22 討論の支配権Ⅱ
凪咲はにこやかにうなずいてマイクを握りしめる。
凪咲「ありがとうございます。1点目の服装の規則について、風紀とのバランス云々というお話はそのとおりですが、現実問題として学園を縛るルールは服装だけではありません。それらとバッティングしないよう、既存の規則や制度を踏まえながら考える必要があるのです。」
凪咲「つまり、服装の規則だけ変えればいいということではなく、さまざま存在する学園規則に矛盾がないように行う必要があります。」
凪咲「2点目。九条さんがおっしゃっている予算執行における措置率というのは、次年度の予感配分を検討する上で重要な要素です。あとは既定経費化している予算についても、私は合理化できる余地があると思っています。これを財源に、各部活や委員会がやりたい新規の取組を後押しできるような予算管理をしたいですね。以上です。」
一瞬の静寂——そのあと、会場が大きくざわつく。
「……レベル違くない?」
「予算の話、ガチすぎる…」
「制服の規則だけ考えるのはダメって…2年生に言った…」
わずかに目を細める九条。一ノ瀬も言葉を失ったように沈黙。
数秒後——拍手が広がる。最初はまばらに、やがて大きく。
少し驚いた様子で場を整える池部。
池部「……ありがとうございます。それでは、これにて討論を終了とします。各候補者の皆さん、ありがとうございました。」
大きな拍手。壇上の3人が一礼。会場の空気は明らかに変わっている。
「正直、清水でよくない?」
「いやでも九条先輩も安定だし…」
「一ノ瀬先輩もいいけど……迷うな」
壇上を降りる凪咲のもとに、水原と岡田が駆け寄る。
桜「……やば」
陽子「うん、やばい」
2人、顔を見合わせて
桜「勝負、作ったね!」
陽子「あとは——投票。手応えはどうだった?」
凪咲「はーーーっ!お腹すいたからマック行きたい!」
一瞬の静寂——
桜「……は???」
思わず吹き出す陽子
陽子「いや今の流れでそれ!?」
周りの生徒もクスクス笑い始める
「この子やばいって…」
「でもなんか好きだわ」
桜「さっきまで学園運営の話してた人だよね!?」
桜「まあでも——行くか、マクドナルド」
陽子「頭使ったしね。糖分と塩分補給は大事。」
3人、講堂を出て夕方の校門へ。少しオレンジ色の空。
桜「てかさ、さっきの討論——普通に伝説になってると思う。」
陽子「うん。1年があそこまでやったって、絶対広まる。」
陽子「あとは結果だけ。」
横目で凪咲を見る陽子。凪咲はハンバーガーのことしか考えていない目。




