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33 新事実発覚

 ちょっと待て。

〝なぜか魔族が俺の独り言を聞いて陰からそれを叶える〟というのはあまりに突拍子もなさすぎる話で、まず考えられない。

 だが、言葉を聞き入れて望みの魔法を出してくれる存在がいたような気がするぞ。

 厳密に言うと、言葉とそのイメージ、そして魔力の三つを受け取ると魔法にしてくれる存在。そう、精霊だ。実際どうなのかは知らないが、魔法はそうやって発動するものだと何度も聞いているから、この世界ではそれなりに信じていい話だろう。

 だとすると、それはつまり。

 あれって俺が出した魔法だったのか?


 そう考えれば、確かに説明はつく。そして、今まで疑問だったことの全てがしっくりくる。

 水が欲しいと言葉にし、どんな水がいいかをイメージした結果、水が出た。

 ただし水の量を漠然と「たくさん」とだけイメージしたので井戸が溢れた。

 塩が欲しいと言葉にし、塩の味を思い浮かべた結果、塩が出た。

 ただし必要量をイメージしていなかったので、料理一回では到底使い切らない量になった。そして「湿気てない」とイメージしたので比較的湿気に強い岩塩になった。

 怪我が治れと言葉にし、完治した状態をイメージした結果、怪我は治癒した。

 治っていく過程をイメージしていなかったので瞬時に治った。


 うん、何もおかしくないね。

 ただ一つの点を除いて。


 この推測が正しいなら、俺の魔力ってバカでかいんじゃね?

 それも「思ってたより」とかの範疇じゃなく、この世界でもトップレベルくらいの勢いで。


 それらの魔法を出したのが俺だったとするなら、過去に例のないほど強力な魔法が使えることになる。そんな馬鹿なと言いたいところだが、一概に否定できない。機序はともかく、可能か不可能かで言えば、他の魔法から逆算すると可能に思えるのだ。

 豹と戦った時に水をたっぷり千グタリは放出している。他の魔法も立て続けに使ったから、一回で千グタリ、一日なら三千グタリ出せるのは間違いない。それを考えると井戸の一発三千グタリは出せる可能性がある範囲だ。それどころか魔力切れの兆候がなかったから、後先を考えなければその更に三倍以上も可能だろう。

 しかもピエールさんが見抜いた通り、その時の俺は魔力回路を使っていなかった。六倍の武器を持っている今なら、それら諸々を加味すると六万グタリは行けそうだ。ピエールさんの言った、普通の生活魔法使いは一回せいぜい百グタリだという話を信じるなら、優に六百人分の出力になる。


 そんなはずないだろう。でも計算上は出来る。

 考えはループするばかりだ。

 困ったことに、最も知識が豊富であろうピエールさんに相談するのは不可能だ。彼は国家機関の一員であり、その中でも魔法を直接所管する組織に属しているので、俺の推測が万一本当だった場合、問答無用で国の監視下に置かれてしまうからだ。ピエールさんが化け物だの魔族並みだの、あれほど驚き(おのの)くほどの力なら、国家もまた恐れて隔離なり攻撃なりしてくるか、逆に取り込んで国のために使わされることになるか、どちらかの対処はして来るに違いない。それはどちらも嫌だ。

 相談出来ないなら実際に試して確認するという手もある。だが大規模な魔法はとても目立つ。森の中の廃屋ならあまり問題ないだろうが、今は町の中だ。目撃されたら同じ結果になってしまうので、それくらいなら最初から相談しておいた方が良かったというオチになりかねない。


 翌朝。いろいろ考えた結果、既に俺が使う魔法を何度も見ていて、それでいながら情報漏洩の心配がない、あいつに相談することにした。知識が特別多いとは思えないが、どれくらいの魔法なら常識的でどんな魔法が非常識かくらいはわかるだろう。

 連絡したり呼び出したりは出来ないが、朝に南門へ行けばどこからともなく現れるので、会うことは簡単だった。

「重大な相談事がある、話を聞いてくれ」

「どうしたのよ改まって。そもそも私にニホンゴを喋らせるんじゃなく、エージが猫語を喋るだなんて、どういう風の吹き回し?」

「人に聞かれたくないから、人間の言葉だと都合が悪い」

「凄いことを考えついたわね。そしてその言い方だと、どうして私が喋ってたのかには気付いたようね」

「ああ、やっぱりそうなのか……。相談というのはその件だ」

 俺はケイに対して、昨夜いろいろ考えていたことを話し始めた。


「−−というのが研究所員さんの見立てだ」

「へえ、魔族ねえ。確かにそう思ってもおかしくないわね」

「何だよその『私は違うって知ってるけどー』って言いたげな態度は」

「でもエージも信じてないんでしょ? エージがどう考えてるのか続きを言いなさい」


「−−てな訳でこの説だと、なぜ魔族が俺をこっそり助けるのか、全くわからない」

「そうね」

「魔族ではないとすれば誰かと考えた時、お願いしたことを魔法で実現してくれる存在がいたことに思い当たった。精霊だ」

「エージにしては珍しく、核心に迫ってるわね」

「珍しくって何だよ……。でも精霊は願うだけじゃ頼まれてくれなくて、三つの要素が必要だ。一つ目、言葉は独り言を発していたと思うからそれで足りたんだと思う。二つ目、イメージは不完全ながらしたから条件を満たしたかもしれない。ただ最後の三つ目、そんなバカでかい魔法にはバカでかい魔力が必要なはずなんだが、そんなのどこから出て来たんだという謎が残る」

「謎もなにも、それは精霊に頼んだ人、つまり術者の魔力でしょ?」

「そこが聞きたいことだ。俺の魔法をまともに目撃しているのはケイくらいしかいないから教えてくれ。これまでの話を総合すると、廃屋でのあれこれを精霊に頼んだのは俺で、つまりは俺が使った魔法の可能性がある。でも、だとすると俺の魔力は並外れている計算になるんだが?」


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