第二十七話 俺とセシリアとカリナの3人で練習することになりました
セシリアの劇的なKO勝利から数日。
……はっきり言って、俺の仕事は全然はかどってない。
というのも、あの打ち上げの夜から、なーんか気持ちがフワフワしてるというか、抜け殻というか。スコップで土を掘っても、実をもいでも、水をまいても……なんだろう、心ここにあらずというか。
セシリアが来月にはいなくなるという事実が、俺のメンタルにデカすぎるダメージを与えていた。
俺のトレーナー人生、始まったばかりなのに、もうクライマックスかよ! っていうツッコミを、朝昼晩と自分で自分に入れていた。
***
そんな気力を失った状態で迎えた日曜日。
例の“秘密の丘”に行くと、すでにセシリアの姿があった。彼女はいつも通りの笑顔で手を振ってくる……のだが──
……ん?
セシリアの隣に、もうひとり……。
カリナ、だ。
「コウタ先生……」
セシリアが、少しだけ申し訳なさそうな顔で俺に話しかけてきた。
「今日からカリナちゃんも一緒に拳闘を教えてもらえないかな……?」
「それはいいけど……。俺はセシリアだけの先生じゃなかったのかい?」
わざと冗談っぽく言ってみると、セシリアはぷくっと頬を膨らませて口をとがらせた。
「カリナちゃんはいいの!」
かわいすぎるだろその反応。
あの打ち上げで、他の拳闘団の選手を追い払っていたセシリアの姿を思い出す。どうやらカリナは、セシリアの“特別枠”らしい。
「カリナちゃんはね、本当はすごく強いんだよ! 私なんか練習で全然勝てないんだから!」
「へぇ、それはすごいな」
わざとちょっと大げさに驚いてみせて、隣に立つカリナに目を向ける。
カリナは、長い黒髪を耳の後ろで一つにまとめた、いかにも清楚系の美少女だ。目元は涼しげで、何かをじっと見つめるような静かな光を宿している。
俺やセシリアと同じ奴隷の服——黄ばんだ麻布を適当に縫い合わせただけの粗末なもの——を身につけているにも関わらず、その存在感はどこか洗練されていた。
そして……おいおい、ちょっと待て。年齢は十五歳なのに、胸元の主張がなかなかどうして……。
セシリアが王道アイドルなら、カリナは週刊誌の表紙を飾るグラビアアイドル。清楚系なのにどこか艶っぽくて、動くたびに目のやり場に困る。
だがそんなカリナの視線は、まるでナイフのように俺を刺してくる。あきらかに敵意を感じる。うーん、これは“セシリアをたぶらかした男”と思ってる目だな。
まぁ、誤解されても仕方ないけどね!
こうして、俺の拳闘教室は、今日からセシリア&カリナのトリオ練習体制へと突入することになったのだった。




