音の海に浸かって。
「もうすぐだね。修学旅行〜」
昼休み、あおちゃんは私の席に来て話し始める。
「小鳥、実行委員だけどどう?忙しい?」
そう。私は修学旅行実行委員だ。もちろん担当の先生が吉田先生だったから。不純な動機だ。他にやりたい人いなかったし、別に良いだろ、、
「言わずもがなですよ〜」
「やっぱ忙しいか〜」
吉田先生目当てにして立候補したが全く話せていない。てか、何話せば良いんだ!?聞きたいことはたくさんあるけど、それが本人にとって聞かれてOKなことなのか、黒歴史的なのだからだめなのかのラインがわからない。
「あおちゃんはどうなの?体育祭実行委員」
「もちろん言わずもがなですよ〜?」
「ですよね〜」
あおちゃんはニマニマしている。
「次、理科だね。理科室もう行く?」
「そうだね。行こうか。」
こんな話をしていた。5年前の何もないとある日。
時は現代。
4月なのにとても暑い。もはや夏。桜は散り、葉桜が多く見られる春。
私は中学生時代のことを思い出して少しニヤニヤする。
「なーににこにこしてんの?」
私は尋ねられた。その人の後ろから差す太陽の光が眩しい。
「別に〜?」
「なんかめっちゃ幸せそうだね。」
「だって幸せですもの。」
2人で笑った。
部屋にはギターが置いてあった。
少し弾くか、と思いそれを手に取った。
アルペジオで音を奏でる。
それに合わせて歌を歌う。
歌うと言っても、鼻歌程度だったりするが。
「歌詞は〜?」
「まだです。」
「好きだよ。この雰囲気。」
「ほんと?じゃあ今度歌にするね。」
真っ白な部屋の中にいたが、心なしか鳥の鳴き声が聞こえたような気がした。
春だな〜なんて思っていると、名前が呼ばれた。
返事をして鏡の向こうにいる私に向かって笑顔をキメる。スマイル!
久しぶりに5年前のことを思い出したらもっと懐かしい日々が甦ってきた。
同じクラスのあの人のことだとか、あの時仲が良かった人のことだとか、部活であったことだとか、好きだった人のことだとか。
そして、憧れてた先生のことだとか。
もう少し、あと、もう少しだけ過去に浸らせて。
その気持ちを胸の奥に閉じ込めて歌を歌ってみた。
なんか良い感じかも。
もう行こうか。




