彼女4
【 クッキー作った 】
彼氏にこんなメッセージを送った。我ながらどうでもいい内容で、送らなくてもいいメッセージだと思う。
だけど送らずにはいられなかった。
あたしと彼氏は頻繁にメッセージのやり取りをする方ではない。だから会えない日は本当に連絡をとらないのだ。
だいたいは我慢するのだけれど、定期的になんでもいいから話がしたくなる。その結果がこれだ。
【くれるの?】
と返信がきた。
それが嬉しくて自然と頬が緩む。それなのに、
【 あたしが食べるの。】
と素直じゃない返信をした。
半分は本当で半分は嘘。
クッキーはもちろん好きだけど、クッキーを焼こうと思った時真っ先に思いついたのが“彼氏との話題になる”ということだった。
そうは言っても「彼氏のためにクッキーを作りました」なんて恥ずかしいじゃない。
あたしは枕に顔をうずめた。
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次の日、彼氏との登校中。あたしは彼氏との会話が途切れた時を見計らってクッキーを取り出した。
「1人じゃ食べきれなくて余ったの。食べる?」
さらっと嘘をついた。
「おう。」
彼氏はそっけなく、3分くらいかかったラッピング袋を受け取った。
「実は貴方の為に作ったの」とは言えないから、照れ隠しに
「美味しすぎてほっぺた落ちるかも。」
と、自分の茶色いローファーのつま先を見ながらぼそっと言った。
少し上でラッピング袋のカサカサという音がして、クッキーを噛む音がした。それから低い声がした。
「いつも通り。」
顔を上げると、してやったり顔の彼氏。
「え、それだけ?」
うん、いつもの感じ。
「じゃあ今度は絶対ほっぺた落ちるくらい美味しいもの作るから」
さっきまでのぎこちなさはどこへやら。
あたしは顔の筋肉が緩むのを抑えられなかった、というか抑える気もなかった。
なんだかんだ彼氏は、あたしを喜ばせるのが上手なのだ。




