第十二話 女子拳闘に詳しいペペに、いろいろ聞いてみました
──翌日。
仕事終わりの夕方、空はまだ明るかったけど、農場には一日の終わりを告げるような、ほんのりとした静けさが広がっていた。
そんな中、俺は暇そうにしているペペを見つけた。
「なぁペペ、ちょっといいかな?」
「おや? どうしました?」
「あー、その、ちょっと聞きたいことがあって……」
チラチラまわりを見ながら、俺はペペに話しかけた。
「なんか怪しい雰囲気ですね。 場所を変えましょうか……」
ペペはニヤリと笑いながら、場所の移動を提案してきた。
──で、向かったのは、農場の北端。大きな納屋の裏にある、ほとんど人目のない場所だ。
夕日が赤く畑を照らすなか、そこだけは影が濃くて、ちょっとした秘密の会話にはもってこいのロケーションだった。
「……で、なんの話なんです?」
ペペが、ある程度察しているくせに、あえて聞いてきた。
「女子拳闘のこと、教えてもらいたくて……」
「……ほう?」
一瞬、ぺぺの目が大げさに丸くなった。そして、次の瞬間には目を輝かせた。
「まさか……コウタくんから女子拳闘の話題を振られるとは思いませんでしたよ……!」
いや、そんな嬉しそうな顔されると、逆に聞きづらいんですけど。
「このソンブラスで女子拳闘の試合があるのは、月に一度だけ。毎月、第一日曜日に開催されます」
ペペは、まるで用意していたかのように、スラスラと語り出した。
「今日は第三月曜日ですから……次の試合は約2週間後ですね」
ふむふむ。なるほど。
つまりセシリアに教えられるのは、次の日曜日の1回だけってことか。……うわ、少なっ。
「試合は、街の中心部にある広場で行われます。大きくてカラフルなテントが目印です。コウタくんも見たことがあるんじゃないですか?」
「……ああ。あれ、拳闘の会場だったのか」
てっきり旅芸人かなんかのショーかと思ってた。いや、確かに近くに人だかりはできてたけど、あれが拳闘だったとはな。
「入場料は5000メソです。まあまあの額ですけど、毎回20試合前後あるんで、見応えはありますよ。面白いですし」
「ふーん。金かかるんだな」
「確かに入場料は安くはない金額です。 ですが、試合の勝敗を予想して賭けることもできるので、5000メソぐらいなら取り返すことも可能です」
「まじか」
賭けができる、ねぇ。そりゃ盛り上がるわけだ。
というか、ちょっと気になったことがある。
「もしかしてペペさん、その……けっこう勝ってたり……?」
俺は恐る恐る聞いた。
もしかしたら、ペペが農奴から自由市民になれた理由も、そこにあるんじゃないかって。
「いやいや、私はそんなでもないですよ」
ペペは遠い目で空を見上げた。
「まぁ、トータルでは勝ってると思いますが……」
うん、完全に負けてるヤツのセリフだなそれ。
しかし……俺の知ってる限り、ペペは真面目なおじさんだと思ってたけど……
まさか、こんなギャンブラーだったとは。
そう思いながら、俺はペペの語る“女子拳闘”を聞き続けた。




