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第五幕最終節まで、あと29節。
●第一幕 ボクはキミの××××××になりたい
1:キズモノ
――9月×日――
それが「キズモノ」と呼ばれる怪人物だと思い当たったのは、遭遇した翌日のことです。
チャンネル登録をしていたUMAという都市伝説系の動画配信者が、一年近く前に面白おかしく語っていたのを思い出したからでした。改めてその動画を見直してみると、実際に被害にあった私からすれば、UMAの軽薄な口調が腹立たしかったのですが、彼が語っていたキズモノの特徴と私たちが出会った人物像は、ほとんど一致していました。
暗い夜道に突然立ち塞がり、訳のわからない言葉を発しながら生々しい傷口を見せつけてくる怪人物。その言動や立ち居振る舞いが、どう考えても異常者でした。
キズモノが立ち去ったあと、私たちは半狂乱になって警察に駆け込み、被害や犯行場所を説明したのですが、担当になった初老の警察官はロクに取り合ってもくれませんでした。直接的な危害を受けていないこと、そして何より、私たちがお酒を飲んでいて、ほろ酔いになっていたことも影響していたかもしれません。
私だってはじめてUMAの話を聞いたときはまったくの他人事で、単なるエンタメくらいにしか思っていませんでした。あの怖さはきっと、直面した人じゃないと共感してもらえないでしょう。暴力的な怖さではなく、幽霊とか呪いとか、そっち系の怖さです。
不幸中の幸いだったのは、友達といっしょに帰っていたことでした。キズモノの恐怖を分かち合え、軽くあしらわれた警察官の悪口を言い合って笑い飛ばせる友達がいたから、私はこのことを、ただの怖い体験として整理でき、ここに書けたのだと思います。
もしキズモノに出くわしたのが、自分一人だったら……一生もののトラウマになっていたかもしれません。
このブログの読者に、相南平に住んでいる人がどれくらい、いるかはわからないですが、とにかくキズモノに遭遇しないことが一番です。夜道の一人歩きは絶対にやめましょう。私たちが遭ったのは、十時になる少し前です。
一応、私たちがキズモノに出くわした場所の画像を貼り付けておきます。何かの役に立つと嬉しいです。
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サムズアップのアイコンをした「いいね」のマークの横に、数字の「8」が表示されている。この人が書いた他の記事より、「いいね」はついているほうだった。
だいたい、今このスマートフォンの画面に映しているブログ記事は、いつ削除されても手元に残るように一昨日前にアップされたものを、スクリーンショットで画像保存したものだ。僕がサムズアップのアイコンを押したところで、数字が増えることはない。
「間もなく終点……」と大学名を読み上げるバスのアナウンスが聞こえる。
まだ、夏休みの最中だからだろう。大学に着く頃には、バスの中にいるのは、僕一人だけになっていた。
読んでくださってありがとうございました。
ブクマ・ポイント・ご感想、すべてが力になります。
どうか、最後の風景まで見届けていただけますと嬉しいです。
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次節:第一幕 第二節「復学カウンセリング」
5/23(土) 13:00 公開予定
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