いいな!」


「ヴィクターさんの買い物まで増えた」


「俺だって五十万あるんだぞ!」


 ロッカは鞄へ手を置いた。車は買えなかったが、買いに行きたいものは増えていた。


 ティーラが自分の鞄を開け、小さな青いノートを出した。


「ミカ。これも」


 開いた最初の頁に、大きく『海』と書いてある。


 その下に、空飛ぶ車。でかい肉。旅の配信。カインの大きな名前。


「こっちは、行ける?」


 ティーラがいちばん上を指した。


 ミカは端末の買い物の画面を閉じ、海の写真を探した。白い砂浜から、青い水がずっと向こうまで続いている。


「行けるよ。道具を揃えたら、次はここへ行こうか」


 ティーラはノートと写真を交互に見た。


「ボク、この足で泳いでみたい」


「いいな。俺も、ちゃんと見たい」


 ロッカも画面へ顔を寄せた。空を飛ぶ乗り物には、もう乗れた。今度は、あの水の向こうだった。


「おう。海なら、魚も食えるな!」


「ヴィクターさんは、まず食べるところなんですね」


「泳いだら腹が減るだろ!」


 カインがカップを置き、写真の端を指した。


「俺は、日陰のある席を取る」


「カインさんも来るんですか?」


「五人で行く話だろう」


 ティーラが笑った。


〈次は海!〉

〈五人揃って旅行か〉

〈天才、もう席を確保してるw〉


 ミカはノートを手元へ引き寄せた。


「じゃあ、行く日を決めよう。今度は、書くだけで終わらせないよ」


 ティーラが、海の写真をもう一度見た。


「ロッカ。水しかないね」


「うん」


「ずっと、向こうまで」


 ロッカは、隣から同じ青を見ていた。


「行ってみよう。どこまで見えるか」

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