第十七話 マルタちゃんから、おやつと将来の就職先をいただけました
市場へ向かう俺とマルタちゃん。
「はいっ! わたしのおやつ、半分あげる!」
マルタちゃんが歩きながら、肩掛けカバンをゴソゴソと探り出し、そこから取り出したのは……ちょっと焦げ目のついた焼き菓子。表面は砂糖がきらきらしていて、手作り感たっぷりのそれを、彼女は両手でぱかっと割って、半分を俺に差し出してきた。
「ありがとう、マルタちゃん」
俺は両手でそれを受け取り、ありがたく口に入れる。……うん、ちょっと粉っぽいけど、優しい甘さだ。クッキーとパンの中間みたいな食感で、たぶんこれ、マルタちゃんの手作りなんだろうな。
「コウタだからあげるんだよっ! ほかのみんなにはあげてないんだからねっ!」
そう言って、ふんすと胸を張るマルタちゃん。くりくりの大きな瞳がキラキラさせながら、「お礼を言え!」という圧力を放っている。
「ありがとうマルタちゃん。 おいしかったよ」
幸か不幸か、俺はマルタに気に入られている。
そしておそらくだが、セシリアにも気に入られている。……もしかして俺、異世界の少女たちにモテる謎フェロモンでも出ているのだろうか?
だとしたら、犯罪になりそうな少女ではなく、同い年か年上のお姉さんあたりに好かれたいんだけどな……。
「コウタはずーっとフリオ農園にいていいからね! わたしが大人になっても、ずっと雇ってあげるから!」
「おお……そいつはありがたいな、マルタちゃん」
未来の就職先、ゲットだぜ。
職場はブラックだけど。
そんな感じで、手を繋いでのんびりと歩き、市場へとやって来た俺たち。と、ここでふと思った。
「……そういえば、何を買いに来たんだっけ?」
マルタは満面の笑みで振り向き、両手を広げてこう言った。
「いーも! また焼き芋つくるの! 石焼き芋!!」
おぉぉ。また焼き芋か。好きだねまったく。
実は、少し前に俺が「石焼き芋」の作り方をみんなに教えたんだ。
なんと、この世界には「加熱した石で食材をじんわり焼く」という調理法がなかったらしく、あの時はフリオ農場がざわついた。食べた瞬間、老若男女が涙を流して「これが……これが芋だというのか……!」とか言い出すレベルで感動していた。
マルタも例外ではなく、あの時以来すっかり焼き芋の虜になっていたのだ。
「コウタって、私たちの知らないことなんでも知ってるもんね! また今度いろいろ教えてね!」
「なんでもってわけじゃないけど……まぁ、また今度な」
とりあえず曖昧に返事をしながら、焼き芋用の黄金色の芋が積まれている露店へと向かう俺。
隣ではマルタが鼻歌まじりにスキップしている。
ちなみに、彼女にとって“また今度”は“今すぐ”と同義なので、たぶん数日後にはまた何かをせがまれる予感がする。
正直、俺の知識なんて使い切るのも時間の問題だろうな。
そう思いながら、俺は彼女の小さな手を引いて、芋山の前に立ったのだった。




