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28 新たな狩り場を求めて

前職の社長に捕まってて遅くなりました。クビにしたんならちゃんと解放しろや…

 俺は南の森での狩りを続けていた。

 が、それは必ずしも順調な日ばかりではなかった。いや、この表現では足りないだろう。日数で言えば半分近くは順調でない日だ。

 目的の獲物、つまり猪は見つかる。人が多くて獲物が足りない北の森に比べれば、そこに関しては順調だ。必要な稼ぎを得られているのだから。だが、それ以外の問題があるのだ。


「ドジーさーん」

「おう、どうしたエージ」

「いい狩り場が知りたい。北の森と南の森以外で」

「無茶振りかよ。狩り場の紹介はギルドの仕事なんだが、まあいいだろう。南の森じゃダメな理由にもよるが、移動したい理由は何だ」

「いつも通り兎や猪を狩ってる分にはいいんだが、やたらめったら小ボスに追い回されるんだよ。命がいくらあっても足りない」

 そう、南の森は兎や猪だけでなく、小ボスと呼ばれる飛び抜けて強い敵がうろついている。名前こそ小だが中級冒険者でさえ命を落としかねない強さで、駆け出し狩人の俺がパーティも組まず一人でいたら簡単に狩られる立場だ。普通は一ヶ月に一度も会わないらしいのだが、なぜか俺は隔日くらいのペースでそいつらに遭遇している。これまでは辛うじて倒してきたものの、次も勝てるだなんて保証は全くない。むしろ今まで生き延びているのが不思議なくらいだ。


 なので本当に命に関わる前に、もっと安全な場所がないか聞いてみたのだが。

「そう言われてもな。一番安全なのは北の森で、でもそこじゃ稼げないって話だろ? それ以外だと……各地の特徴だけ教えてやるから、どこがいいかは自分で判断してくれ。もうエージもそこまで初心者じゃないだろう」

「承知した」


「まずは北西の廃村。最近ゴブリンが住み着いた。魔物だがそれほど強くないから、エージなら大丈夫だろう。ただ夜はダメだ、ゾンビやスケルトン、吸血蝙蝠なんかが出る」

「なるほど。昼だけってことだな」

「それとエージはソロだから大丈夫だが、パーティに女がいる場合は絶対に連れて行っちゃいけない。万一ゴブリンに捕まったら死ぬより酷い目に遭わされる」

 ゴブリンの生態はこの世界でも同じようだ。


「次に南西、ちょっとした湖と湿地がある。水牛や犀、水の中には肉食魚や鰐がいるから、獲物には困らないだろう。でも時々デカいのが水を飲みに来るから、エージの希望には合わないか。魚も獲れるが、この町は西の港町から海魚が運ばれて来るから、わざわざ川魚を獲ろうという奴はあまりいない」

「うーん、わざわざ場所を変えるには弱いな」


「じゃあ続きだな。北東には岩山がある。獲物としては山羊や野生馬、敵としてはオオワシあたりの猛禽類と殺人アライグマってところだ。強敵ってほどでもないが、うまみの割に難易度が高いから、何か目的がない限りは誰も寄りつかない」

「理解した。行くなら何かギルドの依頼を受けてからってことだな」


「稼ぎたいなら西の草原が選択肢になる。港町への街道が通っているが、キック鹿や突進象、あと盗賊がいる。街道の安全確保は重要だし、領主様はそっちに畑を広げたいらしくて、それらを倒すと通常の買い取りに加えて報奨金とボーナスポイントが出る」

「でも強そうだな。特に盗賊は遠慮したい」

「ああ、手強いのもあるが、盗賊とはいえ人間を攻撃するのは嫌なもんだ。俺は仕事だからそうも言ってられないが、人には勧めない」

「そうか、ドジーさんは門番だから悪い奴と戦う必要があるのか」


「あまり戦いたくないなら東の遺跡だな。珍しい薬草が生えているからそれを採取するもよし、遺跡を発掘して出土品を持ち帰るもよし。ただ近くの洞窟には魔物がいるという噂だから、そこにはあまり近づかないことだけ注意だ」

「盗掘していいのか……」

「遺跡に落ちてたり埋まってたりするものは、今となっては誰のものでもないから、持ち去るのを止める権利を持つ人間なんて誰もいない。それにどうせ放っといたところで盗賊が掘っちまうんだから、それくらいなら先に町民が持ち帰った方がよっぽどいい」

 この世界には文化財保護の概念もなければ、それを可能にする余裕もないのだろう。その前提で考えれば決しておかしな話ではない。


「南東は知っての通り、畑と王都方面への街道で、危険はないが無断で取っていいものもない。近所の狩り場はこんなもんだ」

「わかった。確かに話だけでは決めかねるな。ためしに一日ずつ全部回ってみるか」

「そうきたか。まあ自分が納得するのが冒険者にとって一番大事だ」

「だから俺は冒険者じゃなく狩人なんだが」

「そういえばそうだったな。普通の狩人が持って来ないような獲物ばかりだから忘れてたよ」

「俺はいつも猪を狩るつもりで出掛けているんだが、なかなか予定通りにいかないんだ」

「また他の奴らが聞いたら卒倒するか激怒するかな発言をしやがる……。何にせよ、慣れない場所には慣れない敵が出る。気をつけてくれ」

「ああ、ありがとな」

 今までギルドは素材を売るだけで、特に依頼を受けていなかったが、それだと山は赤字になりそうだから、今後はそのあたりも考えていかないとな。今日は廃村あたりにしてみようか。


 そして全て回り終えた五日後。

「ドジーさーん……」

「おう、どうしたエージ。お疲れみたいだな」

「いい狩り場が知りたい。北の森と南の森と廃村と湖と岩山と草原と遺跡以外で」

「無茶振りにも程があるだろ! もう狩人やめて修理屋でもしてろよ!」


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