第十九話 ビアンカ拳闘団の団長は、美人でグラマラスなアラフォーでした
セシリアが満面の笑みで俺のもとに駆け寄ってきたのとは対照的に、さっきまで一緒にマスボクシングをしていた女の子は、どこか怪訝そうな顔を浮かべていた。
いや、よく見るとそれは彼女だけじゃなかった。周囲でアップしていたビアンカ拳闘団の選手たち、みんななんとなく微妙な表情だ。 苦笑いっていうか、呆れ顔っていうか……。
――あぁ、なるほどね?
たぶんこう思われてる。(ああ……あいつがセシリアに変なこと教えてるって噂の男か)って。
すみませんねぇ! でもセシリアが俺に教えて欲しいって言ってきたんだからね!
とか思ってたそのとき。
「ふーん、あんたがコウタかい?」
いきなり後ろから声をかけられた。
びくっとして振り返ると、そこには大人の色気がとんでもない女性が立っていた。
金色の髪が、背中の真ん中あたりまでさらりと流れ落ちている。瞳は深い琥珀色で、どこか人を見透かすような鋭さがある。それでいて、口元にはにっこりとした笑み。
でも一番目がいったのは……ごめんなさい。胸です。いや、あれはもう武器だ。着物風の衣装の胸元がざっくり開いてて、そこに現れていたのは、まさにスイカがふたつ。重力に逆らって、どうやってその形を保っているのか科学的に知りたいレベルで主張していた。
二度見どころか、三度見した。いや、許されるなら、四度見でも五度見でもしたいくらいだった。
「あの……あなたは……?」
視線を慌てて相手の顔に戻しながら、俺は訊いた。
「あたしはビアンカ。ここの団長さ」
ビアンカだった。セシリアが所属している、このビアンカ拳闘団のトップ。
年齢は……アラフォー? だけど、まったく老けて見えない。むしろ、若い子たちにはない余裕と、色気がある。まさに美魔女。
「失礼しました。俺がコウタです。ひょんなことからセシリアと知り合いになって、時間があるときにアドバイスをしています」
「あぁ、聞いてる聞いてる。セシリアがあんたのこと、よく話すからね。いろいろ詳しいんだって?」
「いやー、そんな大したもんじゃないですよ。ただの農奴ですし……」
「はっはっは。謙遜するところも、まさにセシリアの言ってたとおりの男だね」
ビアンカは腕を組んで豪快に笑った。
……その拍子に、スイカが揺れた。こっちは目のやり場に困るんだから、ほんと勘弁してほしい。
でも、拳闘団の団長らしい、肝の据わった人だった。たぶん昔は相当強かったんだろうな。
試合前に長々と話すのも悪いと思って、簡単なあいさつと世間話をした後、俺は控え室を後にした。
試合会場に戻る。さっきよりさらに熱気を帯びている。試合はまだ始まっていないのに、観客たちのボルテージはすでに最高潮。
さあ、いよいよセシリアたちの試合が始まる。




