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異世界のエルフ王女と現代ダンジョン  作者: タイニル
第2章 デンドロビウム

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第33話 やはり巨乳

 プリシラを見失った遥は総合案内所に来ていた。


「わかりました。従業員向けに放送します」


「よろしくお願いします」


 見かけたらすぐに女性店員に引き留めておくように言ってもらい、総合案内所に連絡してもらうようにお願いした。闇雲に探し回るよりは効果があるだろうと思ってだった。探すのを手伝ってもらうためにまさか迷子案内の放送を子供のいない自分がお願いすることになるとは思わなかった遥。しかもお母さん宛てではなく店の従業員向けだ。


 早めに探し出さなければ何をしでかすかわからない爆弾だ。周りに協力を求めざるを得なかったのだ。だが、時すでに遅しだった。


 ドオオォォォオン!


 飲食店街のほうから大きな音が響いてきた。遥はすぐにプリシラの仕業だと察した。そしてどこにいるのかもなんとなく察した。驚いている従業員にアリスバーガーがあるかどうかを尋ねる。


「この建物の中にアリスバーガーはある!?」


「え…ありますが……」


「わかったわ!」


 すぐに飲食店街へ向けて走り出す遥。


(なんで気づかなかったのよ! プリシラが今一番興味を引いているものがここにもあるじゃない!)


 走りながら自分に悪態をつきアリスバーガーへと向かう。道中何人かが逃げてきた。確実にプリシラが何かをやらかしたことがわかり焦る遥。


 アリスバーガーに着くと案の定プリシラがいた。店内は机と椅子が少し散乱しており壊れている机や椅子もあった。プリシラは壁際で一人の男性を鈍い音を響かせ殴り続けている。そのすぐ横にはダークバインドで拘束されて苦しんでいる男が一人いた。


「た…たすけ! ……てく……れ……もう! ……やめて…くれ!」


 殴られながらも男性が止めるように求めるがプリシラの攻撃は速さを増していく。手加減して殴り感覚が麻痺してきたところを見計らい意識を失わないように治癒魔法で治して再び殴り続けることを繰り返していた。倒れることすらも許されず一方的にただ殴られ続ける男性の精神は恐怖で占められていた。


 現場に来た遥は困惑し数秒動けないでいたが、、我を取り戻しプリシラに殴るのをやめさせるために駆けだした。


 プリシラを力で抑えるのは不可能だと遥はわかっている。だが遥にはプリシラを止める術がある。


 プリシラが何よりも優先するもの。それはおっぱいである。とりあえず顔におっぱいを押し付ければプリシラは止まるはずだと。


 そしてプリシラを止めるために抱きついた。


「プリシラ! ダメ! もうやめて!」


「………遥」


「お願いだからやめて!」


「………仕方ない」


 予想通りかはわからないが遥の要求通り殴るのを止めるプリシラ。だが横で拘束されている男性はそのままだったのでこっちも止めるように言うと素直にやめた。だが、逃げないように足だけは縛っていた。


 殴るのをやめさせたので今度は何故こんなことになったのかをプリシラから聞き出した遥は大きくため息をついた。


「はぁ~~~……やりすぎよ………」


「………私は悪くない。悪いのはこの男」


「「ヒィ!」」


 プリシラに睨みつけられ怯える二人の男性。どうしたものかと思っていたら誰かが警察に通報していたのかパトカーのサイレンが聞こえてきた。


「………この音は何?」


「…警察が来たのよ。プリシラにわかるようにいうと騎士団が犯罪者を取り締まりにきたってところかしらね」


「………そう。もう連絡がいってたのね」


「大人しくするのよ。男性が来てもちゃんと答えるのよ」


「………私は悪くない。食事の邪魔をする獣以下の男たちが悪い」


「ヒィ! そうです! 俺たちが悪いんです!」


 再び睨まれ怯える二人の男性。それを助けるかのように警察の男性が店内へと入ってきた。


 遥が対応し事情を説明している。店員も事務所から出てきて事情を話していた。警察はプリシラと二人の男性にも話を聞いたが両者一点張り。プリシラは「悪くない」男たちは「自分達が悪い」としか言わなかった。埒が明かないため監視カメラの映像を確認すると店員の話した内容と一致した。


 事情などは把握したが警察は非常に困った状況になってしまった。それはプリシラの存在だ。プリシラはまだ国賓として扱われている。正直なところ現場に来た二人ではどうすればいいかわからなかった。なのでプリシラのことは上に丸投げすることにした。


 男二人はそのまま連行されていった。そしてプリシラと遥はそのまま帰ることになった。帰りの車の中では遥が不安を漏らしていた。


「帰ったら叱られるわよねぇ………」


 不安を漏らしているがプリシラは知らんぷりだ。無表情なのに非常に機嫌が悪いのが伝わってくるため遥は居心地が悪かった。機嫌を取るためにアリスバーガーのドライブスルーに寄ってもらうと機嫌が良くなるのがわかった。今はおっぱい並みにアリスバーガーのハンバーガーが好きなようだ。


 車内でドライブスルーで買ったハンバーガーを満足そうに食べるプリシラと落ち込みながらハンバーガーを食べる遥。食べていると研究所に着いた。プリシラはポテトを片手に持ち中に入っていった。


 中に入ると折笠が待っていた。


「おかえり。電話で聞いたわ。災難だったわね」


「…すいません」


「謝らなくていいわ。私の案だったしあなただけに任せた私たちにも責任はあるわ。私も一緒に謝るから」


「ありがとうございます………」


「………私は悪くない。モグモグ」


 ポテトを食べながら無実を主張するプリシラに二人は呆れるがいつも通りのプリシラになっているため少し安心した。プリシラが暴れると誰も止められないのだ。今止められるのは遥のおっぱいとアリスバーガーだけである。


 折笠についていくと所長室についた。ノックして中に入ると所長の田原と坂本がいた。坂本は非常に機嫌が悪そうである。


「おかえり。災難だったね」


「ただいま戻りました。このような事態になってしまい申し訳ありません」


「申し訳ございません」


「いいよいいよ。許可した我々も悪いんだ。強いからって君しか付けなかったのは我々だからね。それに死人が出なくてよかったよ」


「………私は悪くない。モグモグ」


 田原と遥のやりとりにプリシラはまたしても悪くないと主張。


「聞いた限りだけど、まあ悪くないよね」


「まあ……俺もそう思う」


 田原と坂本の二人も悪くないと言うが内心はプリシラのご機嫌取りである。ここでご機嫌をとっておかなければその力の矛先が自分に向きかねないのだ。幸い今回は死人は出なかったが遥が来るのが遅ければプリシラは確実に二人を殺していただろう。


「とりあえず、一条。お前の処分なんだがな……」


「………はい」


「今の所何もなしだ。これから何かあるかもしれんがな」


「……いいんですか?」


「厄介ごとを押し付けてる所もあるからな。先方が怪我してるわけでも……治してたか……何か言われたわけじゃねぇしお前が何かしたわけでもねぇ。強いてあげるならちゃんと見ておかなかったことくらいだがな………まあアリスバーガーの会社…ALICE FOODSが何か言ってくるとわからんがな。そん時は何かあると思ってくれ」


「…ありがとうございます」


「とりあえずこれ以上俺の胃に負担をかけないでくれ。じゃあ……帰るわ………」


 坂本はゆっくりと立ち上がり重い足取りで退室していった。


「彼女に関しては多分何もないだろう。今朝の寄付のニュースもあるしスタンピードを終息させた英雄だからね。ニュースで監視カメラの映像も流れるだろうから世間は味方するでしょ」


「そうだといいんですがね………」


「向こうが悪いって言ってるんでしょ? それで終わりだよ。何かあっても国が味方するよ。彼女にスタンピードを収束させてくれたお礼を出来るようなものだからね」


 田原の言うことに納得はするものの遥は不安だった。自分がどうなるかもあるがプリシラがどうなるかも不安だった。短い間だが一緒に過ごして情が湧いてると言うのもあるが、プリシラがいいように使われるのを見過ごすのは嫌だった。誰かが誰かの道具になるのを見たくないと言う自己満足でしかないが遥は嫌だった。


 自分の正義感を貫きたいが社会を生き抜いていくためには自分を殺さないといけないとはわかっている。だがプリシラは自分のために暴れると言ってくれた。それが嬉しかった。


 だからこそプリシラには自分を殺して嫌な思いはして欲しくなかった。


 そうして田原が解散しようと言おうとした時に内線が鳴った。


「はい。もしもし……あー大丈夫だよ………うん…………ああそう。随分早いねぇ。とりあえず伝えておくよ」


「所長?」


 折笠が気になり声を掛ける。折笠はなんとなく予想がついたが早すぎるとも思っていた。内線を切り折笠たちに顔を向けた。


「予想ついてると思うけど、ALICE FOODSの社長が彼女に面会希望だってさ。まあ来るとは思ってたけど早かったね。あそこからも”お誘い”は来てたんじゃないかな」


「…いろいろ言われますよね。お店に迷惑かけたわけですし」


「………私は悪くない」


「お店に迷惑かけたことには変わりないんだからちゃんと謝っておきましょう」


「………むう」


 納得はいかないが店に迷惑をかけたことはわかっていたプリシラ。そして店のものを壊したことは覚えていた。なので遥の言うように謝らないといけないとはわかっていた。


「ところでいつを希望されてるんですか?」


「明日の午前中だって」


「…随分早いですね。あんな大企業の社長さんが予定変えて来るんですかね」


「予定とか全部キャンセルしたんじゃない? 彼女が相手だからね」


 プリシラのほうを見る田原。プリシラはすでに時の人だ。探索者として実力も名声も両方兼ね備えている。すでに多くの”お誘い”が来ているプリシラと直接話せる機会が欲しい企業など数えきれないだろう。


 そんな中、良い出来事ではないが直接話せる状況が出来たALICE FOODS。世界屈指の企業の社長が見逃すはずがない。


「まああそこの社長さんなら彼女に合ってると思うけどね。確実に契約の話とかあるだろうから内容によっては契約しても良いんじゃない?」


「…たしかにあの人なら合いそうですけどね。マスコミにも強いですし」


「女性ですからプリシラとも合いそうですよね」


 遥も折笠も田原の意見に同意だった。


 ALICE FOODSの社長は1年ほど前に世間を騒がせた人物として有名だった。


 CMに出てもらった男性芸能人とその妻をCMのお礼として食事に誘い店に行った際にとある出版社に取り上げられた。都合のいいような場面だけ写真として取り上げられいかにも不倫をしているような内容で報道されたのだ。


 これにALICE FOODSの社長が激怒。出版社を訴え徹底抗戦したのだ。世界屈指の企業を敵に回した出版社は当然のように敗訴。さらに巨額の賠償金を支払わされ倒産寸前まで追い込んだことで有名だ。ニュースで取り上げたマスコミにも飛び火し今では触れてはいけない存在になっている。


 そんな企業がプリシラのスポンサーにつけばマスコミ関係も静かになるだろうと予想できる。今現在も研究所の前にはマスコミが張っている。


「じゃあ明日会います。時間は向こうに合わせます。いいわねプリシラ」


「………」


「い・い・わ・ね?」


「………わかった」


「じゃあそう伝えておくよ~」


 遥に凄まれ渋々了承するプリシラと内線を取り連絡する田原。そこで解散となった。


 プリシラと遥が泊まっている部屋に戻ると内線で明日の9時に日本ALICE FOODSの社長が来ると連絡があった。早すぎる連絡に若干引き気味の遥はとりあえず了承の返事をしてプリシラに伝えた。


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