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45 ボス?

 フィーレさんが言った通り、そこからは早かった。俺一人でそこそこ押せていた所に、フィーレさんの攻撃が先ほどの五倍になったのだ。一倍足りないのは、フィーレさんが魔力ジュースの飲み過ぎでお腹タプタプになってしまい、魔力補給のペースが少々落ちたためである。こんないい物があるなら最初から出せと言われたが、それなら最初に言って欲しい。関西の言葉で言う所の〝知らんがな〟が率直な気持ちである。


 そろそろ終盤が見えて来たので、それに備えよう。

「さてフィーレさん。以前にもスタンピード討伐に関わったような話をしてましたが、その知識を見込んで質問です」

「どうしたのかしら急に」

「この規模のスタンピードだと、下級種だけでなく中級種やボスが混ざっていると聞いてます」

「そうね、この規模だとオークやオーガ、更にその上のボスがいるわね」

「下級種をだいぶやっつけたにも関わらず、それらが殆ど見当たりません」

「今はいないわね」

「まだ洞窟の中にいると思われますが、どうやって炙り出すのがいいでしょうか」

「もう少し待ってれば普通に出て来ると思うわよ。殲滅速度が速いから、なかなか出て来ないように見えるだけで」

「ならいいんですが」

「それに中級種ならもう出て来てるのも結構いるわよ」

「え? 残ってる群れにはオーガ一匹とオーク少々しか見当たらないような」

「まわりを良く見るといいわ。槍が何本転がってるかしら?」

 スタンピードで出現するのは全て魔物だ。獣と違い魔物は死体が残らないが、魔石やドロップと呼ばれる置き土産を残していく。そして今回出現している魔物のうち、槍をドロップするのはオークだけだ。しかも棍や素手のオークもいるし、槍持ちのオークだってドロップが武器だとは限らないのだが−−

「二百本弱あるかな?」

「ええ、千匹近く倒してることになるわね」

「いつの間に?」

「さっきの竜巻だけで豚の丸焼きが百匹以上焼き上がってたと思うけど?」

 うわ。とりあえず倒すことに集中してて、大物が混ざっているかまでは見ていなかった。


「あー、はい。では次の質問です。事前情報ではこのスタンピードは二万匹規模と聞いていたのですが、ここまでの感じでその予測は当たっていましたか?」

「そうね、かなり正確な予測だったと思うわよ。気持ち多いかもとは感じるけど誤差の範囲ね」

「この規模ならオーク約千匹にオーガ約五十匹が混ざっているという情報を得ていましたが、それらのうち既に倒したのは何匹ほどと見ていますか?」

「オークはほぼ全滅してるわ。オーガも四十匹以上倒していると思うから、あと数匹ね」

 言っているうちにまたオーガが一匹倒れた。

「ボスはまだ洞窟の中ですか? 種類は何かわかりますか?」

「まだボスらしき種類は見てないから出現前だと思うけど、何が出て来るかまでは分からないわ。傾向からするとオークマジシャンとかハイオーガとかかなとは思うけど」

「ありがとうございます。では引き続き、ボス用の魔力は残しておいて下さい」


 更に掃討が続き、いよいよ残り百数十匹になったところで。

「あ、あれボスじゃない?」

「え? おお、あれですか」

 そこにいたのはオーガより大きな鬼風の魔物。肌は青く額に角が一本。手には巨大な棘付き棍棒を持っている。それだけなら大型の青鬼といった風体なのだが、特徴的なのは顔の中央で存在感を放つモノアイだ。

「俺の国でサイクロプスと呼んでいる物に似てますね」

「正解。ここでもあれはサイクロプスよ。……でも何かおかしいわね」

「そうですね。何もしてないのにフラフラみたいです」

 サイクロプスには特に外傷等は見られないし、登場したばかりだからまだ攻撃を加えていない。にも関わらず明らかに様子が変だ。まっすぐ歩けてもいない。肩を大きく上下させ、かなり苦しそうにしている。

「あー、私たちが火を使い過ぎて、洞窟の中が酸欠になったのかもね」

「そんなまさか……いや、あり得るかも。なら今がチャンス、もっと火を!」

 最初は目に石や氷でもぶつけようかと思っていたが、そういうことなら作戦変更だ。顔の周囲を覆うように火で囲み、ゼエゼエしている口の中に火種を放り込んでいく。

 サイクロプスは声も出せないまま、その巨体を俯せにして地面に沈み、そして消滅した。

「えっと、倒した?」

「ええ、倒したわね」

「あれボスだったんですよね?」

「どう見てもボスね」

「呆気なさすぎるような……」

 洞窟からの魔物出現は完全に止まった。残っているのは僅かに雑魚が数十匹だけだ。恐らく全てリリースしても町の脅威にはならないだろうが、せっかくなのでもう少しやっつけておく。


「あ〜疲れたぁ。もう魔力ジュース飲み過ぎ、これ以上無理」

「お疲れ様でした。お陰様で町が助かりました」

「これならエージ君一人でもやれたんじゃない? 作った魔力ジュース、私にばっかり飲ませて自分は殆ど飲んでないみたいだし」

「一人は無理ですって。二人でももっと消耗する覚悟だったんですが、このハリボテ杖が思った以上に効いたみたいで」

「その杖、いろいろ化け物ね。さてここからは収穫の時間よ、ハイエナ達が来る前に魔石を片っ端から拾わなきゃ」

 俺は拾い物より作った物の片付けがメインになりそうだ。調子に乗って作った有刺鉄線とか、どうやって片付けようか。


ボスが出るからといってボスと戦うとは限らない(ひどい)

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