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婚約の結び直し

 こ、これは……?」


「ごめん。どうやら僕は君なしじゃ生きていけないらしい。――モーリス、愛してる。僕の妻になってほしい」


 エンドピオのその言葉に、モーリスはどうしていいのかわからなくなった。

 それは最大の愛の表明だった。愛としか言いようのない、この温かく優しい感覚。


 しかしモーリスは彼を裏切った。

 自分の幸せのためにと彼の婚約を破棄し、拒絶したのだ。なのに彼は。


「わ、わたくしはあなたを愛せないのに……それ、でも?」


「君のことは絶対に幸せにしてみせる。セミス公爵令嬢と君を結ばせることはできなかった。だから代わりに僕が」


 小さく白いモーリスの手が、エンドピオのがっしりした掌に包まれる。

 だからと言って胸が高鳴ったりはしない。けれどもその温もりが心地良いのは確かなことだ。


「いいのですか……? ですが、わたくしは」


「君といられなくては嫌だ。君を他の者になんて渡したくない。君は、僕だけのものだ」


 また、キス。今度は唇と唇が触れ合って艶めかしい音を立てた。

 それを受けてモーリスはゆっくりと体を震わせる。彼から向けられる愛に戸惑い、そしてその戸惑いが去った後、彼女は静かに頷いていた。


「……わかりました。わたくしも、あなたと生きたい、です」


 恋人としては見れなくても、彼はモーリスのたった一人の心を許せる友人――いや、家族なのだ。

 彼の真剣さを前にしてその手を離そうとはもう思えなかった。


 モーリスは修道女になることをやめ、彼と生きることを選んだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 モーリス・トレディン侯爵令嬢とエンドピオ第三王子の婚約は、すぐに結び直されることとなった。

 異例とも言えるこの事態に、周囲――特にトレディン侯爵が仰天したが、しかしモーリスはにっこりと微笑む。


「わたくし、目が覚めたんです。愛する人といるのも幸せかも知れませんが、わたくしを愛してくださる方と共にいるということも、また別の幸せなのだと」


 婚約の再開に喜ぶ者は多く、城で大宴会が開かれることに。

 そこにはバート王子とセミス公爵令嬢もそこにいて、モーリスたちを祝ってくれた。


「セミスから手を引いたのは偉いと褒めてやろう。これからは二度と弟から離れないように」

「モーリスさんがお幸せそうで何よりですわ。私、応援しております」


 モーリスはセミス嬢を見て、そっと頬を赤くする。

 しかしもう告白などという馬鹿な真似はしない。彼女は自分の理想として崇めておくつもりなのだ。

 いつか彼女のように、美しく優しくそして婚約者を愛せる女性になりたい。それが今のモーリスの夢である。


 エンドピオとの関係はその時まで保留。

 あれ以来口づけを交わしたりはしていないが、モーリスにとっては彼と一緒に過ごすだけでいい。それ以上は何もいらないと思っている。


「でも僕は、欲張りだからモーリスからも慕ってほしいんだがな」


「今でも、家族のようにお慕いいたしておりますよ。……あなたのそのお気持ちに応えられる日が来るまではわたくしの傍でいてくださいね」


 二人の関係がこの先どうなるのかはわからない。

 でも一つだけ言えるのは、モーリス侯爵令嬢が幸せであるということだ。




〜完〜

 ご読了ありがとうございました。

 GL好きの方、こんなエンドになってしまい申し訳ありません。どうかお許しを……。


 面白い!など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

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[一言] ショー 百合tag->百合要素ある (︶︿︶)
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