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恐竜ダンジョンで30年生き抜いた男、ドラゴンを素手で止めたらダンジョン配信でバズった~新人F級ですが、相棒のティラノサウルスも人間になったので一緒に無双します~  作者: レイヴ
第二章 飛べない最強、空へ行く

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第020話 飛べないなら、降りてこい

 灰色の鳥が、折れた柱の陰から跳んだ。


 草地で待つロッカへ翼を広げ、両脚を突き出してくる。胸へ迫る爪を避け、ロッカは左手で片方の足首をつかんだ。


 そのまま下へ引く。鳥の首が横へ崩れたところに、右手の槍を突き入れた。


 重い身体が草を潰す。槍を引き抜く間にも、橋の向こうから二羽が飛んできていた。


 一羽はヴィクターへ。もう一羽は白い石の道へ回り込み、ミカを狙う。


 ティーラがミカの前へ出た。飛び込んできた嘴を半歩でかわし、横から首を殴る。


 鳥は道の脇へ叩きつけられ、脚を一度だけ跳ねさせた。


「当たってない?」


「うん。大丈夫」


 ミカが答えた直後、隣の草地から鈍い音がした。


 ヴィクターの拳が、三羽目を真下へ殴り落としていた。舞い上がった土を払い、橋の向こうへ声を張る。


「まだ来るか!」


 枝を蹴りかけていた鳥が、翼を畳んだ。ほかの鳥も木々の奥へ引っ込んでいく。


〈二羽目ミカ狙ってたぞ〉

〈奥の群れ、戻っていってない?〉

〈あの爪が来るの見て逃げないのすごい〉


「コメントです。『登録のFって、誤字じゃないの?』」


「誤字じゃないです。私のは実力通りです」


『そこは疑っていない』


 ミカが何か言いかけたとき、ポチが風に押され、彼女の肩まで下がった。


 草が、一斉に寝た。


 橋の下を流れていた雲が、白い筋を引いて巻き上がる。


「上!」


 ティーラの声に、ロッカは槍先を上げた。


 橋の向こうから、白い鳥が降りてきた。


 広げた両翼の影が、道と両脇の柱を覆う。曲がった嘴の下で、二本の太い脚が伸びた。


 鳥の目が、道にいるミカたちへ向いた。


「ティーラ、ミカを門の方へ!」


 ティーラがミカの腕を引く。ロッカは草地から道の端へ踏み込み、二人と鳥の間へ入った。


 鳥は片方の爪で、道の脇の柱を蹴った。


 砕けた石が飛ぶ。


 もう片方の脚が、ロッカへ伸びてきた。


 ロッカは腰を落とし、鉤爪の一本、その根元を左手でつかんだ。


「捕まえた」


 肩へ重みがかかった。


 頭上を覆う腹が、槍の届くところまで来る。右腕を引き、突き上げようと足へ力を込めた。


 靴の下で、敷石が沈んだ。


 柱の根元から亀裂が走る。道の端が、土ごと外へ崩れ始めた。


「ロッカ! 離せ!」


 横からヴィクターの腕が腰を支えた。


 ロッカは爪を放し、彼と一緒に草地へ跳び退いた。頭のすぐ上を白い翼がかすめ、石の欠片が顔へ飛んでくる。左腕でかばい、右手の槍を草すれすれまで下げた。


 鳥は道を通り抜け、島の縁から空へ出た。


「ミカ!」


「大丈夫! 二人は!?」


 門へ戻る道の中央で、ミカが手を上げていた。ティーラが腰を支え、風に押されないよう一緒に踏ん張っている。


「平気だ!」


 ロッカは立ち上がり、さっきまでいた場所を見た。


 道の端がえぐれている。柱を支えていた岩まで、白い断面を見せて割れていた。


「……プテラノドンより、強いな」


「向こうにも、あんなのいたのか?」


「もっと小さかった。石も、ここまで割らなかったし」


『会社の資料と一致した。白い方が主、大嵐鳥《ストームバード》だ』


「大焼鳥《ジャンボやきとり》の間違いじゃねえか!」


 ロッカは左手を開き、もう一度握った。


 掴めた。指も動く。


 白い鳥は橋の外側を回り、こちらへ向き直ろうとしていた。鳥の向こうには、雲しかない。


「次に下りてきたら――」


「ロッカ、わざわざ待つ必要ねぇ!」


 振り向くと、ヴィクターが少し後ろの草地へ戻っていた。


 そこには、さっき道から退けた石柱が横たわっている。


 ヴィクターは両手を下へ差し込み、抱え上げた。長い柱の真ん中を右手で受け直し、片端を前へ向けて肩の上に載せる。


 ロッカは、思わず笑った。


「それ、投げるのか!」


「おう!」


 ヴィクターが左手を離した。


 石柱を槍投げのように構え、空を行く鳥へ身体を向ける。


「うらぁあああッ!」


 踏み込んだ靴が土へ食い込んだ。ヴィクターが右腕を振り抜くと、石柱が橋の横を抜け、鳥へ向かって空を斜めに走った。


 白い鳥が首をひねった。翼を傾け、身体を逃がそうとする。


 間に合わなかった。


 石柱の先が、広げた翼の外側を打った。


 白い羽が束になって千切れ、巨体が横へ流れる。衝突した柱は中ほどから折れ、二つの塊になって雲の中へ落ちていった。


 鳥が両脚で空を掻いた。


 一度、大きく高度を落とす。激しく羽ばたいて持ち直し、そのまま隣の島の向こう側へ回っていった。


「くそっ。もうちょい下だった!」


「ヴィクターさん! 今のうちに行きましょう!」


 ミカがポチを橋へ向けた。


〈うちの車より長い物を投げた〉

〈どっちがモンスター!?〉

〈それでもまだ飛べるのかよ〉


『橋は残っている。森まで渡れ。鳥が戻る前に』


 カインの声を聞き、ロッカは割れた道端を草地から回り込んだ。


 橋の入口まで出て、三人を振り返る。


「先に六人を探そう。ミカ、走れるか?」


「走る。今なら、すごく走れる」


 ティーラが彼女の隣につく。ヴィクターも、道端へ置いていた担架と救急道具を拾い、背負い直して追いついた。


 ロッカを先頭に、四人で橋へ入った。


 両側の低い石の柵の向こうには、雲が流れている。ミカは下を見ず、すぐ前のロッカについてきた。ティーラが隣を走り、ヴィクターが最後につく。


 橋を渡りきると、白い道は木々の間へ続いていた。


 太い幹の陰へ入ってから、ロッカは入口の島を見た。


 三羽の鳥が倒れ、砕けた道端には土煙が残っている。ヴィクターが持ち上げた石柱は、もうどこにもなかった。


「……あれ、よく当てたな」


「俺の勝ちにしていいぞ!」


「何の勝負だよ」


 ロッカは笑い、森の奥へ向き直った。


 木々の向こうに、白い翼が一度だけ見えた。


 まだ近くにいる。


 枝の上では、灰色の鳥がこちらを見下ろしていた。槍先を向けると、幹の裏へ隠れる。


 ロッカは走るのをやめた。ミカが追いつくのを待ち、四人で土の道を進む。


 足元には、靴の跡が残っていた。道の脇の石には、血のついた手で触れたような汚れもある。


 ミカがポチを低く下げた。


『昨日も、その道を通っています。姉たちは』


 航の声だった。


 木の根を避け、曲がった道の先へ出ようとしたとき、ティーラが立ち止まった。


「ロッカ。今、声がした」


 風が枝を揺らしている。


 ロッカも足を止めた。


「……誰か!」


 聞こえた。


 木々の先に、腰ほどの高さの白い石壁があった。一部が崩れ、隙間から向こうの草が見えている。


 声は、その内側からだった。


「こっちだ! 動けない人がいる!」


 ミカが端末を口元へ寄せた。


「航くん、人の声がした。今、そっちへ行くね」


 ロッカは三人と崩れた石の手前まで進み、壁の向こうへ声を張った。


「聞こえてるぞ! 助けに来た! 何人いる!」


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