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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case15 闇への序曲
704/707

#32

 ずっと嫌な夢を見ていた・・・感情の赴くままに暴力を振るい、辺りを血の海変えていくような状況、そして血に汚れた自身の手・・・そして・・・・

「この感触・・・最高にたまらない・・・」「違う!!」



「ここは・・・・」

 圭は目を覚ました。最後に気を失ってからどれほど時間が経ったのか分からない。ただ、肉体もあり、知らない場所だが現実世界ではあるのでまだ自分が天国に行っていないという事が理解できた。

「圭ちゃん・・・・」

 そして目の前には自分の看病をしていた咲が彼が目覚めた事の嬉しさから涙を流して抱き着いた。

「咲・・・イテっ・・・俺はまだ怪我人!!」

「あっ、ごめん。でも、圭ちゃんここに運ばれて5日も目を覚まさなかったから」

 咲から5日という言葉を聞いて自身がそんなに長く目を覚まさなかったのかと驚くと共に心配を大きくかけてしまった事を反省する。

「悠と透はどうなんだ?アイツらも怪我してたんじゃないのか?」

「うん・・・2人とも酷い怪我だったよ。特に悠ちゃんもここに連れて来られた時は意識が無かったけど3日前には意識を取り戻してるよ」

「そうか・・・2人が無事で良かったよ」

「私が2人を呼んでくるね」

 咲は病室を抜け出して悠と透を呼びに行った。圭は咲が病室を出ると自分の体の状態を確認する腹部や肩口から下には包帯が巻かれており、動くと傷がまだ十分痛む。それと僅かだが体中が少し痛く筋肉痛に近い感触であった。腹部や肩口の傷は切られたり刺されたりした時の傷だと分かるがこの筋肉痛のような痛みについては圭も何も分からなかった。

「一体俺は・・・・」

「圭・・・・」

 声の方に目を向けると病室の入り口に悠と透の2人が立っていた。咲に呼ばれてこの部屋に来た2人は意識を取り戻している圭の姿を見て安堵した表情をして病室に入る。

「良かった・・・・このままずっと目が覚めないと思って心配してたわよ」

「そんな簡単にくたばるかよ・・・」

「まったく・・・無茶ばかりして本当にバカよ・・・・」

 透は目が覚めないと心配した事に加えて無茶ばかりする彼に対する思いから涙が溢れていた。

「あまり透に心配かけさせないで九十九君・・・落ち着かせるのが大変なんだから・・・」

 悠は悠で相変わらずの態度で圭もどこか安心した。

「なあ、透?俺って何か変な事なかったか・・・・何か大事な事を忘れている気がするんだけど?」

 圭からの問いが聞かされた瞬間に透の表情が固まる。

「別に・・・何もなかったわよ」

 横で見ていた悠は透の様子がおかしかった事に気付いていたが敢えて何も言わなかった。

「そうか・・・お前が言うなら何もなかったんだよな」

「九十九君が忘れっぽいのは今に始まった事じゃないでしょう?大方敵に殴られて記憶がおかしくなってるんじゃないの?」

「少しは怪我人をいたわるような言葉は無いのか・・・・」

 いつもの調子の圭と悠のやり取りを見ていつもなら注意する透もこの時ばかりはクスっと笑っていた。




 その後、今回の依頼について3人が集まった情報について話し合った。とはいえ、今回は不測の事態が起こった為に物的証拠はゼロで目撃証拠も圭が見た研究所の姿くらいで証言も等の本人たちが無残に殺されてしまっては語る者はいない。そして、圭から依頼人の探していた兄を見つけたが救い出す事が出来なかったと告げた。

「それで今回の依頼の事だけど依頼者には依頼料を返還するべきだと私は思っているのだけど、2人はどう思う?」

 透は今回の依頼に関しては失敗と捉えており依頼料を返還すべきではと2人に尋ねると2人も同じ意見だった。

「そうだな・・・・依頼人の願いだったお兄さんを救う事が出来なかったんだ。それに俺達がアイツらを潰した訳じゃないし・・・」

 今回の騒動は巷では狂乱した村人達による集団殺害事件としてセンセーショナルな取り上げして連日報道番組や情報番組はそれ一色なっている。3人からすればそういったミスリード的な内容で世間がこの話題を消化されてくれれば幸いと感じていた。

「依頼とは関係ないけど聞いて欲しい事があるの・・・今回の件、私は宇佐美の時、それに前のモグラ男の時の事が頭に浮かんだの・・・・私達の知らない裏で罪のない人達が犠牲にされてあんな作られてしかもそれで・・・・」

 透は今回の件で過去の依頼でも出くわした人ならざる者達と共通点が浮かんでしまい。自分達の裏で苦しめられている人達が居る事に心を痛めていた。

「言いたいことは分かるぜ・・・俺も宇佐美も今回の件も絶対に許せないと思う。けど、今の俺達に出来る事は限られてるし、そもそも俺達は正義の味方でもない」

「九十九君の言う通りよ。私達が悪を捌くなんて事をする権利も資格もないわ。けど、それで困っている人がいて助けを求めてきたら手を差し伸べるし、もしそんな連中が私達に牙を向こうものなら叩き潰す・・・それで良いでしょう?今は深く考えない方が良いわよ」

「そうね・・・」

 透の言葉に悠と圭の2人は自分達はあくまで正義のヒーローではなく、救える範囲の人達だけや自分達の大切な人達を守ってあげるだけでも十分と深く考える透に伝えた。




「ねぇ、透?少しだけ聞いていいかしら?」

「どうしたの?」

 その後、圭が退院した後にようやく自分達の家に帰る事が出来た。後ろで圭と咲はぐっすり眠っている中で助手席に座る悠が透に話しかける。

「九十九君が目を覚ました時に言ってた事を覚えてる?」

「・・・覚えてるわよ」

 悠の問いに対して少し間を開けて透が答える。

「彼に言いたくない事があるならそれは構わない・・・けど、私にまで隠す必要は無いんじゃないの?」

「・・・・怒ってるの?」

「そういう訳じゃないわ・・・隠し事はしてほしくないだけよ」

「悠は学生時代の圭は覚えてる?」

「忘れる訳ないでしょう?あんな人間のこと・・・・」

「悠は圭が学生時代に本気で怒った時の事は覚えてる?」

 突然、圭の学生時代の話を切り出し事に疑問は感じながらも悠は彼女が言った時の記憶を思い出して本人が思っている感想を述べた。

「正直に言ってあの時の九十九君は怖かった・・・・目の前の敵を倒す・・・いや、本当に完膚なきまでに破壊して殺す・・・初めて見た時は純粋に恐怖しかなかった」

「あの事件以降、復讐探偵になって圭は本気で怒るような事はなかった・・・・」

「まさか!!、透・・・」

 悠は焦ったような表情で透の顔を見る。透は悠が自分の言いたい事を察したと理解し、彼女がそれに対する答えを自分に求めている。

「もし・・・圭がまた同じような状況になった時・・・悠はどうする?」

 自身に質問が返ってきた事に少し動揺はありながらも悠は答える。

「止める・・・彼にあんな形で虐殺の十字架を背負って欲しくないわ。これは仲間として・・・彼の友人としての意見よ」

「私も同じ・・・もう2度と圭があんな思いをしなくて済むように私は彼を支えてあげたいと思ってる」

 2人はそれぞれの思いを確認した。その後、悠は後ろで眠る圭の姿を見て笑みをこぼした。

「ごめんなさい、私も疲れが溜まってるから寝るわ」


 この時はまだ知らなかったこの依頼をきっかけに彼らが巨大な闇と戦っていく事になるとは・・・・


CASE15 闇への序曲 Fin

次回の投稿は4月13日を予定してます。次回はエピローグになります。

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