17 運命の壇上Ⅲ
九条の質問中、頷きながら聞く凪咲。マイクを取ってすぐに答える。
凪咲「まず1点目についてお話します。各部の部長級については、その能力や資質から、職務を務めるに足りる能力がある者を会長が選定します。幸いこの学園には、勉強だけでなく情報、芸術、スポーツなどの分野に優れた功績のある生徒がいらっしゃいます。」
凪咲「彼らの下で仕事をする生徒においては、希望をできるだけ考慮しながら人事異動を行い、各位の適正について自身で理解を深めてもらいます。後進の育成については、人事・運用担当の副会長を配置し、しっかりとサポートをします。」
凪咲「2点目について。少なくても監察局は私が会長になった時にしか新設されない機関です。その上でお聞きしますが、私が監察局長を選任する際、手心を加えそうな人物を選ぶとお思いですか?」
逆質問に眉をしかめる九条。さらに凪咲は続ける。
凪咲「例えば、監察局長の選定を生徒による選挙とした場合、特定の組織票による影響が想定されます。また、教師による指名とした場合、教師の意向が濃く反映され、生徒自治を理念を害する可能性があります。さらに、現学園会執行部による指名とした場合、私情による監察権限の濫用可能性があります。」
ーー大講堂で聞いている教師、現学園会執行部たち。その言葉に納得しつつも良い気はしないよう。
凪咲「そもそも、私を選ぶことで監察が機能しないと思うなら、私に会長選挙での票は入りませんのでご安心ください。以上です。」
一瞬、会場の空気が完全に止まるが、次の瞬間からざわめきが一気に広がる
「うわ…」
「これって、、論破?」
「強すぎ…」
ーー九条、凪咲を無言で数秒見つめてゆっくりとマイクを下ろす。
九条「……よく考えられている」
会場の空気が変わる。九条の感情は対抗から警戒へ。一ノ瀬が静かにマイクを取る。
一ノ瀬「……じゃあ、次は私からいいかしら」
一ノ瀬「清水さんの案は、とても合理的で魅力的だと思う。でもね、制度が正しいことと生徒がついてくることは別よ。」
高く聞き心地のよい声たが、強い感情が宿っている。
一ノ瀬「どれも合理的だけど、希望と違う配置になったとき、責任が重くなったとき、評価されている実感が持てなかったとき。そのとき、人は離れるわ。」
会場の一部が静かに頷く。
一ノ瀬「清水さんの組織は——人が離れない仕組みになってる?」
凪咲はにこにこしていた表情からポーカーフェイスに。
凪咲「ありがとうございます。その質問にお答えする前に一つだけお聞かせください。今のご質問は、現学園会の体制には当てはまらないもので、私が提唱する体制にのみ生じ得るものでしょうか?」
凪咲「私としては、それぞれが役割を持って動く組織の中であれば、普遍的に当てはまる事象であると思うのですが、いかがですか?」
ーー会場が静まり返る。桜と陽子も感心して見る
桜「……確かに。これは少なくても今の学園会でも起こりうることか。」
陽子「相手の議論の前提に乗らないのはさすがだよ。」
一ノ瀬、わずかに目を細める。
一ノ瀬
「……ええ、その通りね人が離れるリスクは、どんな組織にもある。でも——あなたの組織は、その❜リスクを高める方向❜に働く可能性がある。」
会場がざわつく
一ノ瀬「部門制、役割の明確化、責任の強化。どれも合理的だけど、その分重さも増す。今の学園会は、良くも悪くも緩さがある。だから続けられる人も多い」
まっすぐ凪咲を見つめる一ノ瀬。
一ノ瀬「あなたの組織は、優秀な人には向いている。でもーーそうじゃない人はどうするの?全員が高い意識と能力を持って動ける前提じゃないわよね」




