表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
林檎食べたら桃色ゴブリン! ~婚約破棄から宗教へ~  作者: 青井銀貨
婚約者からの絶望とメイドからの救済
2/15

2話 ~一発屋芸人なゴブリン~

 


 姿見を前にして、フリードは己の変貌に絶望した。


「……なんだよ、これ……っ!」


 鏡に映っているのは、凶悪極まる人相、不自然に巨大な耳、つり上がった目、そして隙間から覗く鋭い牙。何より耐えがたかったのは、それらすべてを包み込む毒々しいまでのピンク色の肌だった。


「どうして……どうして僕が、桃色のゴブリンになってるんだよーーーっ!?」


 叫び、顔を歪めると、鏡の中の化け物も同じように醜く顔を歪めた。そのあまりに見るに堪えない光景から逃れるように、フリードは姿見に背を向けた。


「原因は不明です。しかし、命が失われなかっただけでも幸運だった……そう考えることもできますよ」


 専従医師のエリトンが、優しく肩に手を置いて慰めてくれた。その温もりに、フリードの胸に小さな感動が宿る。


(ゴブリンになってしまった僕に、素手で触れてくれるなんて……)


 だが、ふとした違和感に気づき、フリードの思考は止まった。見上げるエリトンの顔が、あまりにも遠いのだ。


「あの、エリトン。僕……縮んだ?」


「仰る通りです。これもまた理由は不明ですが………」


 申し訳なさそうな顔をしているエリトンの腰の位置、その場所にフリードの頭はあった。元からエリトンの方が背は高かったが、それにしても身長差は大人と子供だった。


「ひどい、ひどすぎる……」


 フリードはその場に膝をつき、大粒の涙をこぼした。かつての自分はどこへ行ったのか。混迷する頭で、彼は最も恐れていた疑問を口にする。


「家族は……父さんや母さんたちはどこだ?」


 三か月も意識不明だったのだ。目覚めたと知れば、真っ先に駆けつけてくれるはずではないか。


(もしかして、見捨てられた……? 僕がゴブリンになったから、もう家族じゃないってことか……?)


 不安に押しつぶされそうになりながらエリトンを見上げたが、彼は意味深な微笑を浮かべるだけで、何も答えない。それがかえってフリードの絶望を深めた。


「ご家族の方々なら、どうやら飽きてしまったようです」


 冷や水を浴びせかけるような声が響いた。振り返ると、専属メイドのマリーゴールドが無表情で立っていた。


「飽きた……?」


「はい。フリード様は倒れられたその日から、徐々に今のお姿へと変化していきました。三週間前には完全にその姿になられ、それ以降は一切の変化がございませんでした」


「だからって、どうして……」


「ご家族の皆様にとっては、もうとっくに驚き終わっているのです」


「驚き終わっている!?」


 人生で一度も聞いたことがない言葉に、フリードは耳を疑った。


「はい。ですから、フリード様がその姿であることは、我々を含め、この屋敷ではすでに『当たり前の光景』となってしまいました。初日などはこのお部屋で付きっきりで看病なさっていましたし、毎日のようにお見舞いに来ていましたが、その頻度は徐々に減っていきました」


「信じられない………」


「はっきり申し上げれば、皆様飽きられたのだと思います」


「飽きられただって!? 息子が桃色のゴブリンになったっていうのに!?」


「左様でございます」


 マリーゴールドは淡々と、無慈悲な事実を突きつける。


「つまり……僕は一発屋芸人みたいなものってことか!?」


 スギちゃん、ねずっち、ひょっこりはん………。様々な顔が頭の中に浮かび上がり消えていく。


「その言葉の定義は存じ上げませんが、恐らく、その通りかと」


 マリーゴールドの容赦ない肯定に、フリードは底知れぬ絶望と、なぜか深い敗北感を感じ、再び床に伏して涙に暮れるしかなかった。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ