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転生したら村人だったので、世界一の村を作ったら大都市になった  作者: レモンティー


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8/13

■第八話 村の外まで発展が始まった

アルバ村の人口が五百人を超えてから、村の様子はさらに変わっていた。

畑が広がる。

家が増える。

工房が増える。

市場には遠くから商人がやって来る。

そして何より。

村の外に、人が住み始めていた。

「カイル様、南の道に新しい家が建っています」

「北側にも三軒増えました」

「川沿いには漁師の家が十軒ほど……」

報告を聞きながら、カイルは地図を見つめていた。

以前なら、アルバ村の周辺はほとんど空白だった。

今は違う。

村の周囲に小さな集落がいくつも生まれている。

農業をする者。

漁業をする者。

木を切る者。

鉱石を掘る者。

羊を飼う者。

炭を焼く者。

それぞれが、自分たちの得意分野を持っていた。

「……やっぱりこうなったか」

「何がです?」

「村を大きくするだけじゃ足りなくなった」

カイルは地図の中央を指差した。

アルバ村。

その周囲を囲むように、小さな集落が点在している。

「このままだと、それぞれが勝手に道を作る」

「はい」

「勝手に水路を掘る」

「はい」

「勝手に倉庫を建てる」

「はい」

「そのうち、誰かが川を塞ぐ」

「……それは困りますね」

「だから最初に決める」

カイルは新しい地図を広げた。

「道路」

一本。

二本。

三本。

アルバ村から周辺集落へ向かう道路を書き込んでいく。

「ここは農業地区」

「ここは牧畜地区」

「川沿いは漁業地区」

「山側は林業と鉱業」

「そしてアルバ村は市場と工房と行政の中心」

老人が地図を覗き込んだ。

「……行政?」

「村の運営をする場所だよ」

「村長の仕事を増やすのか?」

「増やしたくない」

カイルは即答した。

「でも、増えるんだろうな……」

老人が笑った。

「間違いなく増える」

「……」

カイルは頭を抱えた。

「俺は静かに暮らしたかっただけなのに」

「もう諦めろ」

「まだ村だから」

「その台詞、最近誰も信じていないぞ」

「……」

カイルは聞こえなかったことにした。

まず始めたのは道路だった。

これまでは、それぞれの集落が適当に道を作っていた。

雨が降れば泥だらけ。

荷車が通れば車輪が沈む。

冬になれば凍結する。

そこでカイルは、主要道路を石で舗装することにした。

地面を掘る。

大きな石を敷く。

その上に小石を詰める。

最後に土を固める。

「これなら雨でも泥になりにくい」

さらに道路の両側には排水溝を作った。

「水を道路の上に溜めない」

これだけで、雨の日の移動が大きく変わった。

荷車が止まらない。

農産物が運べる。

魚を市場まで早く運べる。

鉱石も運べる。

薪も運べる。

道路は、村の血管のようになっていった。

そして道路ができると、次の問題が発生した。

「カイル様!」

若い商人が駆け込んできた。

「どうした?」

「荷車が足りません!」

「……」

カイルは少し考えた。

「なら作ろう」

今度は荷車工房が忙しくなった。

車輪の大きさを統一する。

車軸の規格を揃える。

荷台の幅も統一する。

部品を共通化する。

すると修理が簡単になった。

「壊れた車輪だけ交換できる」

「車軸も同じ規格なら別の荷車から流用できる」

「部品を大量に作れば安くなる」

職人たちは驚いた。

一台ずつ違う荷車を作るより、同じ規格で作った方が圧倒的に効率がいい。

こうしてアルバでは、初めて「規格」という考え方が広がっていった。

そして荷車が増えると、商人も増えた。

「アルバ村までなら三日」

「南の港まで五日」

「北の鉱山まで二日」

商人たちは距離と時間を記録し始めた。

そこでカイルは、さらに仕組みを作った。

馬を乗り換える場所。

休憩所。

簡単な宿。

荷物を一時的に預ける倉庫。

そして道路の途中には道標を設置した。

「ここからアルバ村まで十キロ」

「南港まで二十キロ」

「北鉱山まで十二キロ」

旅人が迷わなくなった。

物流が速くなった。

商人が安心して遠くまで行けるようになった。

すると、また人が集まった。

鍛冶職人。

大工。

商人。

料理人。

宿屋。

馬車職人。

薬師。

仕立屋。

靴職人。

パン職人。

村には、これまで存在しなかった仕事が次々と生まれていった。

「カイル様」

市場を管理している女性が言った。

「店が増えすぎています」

「どれくらい?」

「以前の三倍です」

「……」

カイルは市場を見た。

魚。

肉。

野菜。

果物。

小麦。

パン。

布。

靴。

鍋。

農具。

石鹸。

紙。

陶器。

木材。

金属製品。

薬。

そして遠くの国から運ばれてきた珍しい品まで並んでいる。

「市場を広げよう」

「またですか?」

「今度は屋根をつける」

「屋根?」

「雨の日でも商売できるようにする」

さらに売り場を分けた。

食品。

衣類。

金属製品。

木工品。

陶器。

薬。

生活用品。

そして商人用の大きな取引所まで作った。

ここでは大量の商品を直接売買できる。

「百袋の小麦を買いたい」

「こちらは二百袋あります」

「値段は?」

「一袋これくらいです」

商人同士が交渉する。

その記録も残す。

誰が。

何を。

何個。

いくらで売ったか。

最初は面倒だった。

だが、しばらくすると大きな効果が出た。

「去年より小麦が安い」

「魚が増えた」

「布が不足している」

「鉄が足りない」

数字を見れば、何が足りないのか分かる。

何を増産すべきなのかも分かる。

カイルは市場の記録を眺めながら呟いた。

「……これ、完全に経済だな」

隣にいた老人が言った。

「最初から経済だろ」

「俺は村を作っていただけなんだけど」

「五百人も住んでいて、毎日大量の商品が売買されていて、周辺に集落まで増えている場所を村と呼ぶ方がおかしい」

「……まだ村」

「頑固だな」

その頃。

山側では、別の変化が起きていた。

鉱山から鉄鉱石が大量に運ばれてきたのだ。

「鉄が取れます!」

鉱山責任者が報告した。

「どれくらい?」

「以前の三倍です」

「なら鍛冶場を増やそう」

「鍛冶場だけでいいんですか?」

カイルは首を横に振った。

「鉄鉱石をそのまま運ぶより、加工してから運んだ方が価値が高い」

鉱石。

炭。

炉。

鉄。

農具。

鍋。

釘。

工具。

鎌。

斧。

車輪部品。

生産工程を村の中に作っていく。

すると、鉄を扱う職人が増えた。

職人が増える。

工具が良くなる。

工具が良くなると、農業の生産性も上がる。

農業が伸びる。

食料が増える。

食料が増える。

人口を養える。

そして人口が増える。

カイルは数字を見ていた。

「現在の人口……」

記録係が答えた。

「五百八十二人です」

「もう五百を超えてるな」

「はい」

「半年後には?」

「このままなら七百を超える可能性があります」

カイルは黙った。

七百。

少し前まで三十七人だった。

それが五百を超えた。

そして今も増えている。

「……家が足りなくなるな」

「はい」

「食料も」

「はい」

「学校も」

「はい」

「診療所も」

「はい」

「道路も」

「はい」

カイルは深く息を吐いた。

「だったら、先に作ろう」

村の中心に新しい計画書が広げられた。

住宅地区の拡張。

新しい学校。

診療所の拡張。

共同浴場。

上下水道。

大規模倉庫。

市場の拡張。

道路の拡張。

新しい橋。

そして――

「下水?」

役人が首を傾げた。

「これだけ人が増えたら、汚水をそのまま流すわけにはいかない」

カイルは川を指差した。

「飲み水を取る場所と、汚水を流す場所を分ける」

「そんなことまで?」

「病気を防ぐためだ」

カイルは以前の世界で見た都市を思い出していた。

人が増えるほど、衛生は重要になる。

人口が三十七人なら多少の不備でも何とかなる。

五百人なら問題になる。

千人なら大問題になる。

一万人なら命に関わる。

だからこそ。

今のうちに作る。

「アルバ村は、これからもっと人が増える」

カイルは地図を見つめた。

「なら、人が増えてから慌てるんじゃなくて……」

道路。

水路。

住宅。

市場。

学校。

病院。

下水。

倉庫。

工房。

次々と書き込んでいく。

「先に作っておけばいい」

その日。

アルバ村では、初めて大規模な都市計画が始まった。

そして数か月後。

人口は――

七百人を超えた。

まだ誰も気づいていなかった。

アルバ村が「村」と呼ばれる時間が、もうそれほど長く残っていないことを。

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