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22 獲物の処理

 時間はかかったが、なんとか日のあるうちに町まで戻って来られた。今回は締め出されずに済んだようだ。台車もどきは思ったより頑丈だったが、車輪がだいぶ削れてしまったので、やはり使い捨てだろう。

「あれ、ドジーさん。今日は早番だったんじゃ?」

「おうエージか。仕事は終わったんだが、ちょっと借りたもんを返しに……って、おわっ! また恐ろしいもんを捕ってきたなおい!」

「いや死ぬかと思った。何とか勝てたけど、これ売れますかね」

「待て待て待て。死ぬかと思ったって、ファイアレパードは中級ではあるが上級と言ってもおかしくない強さだぞ。こんな奴、普通はまぐれでも倒せないんだが!?」

「じゃあドジーさんは俺が上級の冒険者だとでも言うつもりですか? 知っての通り新米狩人ですよ?」

「新米かベテランかは関係ないな、一人で倒せたなら狩人の腕としては間違いなく上級だ。冒険者としても、普通は中級のフルメンバー、Cランク六人で狩るような獲物だぞ」

「そうなんですね。いや本当、死ななくて良かった」

「こいつを狙った訳じゃなかったのか。まあ無事で良かったな」

「まったく。南の森が不人気な理由、骨身に染みてわかったよ」

 だからと言って行くのをやめる訳にもいかないのだけど。


 もはや台車っぽい何かになったものは門の外に捨てて行くつもりだったが、そのままでいいとドジーさんが言ってくれたので、ギルドまで使うことにした。ただ、すれ違う人がみんなこちらを見る。馬車も通っているんだから台車風の木塊くらい構わないでほしいのだが。そしてそれはギルドの中でも同じだった。いや、より驚きの目になっているようにすら感じる。

 あ、受付の人が出て来た。エミリーさんだっけか。さすがにこの大きさは邪魔だったかな。

「すみません、そちらは買い取り希望でよろしいですか?」

「はい、そうしたいんですが」

「でしたら先に奥の解体室にお願いします。その、珍しい獲物で悪目立ちしておりますので」

「ああ、みんな見てるとは思いましたが……」

「搬入が終わりましたら、こちらの割り符でお待ちください」

 みんなが見ていたのは台車じゃなく獲物の方だったとは。ドジーさんによると強いモンスターらしいが、どれくらいの収入になるのかが気になる。強いやつが高いとは限らないからな。


「おい兄ちゃん。あれはお前が一人で狩ったのか?」

 うわー面倒くさいのが来ちゃったよ。そうだよな、登録の時に出くわさなくても、新米のうちは絡まれる対象だよな。

「狩ったというか、勝手に死んでくれた」

 正直に言うと厄介なことになりそうなので、作り話をすることにした。

「勝手に死んだだあ?」

「南の森で出会っちゃって逃げたら、追って来たあいつが勢い余って沢に転落してさ。そのまま溺れて動かなくなってたから、後から沢に下りて拾って来たんだ」

 あの豹は溺死で止めを刺しているし、体に水を浴びせている。これで矛盾はないはずだ。もしかしたら電撃で多少焦げているかもしれないが、それくらいは言い逃れ出来るだろう。

「なるほど自滅したのか。そいつはラッキーだったな」

「ラッキーというか、そもそも出会っちゃったのがアンラッキーだった。あれに出会ったのに死ななかったことは本当にラッキーだが、二度と出会いたくないな」

「はっはっは、そりゃ確かに。そういう時はあの猪を投げつけて、そっちを食ってる間に逃げるんだよ」

「あーーーなるほど! ありがとう、今度からそうする。いや、二度とあってほしくないが!」

「正直でいいや。お前みたいなのはしっかり生き延びられるぞ。偶然で狩れたのを実力と思って手柄にしちゃうと次で死ぬからな。頑張れよ新米!」

 納得してくれたようだ。聞き耳を立てていた他の人たちも同様らしく、ギルドの中は落ち着きを取り戻してくれた。


 今日の査定は三十分近く待たされた。獲物が獲物だったのと、夕方のラッシュ時だったからだろうか。

「お待たせしました。まずファイアレパードですが、肉が二百グタリ。珍しいのですがあまり好まれませんので金貨二枚です。次に皮ですが、通常金貨二十枚のところ傷が見当たらない貴重品ですので金貨三十枚で買い取らせて頂きます。それと通常は牙を買い取るのですが、今回は頭部が完全な状態ですので、剥製の材料として丸ごと買い取ります。こちらが金貨十枚。最後に心臓と肝臓がそれぞれ金貨二枚。ここから大型解体料の金貨一枚を差し引きます。あとは猪の肉が五十グタリで金貨一枚、皮が銀貨一枚、牙が一対で銀貨二枚。しめて金貨四十六枚と銀貨三枚になりますが、よろしいでしょうか?」

「買い取り対象外の内臓は戻してくれるか?」

「はい、それは大丈夫です。うちとしても捨てるだけですので。それと搬入に使われた車輪付きの板はどうされますか?」

「ああ、そのまま運び込んだんだっけか。同じく、俺としては捨てるだけだ」

「ご不要でしたら銀貨五枚で引き取らせてください」

「くれると言うなら貰うが、多分すぐ壊れるぞ。薪代には高過ぎないか?」

「修理の得意な者が欲しいと言っていたので大丈夫です。それでご提案なのですが、当ギルドの預金システムはご存知ですか?」

「いや、ご存知でない」

「ではご説明させていただきます。多額の金貨を持ち歩くのは重たいですし、何より不用心です。そこでギルドが責任をもってお預かりしておくシステムがございます。国内のみとなりますが他の町のギルドでも出し入れ出来ますので、長旅の際にも便利です」

「なるほど。では金貨四十枚を預金にしてくれ。残りは現金で」

「ありがとうございます。では口座を記録致しますので町民証を」

 一気に金持ちになった気がする。いや、四十万円見当は実際に金持ちなのだろう。ただ、ちょっといい武器や防具を買えば一瞬でなくなってしまう程度でもある。揃えたいものはいろいろあるが、どれから買っていくべきかは慎重に考えないと。


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