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13 市民ギルド

 そんな訳で、やって来ました市民ギルド。

 聞いていた通り素材を売る人はもちろん、その素材を買い付ける人、冒険者に依頼を出す人、それを受ける人、市場の場所取り申請やら土地建物の売買やらまで、様々な人が押し掛けている。あまりに雑多すぎて、むしろ市役所のロビーに近い感じがする。酒場が併設されているようなこともない。

 でもって酒場がなく、冒険者以外にも商業系の人が多数出入りしているので、雰囲気は至って平和である。危惧していたような冒険者ギルドの「子供が何してやがる」イベントも起こりそうにない。いや、起こらない方がいいのだけど。


 ところで、ギルドと同じ建物で酒場が営業している印象というか思い込みは、むしろどこから出て来たのだろうか。よく考えると不思議である。書類手続きを行ったり、これから戦闘に向かったりする人間相手に酒を出すというのは普通に考えて非合理的だろう。

 待ち合わせ場所ではあるので喫茶店くらいなら入っていても違和感はないが、敢えてトラブルが増える酒を提供する必要はないはずだ。とは言え冒険者が酒を好むのは容易に想像でき、多くの客に出せと言われれば商売的に出さざるを得ないだろうという事情はありそうだ。

 俺の記憶では地球の某ゲームで仲間を集める場所が酒場という名前だったから、それに由来しているのかも知れないな。


「お次の方どうぞー」

 ようやく俺の番が来たようだ。

「素材の売却と町民登録をお願いします」

「かしこまりました、受付のエミリーが承ります。町民登録は仮身分証をお預かりしますね。売却いただける素材はどちらでしょうか」

「この蛇なんですけど。あ、もう少し解凍した方がいいですかね」

「い、いえ、そのままで大丈夫です。では査定致しますので、こちらの割り符を持ってお待ちください。すいませーん、動物査定班一名お願いしまーす!」

 さすが手慣れているな。いろいろ手早くて助かる。何か顔が引き攣っていたのは気のせいかな。

 様々な貼り紙を見て情報収集しながら待つこと暫し。十五分ほど経った頃、再び呼ばれた。

「お待たせしました。まず素材ですが、ブルースネークの肉が百グタリ、通常金貨三枚のところ冷凍で新鮮なので二割増しのプラス銀貨六枚、同じく皮が通常金貨二枚のところ大判で無傷なのでプラス金貨一枚、毒袋が金貨一枚、血が銀貨五枚、牙も一対で銀貨五枚、ただし解体されていないので解体手数料を銀貨五枚いただきます。差し引きで金貨八枚と銀貨一枚ですね。ここから町民登録料の銀貨三枚を引くので、金貨七枚と銀貨八枚になります。よろしいですか?」

「はい喜んで」

 思わずどこかの居酒屋みたいな口調になってしまった。何せ獲物一匹で七万八千円だ。命の危険と考えればそこまで高くはないが、日給として考えればめちゃくちゃ高い。たぶん運搬が面倒くさいので他の人はあまり持ち込まないのだろう。


「それで、こちらが町民証になります。この文字は魔法で彫り込んであるので改竄(かいざん)できません。こちらに埋め込まれている魔石と、このギルド控えの魔石が対になっておりまして、魔力を流しますと魔力紋が記録されます。以後は同じ魔力紋の人、つまり本人が触れた時に限り町民証の文字が光るようになりますので、なりすましも出来なくなります。ラプタリア王国の誇る最新システムです」

 書かれている内容は仮身分証と同じだが、文字が銅板に彫り込まれており、右上の隅に小さな深紫の石が埋め込まれている。これが魔石なのだろう。言う通りの偽造防止がされているのなら、なかなか凄いシステムである。

「登録の魔力はどのくらい必要ですか?」

「敢えて注入しなくても触れる程度で結構です。逆に力をかけ過ぎると石が割れちゃいます」

「了解。ちょっとだけですね」

「……はい、無事に登録されました。追加の書き込みはあちこちでできるのですが、内容の消去や書き換えはギルドの刻印機でないとできませんので、その場合は手数料を銀貨二枚いただきます。翌年の更新まで放置される方も多いのであまり必要はないと思いますが、書き込みが増え過ぎて刻印する場所がなくなったり、犯罪歴以外でどうしても人に見せたくない記録があったり、転職とか性転換とかで変更したい内容があったりする場合はお申し出ください」

「は、はあ」

 性転換が割と普通な世界なのか。かなり進んでいるな。


「では、こちらでの手続きは終了です。次はこの町民証を持って神殿に行ってください」

「神殿?」

「はい。神殿では魔法適性の判定を受けられます。ラプタリアは魔法を重視していますから、成人になったら判定するよう奨励されています。エージ様は本日ちょうど成人されたようですので是非判定なさってください。凄い適性が出ちゃったりしたら王都の研究所に呼ばれて生涯安泰ですよ」

 そう言えば、高い適性や魔力を持つ人間を研究所が集めているらしいな。まあ、戦争に使える人間を集めるのが本音だろうけど。

「もっとも研究所行きは何万人かに一人で、三人に一人は全く適性のないスカなんですけど、それはギルドの知ったこっちゃないですね……」

 受付嬢さん、そういうのはちゃんと聞こえないように言ってくれないかな。

「では行ってみます。神殿ってどこですか?」

「北東にある白い建物です。誰が見ても神殿って分かるので迷わないはずです」

「よくわからないけど、わかりました」

 売却代金と町民証を受け取り、受付を後にした。

 魔法適性か。魔法を使うのは使えているのだが、どうせなら高い適性を複数持ってドッカンドッカンぶちかましたい。俺の知っている話だと転生者はチートってものがあって、そういう規格外の力を持っているはずなんだ。


 その後ろ姿を見送りながら、受付のエミリーは先ほどの言葉とは逆のことを考えていた。

「あれだけの大物を丸ごと凍らせるんだから、たぶん結構な氷適性を持っているのでしょうね。それにブルースネークといえば、そこまで強くはないけど仮にも中級モンスター。その大型個体を一人で狩るなんて、まだ若いのになかなかやる子ね」


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