第十四話 ペペに女子拳闘の話を聞いていたら、今度の試合を一緒に見に行くことになりました
「ふふふ、いいですねえ、わかります。わかりますよぉ~」
ペペは含み笑いを浮かべながらにうなずいていた。そしてスッと姿勢を正した。
なんかヤバいスイッチ入ったか?
「私もですね、初めて彼女たちを見たときは驚いたんです。えぇ、まさかここまでクオリティの高い美少女軍団が存在していたとは……! いや、普通の拳闘団にも一人か二人はいますよ? でもですね? ビアンカ拳闘団は違う! 全員が可愛い! そして、全員が強い!」
ペペが早口で熱く語り始めた。
「特にパメラちゃん! 最高です! あの子はですね、もう拳闘というより舞踏ですよ! 試合場の中を軽やかに駆け回り、相手に一切触れさせず、華麗なフットワークで間合いに入り鮮やかな連打で敵を倒す…… まさに芸術!美しい! そして、なによりも……試合中に上下に大きく揺れる、ふたつの柔らかそうな……ぐふふ。いやぁ、パメラちゃんは素晴らしいですね。他にも、カリナちゃんとかリズちゃんとか、あぁ、エミリーちゃんもいいんですよねぇ……それから」
「あ、ぺぺ、ちょっと……」
ぺぺが止まらなくなりそうだったので、一旦中断させた。
「おっと、失礼。つい語りすぎてしまいました……」
俺が苦笑いしながら、本題を聞く。
「でさ、ペペはセシリアって子は知ってる?」
俺の問いに、ペペは一瞬きょとんとした顔をしたあと、「ああ!」と手を叩いた。
「14歳以下の部に出ている子ですね。ああ、いましたいました。えっと……試合内容は、正直あまり良くなかったですねぇ」
うぐっ。やっぱりそうなのか。
「顔の可愛さで言えば、ビアンカ拳闘団の中でもかなり上位ですけど、試合内容が……うん、残念。スピードはあるけどパワーが足りない。試合序盤は攻撃をかわしながら頑張ってるんですけど、時間が経つにつれて動きが鈍って、結局じわじわ押されて、最後にはKOされちゃう。毎回同じ流れ。つまり、成長がない! 進歩がない! あれじゃ推せない!」
「詳しいな」
「そりゃあ、私はソンブラスの試合、毎回会場で全部見てますからね。それが趣味ですから」
いくら全試合観戦していても、自分の興味のない選手のことを、ここまで記憶できないだろう。
さすがペペ。ガチ勢か。
「コウタくんが知り合ったのは、セシリアちゃんなんですか?」
「ま、まぁ……そうだけど」
「うーん……あまりオススメはしませんねぇ」
「そ、そうか……」
「ええ。ビアンカ拳闘団贔屓の私ですら、セシリアちゃんの試合は一度も応援していませんから」
「応援?」
「あぁ、私は賭けることを、その子への応援だと思っているので。ちなみにパメラちゃんには、いくら応援したか分からないほどです」
うわあ。ガチの拗らせ系オタクだった。
グッズにかける金額が愛の大きさ、みたいなこと言い出すタイプのオタクだ。
「それで、どうしますか? 今度の試合、一緒に行きますか? まあ行かなくても良いとも思いますが、気に入った拳奴がいるなら、賭け券は買わずとも、せめて会場で声援を送るのがソンブラス男子の勤めだと思いますよ。それにコウタくんも日曜日は休みじゃないですか。それなら一度ぐらい拳闘を見に行っても良いんじゃないですか。まあ無理にとは言いませんけど……」
「……あ、ああ。頼むよ。一緒に連れていってくれ」
こうして俺は、ペペの案内で次の女子拳闘の試合に行くことになった。
セシリアのトレーナーになったからには、試合は見届けなきゃいけない。
ついでに……ペペがどれほどの拳闘オタクなのか、観察してみるのも面白そうだ。
なんだかんだで、楽しみがまたひとつ増えてしまった気がする。
ちなみに、女子拳闘のことを語るときのペペは、めっちゃ早口だった。




