14話 合法だからね
そんな感じで各々が武器に名前を付けてなんか漫画みたいになってきたね、とかそもそも魔法使いの時点で十分漫画だろ、とかなんとか話していると急にピューという
なんとも気の抜けたというか、可愛い音が空から聞こえた。
「鳥、かの」
「鳥だったら見えるはずっしょ。まだ日が沈んでないんだし?」
「鏑矢。なんよ」
菊千代はその鏑矢が放たれたであろう方角をさっきまでとはうって変わって真剣な表情で見つめていた。どうやらその矢に心当たりがあるようだった。
「鏑矢ってあの昔の侍が使ってたやつっすか? 戦が始まる合図の」
「そうなんよ。で、こんなことを今わざわざやるのは……!!」
会話の途中で急に菊千代が刀、じゃなかった。ブレードカタナキャリバーを抜いた。カランと乾いた音がした。彼女の足元には真っ二つに切られた矢が一本落ちていた。
「あいつしか、いないんよ」
菊千代の視線の先には西日を背に受けて一人の男が弓を構えて立っていた。逆光なので顔とかはよく見えないが大鳳と同じくらいの身長はありそうだ。かなり距離がある位置からここまで私たちがわからないような速度の矢を射ってきたのを見るに相当の使い手のようだ。
「なんよちゃん知り合い?」
「知り合いも何も。許嫁なんよ。」
菊千代はひとつため息をついてうんざりというように苦い顔をした。多分思ってたことはみんな違うはずだが誰も何も言わなかった。私はいまだに許嫁ってあるんだなって思った。
「じゃ、じゃあ彼氏。いや元カレってことっすか」
佐鳥は一人だけ別の盛り上がり方をしていた。いまではないだろ。ていうかよりによって考えたのそのことかよ。ちょっとやばそうな雰囲気の中でよく恋バナにもってこうとできるな。
「別に私は好きとかじゃないんよ。あいつやばいやつだし。あっちが執着してるだけ
なんよ。こんなことになってからは初めてだけど今までもなんども……」
菊千代がぶつぶつ愚痴りだしたころには相手はすでに顔が見えるくらいには近くに来ていた。いや、なかなかにイケメンだった。ツーブロックの髪をバックに流していて目もきりっとしてるしつくところに筋肉がついててさわやか好青年っていう感じの。
「イッケメンじゃないっすかー……ゼイタクっすね~なんよ先輩」
「なーんかうちら負けた気分だわ。こんなロリに。ね、お姉ちゃん」
「だからそこがやばいんよ。みるんよ私の体を。どっからどう見ても小学生なんよ。どう考えてもあいつロリコンなんよ」
「俺はロリコンじゃない」
男の声を聴いた瞬間全員が跳んで距離をとり武器に手をかけた。それに応じるように男も弓を引いた。そう、男が声を発するまで誰もすぐそこまで来ていることに気が付かなかった。魔法使いの4人は仕方ないにしろ感覚が強化されている私と菊千代にも気づくことはできなかった。
「おや、申し遅れた。俺は東雲裕太。菊千代の夫だ」
「夫じゃないんよ!そもそも私は!」
「で、うちの菊に何の用だ。そもそも戦闘は明日のはずだろう。」
いつの間にか起きていた大鳳が東雲に話しかけつつ皆の武器を下ろさせた。
「戦闘?なんのことだ。俺はただ菊千代を迎えに来ただけだ。」
全員の頭に一斉に?マークが浮かんだ。彼は敵とは全く関係がなくただただ許嫁の菊千代を迎えに来ただけだという。じゃあなんで矢を打ってきたんだよ。なんよがいなかったらどうするつもりだったんだ。
「迎えに来たって。どこに帰るんですか~?」
「東京外だ。当たり前だろう」
「だとしたら菊の妖力をなくすことになるが」
「それに何の問題が」
「あのさ。私は妖力を失いたくないから今こうやってみんなと一緒にいるんよ。じゃ
なかったらこんなとこいないんよ。」
「だがおまえは俺の許嫁だ。わかるだろう。俺と来るべきだ」
「だからそもそもそれがイヤなんよ」
「イヤとかじゃなくてだな……」
この後もこんな感じで1時間ほど絶対に妖力を手放したくない菊千代と絶対に一緒に帰りたい東雲の押し問答は続いた。その間に飽きた双子と佐鳥は車の荷台で既に夢へと旅立っていた。
で、結局どうなったかというと。今後も来られたら困るからってこと、それと絶対に連れて帰りたいからってことでタイマンで決めることになった。なんでこうなるかね。もっといい方法あった気がするのだが……。




