第47話「絶望の東方戦線。〜魔法が効かない魔族の軍勢に、成層圏から『神の杖(タングステン落下)』を落としてみた〜」
東方神国の国境線。
そこは今、絶望に支配されていた。
「ぐはぁっ……! ダメだ、我らの陰陽術(魔法)が全く通じぬ!」
「なんという硬い結界だ……! 侍の刀も弾かれるぞ!」
東方神国が誇る防衛隊は、押し寄せる異形の軍勢――『魔王軍・先遣隊』の前に総崩れとなっていた。
魔族たちの周囲には、薄闇色の『絶対魔力障壁』が張られている。炎を放っても、氷の刃を飛ばしても、障壁に触れた瞬間に霧散してしまうのだ。
「ギャハハハッ! 愚かな人間どもめ! 我ら高位魔族に、下等な魔力攻撃など一切通じぬわ!」
「さあ、このまま結界を押し破り、東方の神国を蹂躙してやろうぞ!」
数千に及ぶ魔族の軍勢が、勝利を確信して下卑た笑い声を上げる。
傷ついた侍たちが歯を食いしばり、死を覚悟した――その時だった。
『――目標座標、固定完了。これより上空一万メートルからの【自由落下】を開始する』
どこからともなく、冷徹で落ち着いた少年の声が戦場に響き渡った。
◆ ◆ ◆
時間を少しだけ遡る。
サクヤから「白米と醤油」を条件に魔族討伐の依頼を受けた俺は、空中要塞の高度を成層圏ギリギリ(上空約一万メートル)まで上昇させ、国境の真上に陣取っていた。
「お兄ちゃん、あそこに黒くて悪い奴らがいーっぱいいるよ!」
「ああ。だがサクヤの言う通り、厄介な魔力障壁を張っているな。普通の魔法じゃ弾かれるだろう」
俺は要塞のコントロールルームから眼下の軍勢を見下ろしながら、右手をスッと前に突き出した。
「【土魔法・元素抽出】――『タングステン』」
俺の手の先に、銀灰色に鈍く光る巨大な金属の柱が錬成された。
長さ約十メートル、直径一メートル。
地球上で最も融点が高く、極めて密度の高い(重い)金属である「タングステン」の巨大な杭だ。
「レ、レン様……? その重そうな鉄の柱で、どうするおつもりですか?」
クレアが不思議そうに首を傾げる。
「落とすだけだよ」
「……え?」
「前世の宇宙兵器の構想に『神の杖』というものがあってな。運動エネルギーは『質量×速度の二乗』に比例する。重いものを、ただメチャクチャ高いところから落とす。それだけで、魔法なんかよりよっぽどエグい破壊力が生まれるんだ」
要は、物理学だ。
魔力障壁は「魔力」を感知して防ぐ。ならば、魔力を一切帯びていない純粋な「質量と重力」ならどうなるか。
俺は狙いを定め、巨大なタングステンの杭を要塞の底面から切り離した。
「いってらっしゃい」
◆ ◆ ◆
再び、東方神国の国境線。
勝利を確信して進軍していた魔族たちが、ふと空を見上げた。
「ん……? なんだ、空から何かが降ってくるぞ?」
「ギャハハ! 人間の姑息な魔法か! 構わん、我らの障壁で弾き返して……」
ヒュオォォォォォォォォォォッ!!!
それは、空気を引き裂く不気味な風切り音と共にやってきた。
マッハを超える速度で落下してきたタングステンの杭は、大気との摩擦で赤熱し、まるで天から降り注ぐ流星のようだった。
そして、巨大な杭が魔族の『絶対魔力障壁』に直撃した瞬間。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
障壁は何の抵抗もできずに紙屑のように粉砕され、大地に突き刺さった杭の莫大な運動エネルギーが、隕石衝突に匹敵する衝撃波となって弾け飛んだ。
「ぎゃああああああああっ!?」
「ば、ばかなっ……まほう、じゃない……これは、ただの……ぶつり……!?」
魔力による防御を一切無視した純粋な「物理エネルギー」と、衝突によって生じた超高熱。
数千いた魔族の先遣隊は、悲鳴を上げる間もなく、たった一本の金属の杭によって文字通り「蒸発」して消え去った。
「な、なんだ……!? いったい、何が起きたのだ……!?」
巻き込まれないよう安全圏に着弾させたため、東方神国の侍たちは無傷だったが、目の前にポッカリと空いた巨大なクレーターを見て全員が腰を抜かしていた。
「――お待たせ。どうやら、魔力障壁とやらは『質量攻撃』には対応していなかったみたいだな」
砂煙が晴れたクレーターの中心。
空からゆっくりと【風魔法】で舞い降りてきた俺は、呆然とする人間たちと、後方に控えていた魔族の残党に向かってニヤリと笑いかけた。
さあ、残りの魔族もサクッと片付けて、早く美味い白米を食べに行こうか。
お読みいただきありがとうございます!
「魔法が効かない? じゃあ物理(運動エネルギー)で殴るね」
理系チートの真骨頂、宇宙兵器『神の杖』の再現です! 魔力を一切使わずにただ「重いものを高いところから落とすだけ」なので、魔力障壁を貫通して魔族を一方的に粉砕してしまいました。
「スカッとした!」「物理学最強!」と思っていただけましたら、
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