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今日の描かない君と踊らない僕  作者: 高名なすの
第2章 あの頃の描けない君と踊れない僕
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15話 受け止めるおまえと突き進む私

「勝敗の付け方はどうするんよ」


 長い髪を後ろで一本結びにしながら菊千代は尋ねた。


「俺は死ぬまででいい。そうじゃないと意味がないしその方がそっちも楽だろう?」


「私は殺したくないんよ。魔法使いを何だと思ってるんよ」


「俺は殺人鬼って聞いてるがな」


 菊千代だけでなくこの場にいる女性全員が己の耳を疑った。殺人鬼って……何をどうやったら自分たちから仕掛けてきた戦いなのに私たちのことを殺人鬼だって言えるのだろう。

 

 東京が一面のガレキと廃墟になったのはそっちが私たちを探すのが面倒だからって東京《《ごと》》攻撃したからなのに。結局その攻撃で私たちが受けたダメージはゼロだったのだが。それで亡くなった人たちまで私たちがやったことにされても……ねぇ? なんか違くね? っていうやつはそっちにはいないのか?


「お互いが納得するまででいいんじゃないの~?」


「わしもそれがいいと思うぞぇ。こういうのはあとくされないほうがいいからのう。わしらが口出すことじゃないわな」


「うん……うん。私もそれでいいんよ。」


「菊千代がいいなら俺もそれでいい」


 2人は100メートルほど距離をとった。私たちはそれを横で見守る。もちろん流れ弾に当たらないよう常時シールドを張っている。大鳳が。移動もだけどずっと同じことをする系のことは全部この人がやってくれてるな。


 裕太が鏑矢を放った。


「千歳菊流『飛翔剣ひしょうけん』!!」


 鏑矢が音を発するより早く刀を抜いた菊千代がそれを思いきり振り下ろす。すると妖力で形作られた斬撃が豪速で飛んでいき裕太を直撃し、砂煙を立てた。


 さらに斬撃と同等のスピードで砂煙めがけて突進していき間髪置かずに次の技を叩き込む。


「千歳菊流『十文字じゅうもんじ』!!」


 勝負あったかのように思われたが砂煙が晴れるとそこには無傷なうえ片手で、しかも刀身を掴んで立っている裕太の姿があった。


「さっきもだが。あいつふつーの人間だよな……妖力使いとかじゃなくて」


 大鳳は驚きを隠せないようだった。


「のはずじゃぜ。妖力も魔力も男にはやどらんからの。でもあれはちょっと人間やめてるのう。私たちが言えたことじゃないが」


 裕太はそのまま刀を菊千代ごと勢いよく投げると目にもとまらぬ早業で矢を2本菊千代めがけて発射した。


 空中で体勢を崩しながらも何とか1本目を刀でいなす菊千代。だが2本目はよけることもできず額で受けてしまいそのまま落下する。


 立ち上がるも額からは血が流れ髪はぐしゃぐしゃになっていた。


「はぁ……はぁ……死ぬかと思ったんよ」


 普通の人間だったら矢が当たった時点でもう死んでるんだよ。


「おい菊千代。なぜそんなわけのわからん技ばかり使う。なぜ受け継がれてきた千歳流を使わない」


「なんでって……使えるものは使う!それが今の!私の千歳流だからなんよ!『十文字』!!」


 再度菊千代が裕太めがけて突進する。


 しかし何度やっても同じこととばかりに裕太は難なく受け止め今度は菊千代を蹴り飛ばした。


「ぐあああああああああ!!!」


 たまらず菊千代はブレードカタナキャリバーを手放しデコボコだらけの地面を勢いよく転がる。


「東雲は代々この弓を継承してきた。俺は弓を、技を、伝統を信じている。故に強い。伝統を途切れさせるわけにはいかない。だからお前を連れ帰らなければならない。お前が伝統を捨てていたとしても、だ」


 そう言い放つとブレードカタナキャリバーを倒れている菊千代に向かって投げた。菊千代はボロボロになりながらもそれを掴み杖代わりにして何とか立ち上がる。髪はもうほどけていたし服も転がった影響で所々擦り切れていた。


「おい如月。あれお前なら勝てるか? 同じ妖術使いだろ?」


「あれはなんよと相性が悪すぎるの。見たところ奴は完全に技術のみで体表に伝わる衝撃をすべて流しとる。なんよの攻撃は全て外側からダメージが伝わる攻撃じゃからな。わしの攻撃は逆に内部から伝わるからわしなら勝てるじゃろうが……助けに行った方がいいかの?」


「いや~。このままでいいんじゃないかな」


 それまで黙ってみているだけだった十七夜が口をはさんだ。


「なんよちゃんなら何とかするでしょ~。だって模擬線でさゆさゆ以外なんよちゃんに勝ったことないじゃん?」


 確かにそれはそうだ。そもそも菊千代の刀を受け止めることができるのが佐鳥しかいないというのもあるが今起きている私たちは菊千代に勝ったことがなかった。パワー、スピード、妖力、と身長と年長者の威厳以外のすべてがそろっている。それがなんよ。それが千歳菊千代だ。


「伝統伝統って……。つまんない男なんよ。ロリコンだし。ストーカーだし。ちょっとかっこいいけど。勝手に私がすべて捨てたみたいに言わないでほしいんよ。まだ刀だけは……ブレードカタナキャリバーだけは捨ててないんよ。これだけは投げないでほしかったんよ……」


 妖力は宿す本人の精神の影響を大きく受ける。菊千代の妖力がオーラとして目に見えるほどに強くなったことから菊千代が静かに怒っていること。それとここからが本当の本気だということが私にはわかった。


 妖力も魔力もないため菊千代の体から溢れるオーラが見えないはずの裕太も危険を感じたのかさらに距離をとろうと後ろに下がった。


 それを菊千代は見逃さなかった。裕太の体重が後ろに傾く瞬間、本日のトップスピードで突進していきその間を一瞬で詰めた。

 

 先ほどまでのように右手で抑えようとする裕太。しかし刀を掴もうとしたその手は空を切った。菊千代は直前で切り替えし裕太の左、身長差も相まって完全に死角を取っていた。


 そして5尺もあるそのブレードカタナキャリバーを短く振り裕太の左足首の腱を斬った。


「くぅっ」


 左足が崩れ片膝で立つ裕太。受け流すことができなかったようで足首からは血が噴き出していた。


「千歳本流『足切』……私、本流は名前がダサいから使いたくないんよ」


 うたれないよう菊千代は裕太の右に回った。


「……魔法も使ったな。俺は確実に刀を掴んだはずだった」


「うん。使ったんよ、幻覚を見せる技。使えるものは使う、なんよ」


「そうか、これが本気のおまえか。ふふふ。はははははは。そうかそうか!」


 裕太は突然笑い出した。


「うわっ。やっぱお前怖いしきもいんよ」


「いやすまない。今回は俺の負けでいい。いや、これが進化かと思ってな。どうやら東雲流もまだ成長することができそうだ。俺も。おまえがいれば次の代だって! それと……」


「それと?」


「ますますお前のことが気に入ったぞ菊千代! ぼろぼろのおまえもなんかこう……いいな! ゾクゾクする! 今回は帰るがまた迎えに来るからな!」


 裕太は負けたやつとは思えないほどに大きく笑った。実際けがの具合とかみてくれだけではどっちが勝者かわからない。


「「二度と来るなよ!!」」


 往生際わるっ! ここまでの会話を聞いていてつい私も叫んでしまった。この会話も、おそらく先ほどの1秒にも満たない戦闘も結果しか見えていなかったであろう2人がビクッっとした私のほうを見る。ごめん。あとで説明するから。


 そうして東雲裕太は私たち4人に「じゃまた」とかなんとか挨拶すると来た方へと帰っていった。


「そういえばなんだけどさ。なんよちゃんはあの人のこと嫌いなの? かっこいいけど」


 見えなくなったころ十七夜が佐鳥みたいな話題を持ち出した。


「別に……性格が嫌なだけで顔とかはそういうのはまぁその……」


「どタイプなんだな」


 渋っていたところを大鳳にストレートに言われ菊千代の頬が一気に紅潮した。


 この時の菊千代の妖力はここ最近で一番強かった。

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