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恐竜ダンジョンで30年生き抜いた男、ドラゴンを素手で止めたらダンジョン配信でバズった~新人F級ですが、相棒のティラノサウルスも人間になったので一緒に無双します~  作者: レイヴ
第二章 飛べない最強、空へ行く

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第024話 S級を倒した怪鳥、F級に引きずられる

 同じ頃、ロッカは森を走っていた。


 庭から離れる方へ進み、木々の間を抜けていく。後ろからは、真島の斧を持ったヴィクターがついてきていた。


「おい、ロッカ。どうすんだ?」


「ここまで呼ぶ。さっきは、足元が悪かった」


 森が途切れ、岩の露出した草地へ出た。


 庭からは森を挟んだ反対側で、島の縁からも離れている。大きな岩は土の奥まで続き、その周りを太い木の根が囲んでいた。


 ロッカは岩を踏んだ。動かない。


 枝の向こうには、白い石柱の並ぶ島が見えた。


 鳥は、その柱の一本に止まっていた。片方の翼を何度も動かしている。ヴィクターの石柱が当たったところは、羽が大きく抜けていた。


「脚を止める。羽がそろってる方を頼む」


「おう。もう飛ばさねえ」


 ヴィクターが木の陰へ入った。


 ロッカは足元の石を拾い、鳥の止まる石柱へ投げた。端が欠け、鳥の頭がこちらを向く。


「こっちだ」


 ロッカが草地へ出ると、白い鳥は翼を広げた。石柱を蹴り、二つの島の間へ飛び出してくる。


 速い。


 さっきは横から見ていた嘴が、今度はまっすぐこちらを向いていた。


「嘴も来るぞ!」


「見えてる」


 ロッカは槍を下げた。


 白い腹の下から、太い脚が伸びる。


 草が寝た。風に押され、枝が大きくしなる。


 鉤爪が、顔のすぐ横を抜けた。


 ロッカは右手の槍を、伸びてきた二本の爪の間へ差し込んだ。刃の根元にある突起が、片方の爪の曲がったところに掛かる。


 鳥が脚を引いた。


 ロッカは槍でその爪を引き寄せ、根元を左手でつかんだ。岩の上で踏ん張る。


 足元は、崩れなかった。


「下りろ」


 全身で引いた。


 鳥の身体が前へ傾き、胸から草地へ叩きつけられた。大きな嘴が、土へ深く刺さる。


 すぐに翼が持ち上がった。


「うらぁッ!」


 木の陰から、ヴィクターが踏み込んだ。


 羽のそろった方の翼へ、真島の斧が振り下ろされる。


 白い羽が弾け、翼が付け根から折れ曲がった。反対側の翼が激しく土を叩いたが、身体は浮かなかった。


 鳥が首をひねった。


 土をえぐった嘴が、ロッカへ迫る。


 ロッカは左手で爪を押さえたまま、嘴を脇へかわした。右手の槍を爪の間から抜き、開いた顎の下へ突き上げる。


 白い首が、のけぞった。


 岩を踏み、もう一度押し込む。


 鳥の声が止まった。


 ヴィクターが斧を抜く。ロッカも槍を引き抜き、爪から手を離した。


 巨体が横へ崩れた。二人は少し離れ、鳥の動きを見ていた。


 胸も、翼も、爪も動かなくなる。


「……終わりか?」


「ああ」


 ロッカは槍を握り直した。


 柄は折れていない。刃の脇の突起にも、曲がったところはなかった。


「助かったよ、成瀬」


 小さく言って、穂先の血を草で拭った。


 隣ではヴィクターが、斧の刃を確かめている。


「お前、よくあの嘴の下へ入れるな」


「トリケラトプスは、避けても横から角が来たんだ。こいつは首が見えたから」


「向こうじゃ、ずっとそんなもん狩ってたのか?」


「毎日じゃないよ。食い切れないだろ」


「そっちを気にしてんのかよ」


 ヴィクターが短く笑い、斧の血を拭った。


 ロッカは鳥の脚を見た。


「運べるか?」


「任せろ。こいつも持ってくんだな」


「あの二人には見せてやりたい」


 ロッカは、来た道へ顔を向けた。


「戻って、みんなを帰そう」


「おう。こいつを引くくらいじゃ、遅れねえよ」


 ヴィクターが翼を畳み、片脚をつかんだ。引くと、草の上を白い巨体が滑った。


「槍と斧、持っててくれ」


「うん」


 ロッカは斧を受け取り、森へ向き直った。


 少し広い木々の間を選び、ロッカは走り出した。ヴィクターも鳥を引きずり、同じ速さでついてくる。


 枝の向こうから、ポチの声が聞こえた。


 庭は、静かだった。


 森を抜けると、灰色の鳥が草や敷石の上に何羽も倒れている。


 噴水のそばにいたティーラが、こちらを向いた。


「ロッカ」


「こっちも来たんだな」


「うん。もういないよ」


 ティーラの向こうで、ミカが顔を上げた。


 ロッカを見て、それから後ろの白い鳥を見る。


「……それ」


「狩ってきたぞ」


 ヴィクターが噴水の手前で止まり、脚から手を離した。


 白い鳥は、もう動かなかった。


 ミカは木陰から立ちかけ、手元の端末を見て座り直した。負傷した紬たちのそばを離れず、ポチだけを鳥へ向ける。


「コメントです。『白いの引きずってる!?』『柱ぶつけたやつだ』『倒したところは!?』」


 ロッカは、丸いカメラを見た。


「撮ってないよ。ポチ、こっちにいたろ」


「私も見たかったよ……」


 ミカが言った。


 ポチは白い鳥の頭から、折れた翼へレンズを動かした。


「『ほんとに動かない』『S級の人を倒したやつだよな』『あの二人、何してきたんだ』」


 ロッカは借りた槍と斧を見た。


 説明するより先に、返したかった。


「ミカ。みんなは?」


「大丈夫。ティーラが、一羽も通さなかった」


 ロッカが顔を向けると、ティーラは自分の槍を持ち直した。


「新しく怪我した人は、いないよ」


「ありがとう。助かった」


「うん」


 ポチから、カインの声がした。


『会社から連絡が来た。地上の門に、帰還可能と出ている』


 ミカが端末を握り直した。


「帰れるんですね」


『ああ。外の医療班も待っている。まず紬を運べ』


 ロッカは木陰へ歩いた。


「ポチ、鳥を映してて。こっちは入れないでね」


 ミカの声に、カメラがその場へ残った。


 紬は担架に横たわったまま、こちらを見ていた。南雲も、額に包帯を巻いた桐野も、鳥の方へ顔を向けている。


「二人とも、怪我は……」


「ないよ」


 ロッカが答えると、紬の口が少し開いた。


 けれど、次の声は出なかった。


 ロッカはその隣へ膝をついた。


 成瀬と真島は、出ていったときと同じ場所にいた。顔の上の上着も、ずれていない。


「成瀬。返すぞ」


 槍を、そのそばへ戻した。


 ヴィクターも斧を受け取り、真島の隣へ置いた。


「助かった。ありがとうな」


 桐野が、水筒を抱えたまま二つの武器を見た。


「……二人の武器で、倒したんですか」


「ああ。使いやすかった」


 ロッカが答えると、桐野は水筒を胸へ寄せた。蓋には、もう触れなかった。


 榎本が斧の柄へ手を伸ばす。その布に一度触れ、手を引いた。


 ポチから、航の声が聞こえた。


『姉ちゃん。帰れるって』


 紬は目を閉じた。


「……うん」


『外まで来て。ちゃんと、待ってるから』


 もう一度、小さく返事をした。


 ロッカは立ち上がり、担架のそばへ回った。ヴィクターも反対側へ来る。


「紬。運ぶよ」


 彼女の目が、隣の二人へ動いた。


「……あの二人も」


「うん」


 ロッカは頷いた。


「六人とも、帰ろう」

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