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38 偽造品っぽい本物

「もし何か能力があるんなら、神殿の測定器が壊れ……ああそう言えば壊れてたっけな」

 そうだ。言われてみれば壊れていた。神殿の人がそう言っていた。

 その破損と判定は無関係なのだが、それを知る者は栄二を含め誰もいない。

「なるほどねー。それであちこち変なんだー」

 フィーレさんは俺の判定書を見ている。最初は普通に文字を読んでいたが、そのうちなぜか指でなぞったり裏返したりし始めた。

「何してるんですか?」

「ねえ、これ、少し直せるかもしれない」

「は? 直せるって? それを書き換えたって適性は変わりませんよ?」

「そうじゃなくて。これってインクで書いてるんじゃなくって、羊皮紙に(まぶ)してある魔石の粉が測定器の魔力と反応して色が変わる仕組みなの。で、何か文字になっていない魔力が残っているみたいなのね。そこをうまく反応させてあげると、何か浮き出そうな感じがする」

「はあ。よくわかりませんが、これ以上悪くはならないと思うのでお任せします」

 白級より悪くするのはなかなか難しいからな。

「じゃ、ちょっとやってみるわね」

 フィーレさんは紙に掌を押し当てて、何やら集中し始めた。


「よし、完了。専門外だから全部は無理だけど、少しは変わったんじゃないかしら」


####

  魔法適性計測結果一覧

  種族/ ヒューム  性別/男  個体名/エージ・スノモリ

  火  白 級

  水  白+級

  氷  白_級

  土  白^級

  風  白 級

  雷  白 級

  光  白+級

  闇  白−級

  植物 白 級

  召喚 白 級


  その他特徴

  生活 金 級

  特殊 白・級

  〜元 白=級

  魔力 〇〇:::::

  ***** ・・・・・・・・

####


「確かに文字は増えたけど、読めない字も増えてるし……しかも白マイナス級って、白より下があるとは思わなかった。不覚」

「でもプラスの方が多いじゃない。というかこれ、プラスでもマイナスでもなくて、何か文字の一部みたいね。読める所までは復元できなかったけど、くすんでた色も少し光ってるし、前よりは正しくなってるはずよ」

「うーん、何か逆にパチモンっぽくなっただけのような気も」

「言いっこなし。ちゃんと許可とったわよね?」

「許可とられた。また神殿に行けば済む話だから、まあいいんだけど」

「でもまあ、かわいそうだからこれあげる」

 フィーレさんは何やらお(ふだ)のようなものをくれた。

「これは?」

「私の魔力パターンを込めた護符よ。私は始祖(オリジン)の中でも火の一族で、それを身に付けていれば火の魔法が使えるようになるわ。魔族用の道具だから普通のヒュームの魔力じゃ足りないんだけど、エージの魔力なら大丈夫かなーと思って」

「使えるかは試してみないと分かりませんが、ありがたくいただいておきます」

 実のところ俺はこれを使わなくても火魔法に匹敵する規模の炎を出せそうなのだが、不要どころか仮に機能を発揮しなかったとしてもなお大変有用なアイテムだ。魔族が作った護符なら、白級なのに魔法が使える言い訳として最適に違いない。


 翌朝。至って平和に夜が明けた。ケイだけは未だに部屋の隅でブルブル震えている。

「ケイちゃーん、いいかげん仲良くしてよー。魔族と黒猫ってベストカップルよ? 人を食うなんて根拠のないデマよ? 昨夜はむしろ私がエージに食べられちゃうかもー、と思ってたくらいなんだけど」

「いやいやいや何ですかそれ。さすがにちょっかい出して命があるとは思いませんから。大方そのデマも、何か怒らせてぶっ飛ばされた人が事実を歪曲して広めたんでしょうけど」

「訂正しようにも、ヒュームはみんな見るなり逃げてっちゃうから話も出来ないのよ。エージは久し振りの男の子だから、いろいろ交流を深めるのも−−」

「はいお水。フィーレさん、まだ酔ってますか?」


 昨夜の残りで手早く朝食を済ませた俺は、本来の目的に取りかかった。持ち出していた地図や鍋等を元の場所に戻し、消耗品は利子をつけて多めに置いていく。最後に納屋の槍や袋を返したところで、

「これをやったのもエージ?」

 フィーレさんが古井戸を指さしていた。

「残留魔力も見えるんですか? そうらしいです」

「あっちゃー、これはダメだわ。こんな大魔力、研究所から人がすっ飛んで来るレベルよ」

「はい、すっ飛んで来てました」

「手遅れだったのね。研究所とかってやつ、ちょっと大きな魔法を使うと様子を見に来ては慌てて逃げてくから目障りなのよねー。まあ私もそろそろ移動するつもりだったし、スタンピードに阻止されてここまで見に来られなくなるだろうし、派手にやっちゃってもいいかな。エージ君、昨日の護符を使って、あの雲に向かって火魔法を出してみてくれる?」


 結果、上空の雲に穴が開いた。何かのアニメで見た火の玉をイメージしたところ、その通りのものが出来たからね。

 そして俺が開けた穴の隣に、一回り小さな穴がもうひとつ開いている。それを見てフィーレさんが溜息をついていた。

「よくわからないけど、護符は返さないから」

「それなら実力行使で返してもらうしかないわねー」

「わー返します、返しますから」

「冗談よ。まさか私より大きな火を出した上に、魔力も切れずピンピンしてるとは思わなかったけど。これは本当に、今夜こそ襲われちゃうかも」

「襲いませんからね? だいたいフィーレさんに火炎は効かないじゃないですか、俺だけ黒焦げになって終わりですよ」

「変なことしないからー、ちょっと隣で休むだけー。せっかく何年かぶりの話し相手が見つかったのに寂しいのよー」

「魔族って、態度だけは人を食ってるかも」

 余談だが雲には三つ目の穴も開いた。俺が最初に開けたのと同じ大きさで、生活魔法を撃ち込んだ分だ。やはりこっちの方が使う魔力は少ないな。半分弱と聞いていたけど護符の変換効率があまり高くないらしく、火魔法の消費が大きかったようで、生活魔法だと三分の一くらいで済んだ。


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