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39 魔族の生き様

 よっぽど話し相手に飢えていたらしく、なぜかフィーレさんもラミスクまで一緒に行くと言い出した。魔族にとってスタンピードは、魔石大量獲得チャンスのボーナスゲームなんだとか。

「同行するのは構いませんけど、ちゃんと角は隠しといてくださいよ?」

「大丈夫よー、どうせ町の中には入らないし」

 こういうのが目撃されて〝魔族が魔物を従えてスタンピードを起こしている〟という噂に変化するんだろうなと思ったが、指摘したところで改めそうにないので黙っておいた。

「ところでフィーレさんは最近ここに来たんですよね。どこから来て何しに行くつもりだったんですか?」

「んー、どこからって言われると、上から?」

「上?」

「空を飛んで来たから。ほら、鳥肉あげたじゃない」

「貰いましたね。まさか空中で捕獲したとは思いませんでしたけど」

 なお、鳥肉と言われたし味もそうだったけど、鶏とは思えない巨大さだった。どんな鳥の肉なのかは聞かない方がいい予感がしたので聞いていない。

「方角の意味なら、前にいたのは西の無人島よ。目的地は別にないわ。面白そうな所とか、強い魔力を感じた所とかを渡り歩いて過ごしてるだけ」

「他の魔族もそんな感じなんですか?」

「南の大陸には魔族の国があるから、そこに定住している人もいるわ。でも魔族って協調性がないから、三人より多く集まって生活するのは難しいのよ。だから大抵は放浪してて、必要なら魔力を頼りに他の魔族を探し歩く感じね」

「なんか家族と連絡とるのも大変そうですけど……」

「うーん、連絡とりたいとも思わないかな。卵を適当に産み落としておくだけだから、そもそも親が誰でどんな顔なのかも知らないし。魔力のパターンは遺伝するから、会えば親戚かなってのはわかるんだけど」

「卵生なんですか!? というか、そんなんでよく国が出来ましたね」

「もともと魔族が多くいた地域に他の種族が寄りつかなくなっただけの話で、正確には国じゃないわね。国王も決まってないから、近くの国は交渉の窓口がなくて困ってるみたい」

「え、魔王いないんですか? もっとこう、『我こそは世界を統べし者』ってのが国を仕切ってるのかと思ってました」

「仕切りたがってるのはたくさんいるわよー。でもそこは魔族だから、誰も他人の言うことなんか聞かないわ」

「納得」

「そんな感じで国どころか家族もまともに構成しないから、することしちゃっても責任とれとか認知しろとか一切ないわよ」

「納得いかない」


 話している間は気が紛れるので、何となく道中順調な気分で歩いていたけれど。

「んー?」

「どうしました?」

「囲まれちゃったわねー。エビルモンキーが六匹」

「小ボスじゃないですか……」

 それほど強くはないが、群れるのと動きがトリッキーなのとで防御し辛い相手だ。

「平気平気、私にかかれば一瞬で消し炭よー」

「出来れば山火事はやめていただきたいのですが」

「大丈夫よ、その時はエージが鎮火してくれるでしょ」

「そんな ひどい……。いや、毛皮がいい値段で売れるんで火は本当やめて」

「毛皮のない所を狙えばいいのね。ボディはやめとけ、顔にしな、っと」

 ジャスト三秒後、顔だけ抉れたように焼失したエビルモンキーが六体生産された。脳まで焼けており、ぴくりとも動かないが、後頭部には影響がない絶妙の火加減だ。

「凄過ぎませんか?」

「このくらいなら大抵の始祖が出来るわよ。叫び声をあげる余裕があったのが一匹残っちゃったから、ちょっと失敗ね。さて、売るんならさっさと毛皮を取っちゃいましょ」

 ……道中は順調ということで良さそうだ。


「こいつらも見えるらしいのよねー」

「え、何がですか?」

「魔力。魔物や獣も」

「マジですか!?」

「話を聞ける訳じゃないから確認は出来ないんだけどね。自分のことを強いと思ってるやつほど、強い魔力に寄って来る傾向があるのは確かよ。縄張り争いの本能なんじゃない?」

「それでかー……」

 ここ南の森に現れる強い敵、通称小ボス。他の冒険者は月に一度も遭わないのに、なぜか俺だけはその十倍以上という異常な頻度で戦っている。その原因がさっぱりわからず、ギルドの人まで一緒に首を捻っていたのだが、俺の魔力を感知して縄張りから追い出すために寄って来ているのだと考えれば、そんな気もしてくる。

 そういう体質なんじゃないかと冗談で言っていたのだけれど、それは冗談だから笑えるのであって、本当にそうなら洒落にならない。どうにかならないものか。

「その魔力を見るのってヒュームにも出来ますか?」

「見たいの? 才能がないと難しいと思うわよー」

「どちらかというと見られたら困るって方です。才能があれば見られるってことになると、いずれバレますよね」

「あーそっちね。心配いらないわ、魔族以外で聞いたことないから。親が片方魔族だったら素質はあるかもだけど、それなりの訓練も必要だし、ヒュームにはそんな訓練は伝わってないし」

「それならひとまず安心ですけど、研究所には変なのがいそうだしなあ……」

「その時はどうしようもないわねー。見えなくしようと頑張ってた子もいたけど」

「えっ!」

「でも失敗だったそうよ。魔力の出し入れを止めようとすると、呼吸を止めた時みたいになっちゃうんだって」

「それは無理……」


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