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第46話「竜乗りの巫女サクヤとの遭遇。〜魔王軍の兵器と勘違いされたので、最新物理学のバリアで圧倒的な格付けをしてやった〜」


東方神国の上空。

俺たちの乗る空中要塞の前に立ち塞がったのは、青緑色の鱗を持つ長大な水竜と、その頭上に立つ巫女服の少女だった。


「止まれ、正体不明の浮遊城よ! 私は東方神国・第一神子たるサクヤ! 貴様らの目的は侵略か!?」


風に黒髪をなびかせながら、サクヤと名乗った少女が鋭い声を張り上げる。

手には何枚もの呪符(お札)が握られ、その瞳には悲壮な決意が宿っていた。


「侵略ねぇ……。俺たちはただの旅行者なんだけどな」

俺がテラスから声を返すが、距離があるせいか、あるいは彼女が極度の緊張状態にあるせいか、言葉が届いていないようだ。


「返答なき場合は、魔王軍の新型兵器とみなし、撃墜する! ゆくぞ水神竜(すいじんりゅう)よ……『激流穿孔(げきりゅうせんこう)のブレス』!!」


サクヤが呪符を掲げると、水竜が大きく顎を開いた。

直後、ドンッ! という大砲のような音と共に、極限まで圧縮された超高圧の水流が一直線に要塞へと放たれた。


「ひゃうっ!? お、お水がすごい勢いで飛んできたよぉ!」

シロが俺の背中にしがみつく。


「前世の『ウォータージェットカッター』と同じ原理か。確かに分厚い鉄板も切り裂く威力だが……俺の要塞には通用しないぞ」


俺は前に一歩踏み出し、飛来する水流に向けて右手をかざした。

使うのは【土魔法】による炭素の抽出と結晶化だ。


「【絶対硬度・金剛石(ダイヤモンド)装甲】」


キィィィィィンッ!!

空中の二酸化炭素から炭素分子を強制的に抽出し、要塞の前面に厚さ数十センチにも及ぶ「純度100%の巨大なダイヤモンドの壁」を瞬時に錬成した。

地球上で最も硬い物質の一つである巨大結晶の前に、超高圧の水ブレスが直撃する。


パァァァァンッ!!

ブレスは要塞に傷一つ、いや、揺れ一つ起こすことなく、ダイヤモンドの壁に弾かれて美しい虹色の飛沫となって四散した。


「なっ……!? 水神竜の最大ブレスが、防がれた……!? し、しかもあんな巨大な宝玉(ダイヤモンド)の障壁を無詠唱で展開するなんて……!」


サクヤが絶望に目を見開く。

こちらに敵意がないことを示すためにも、サクヤと水竜には一度大人しくなってもらう必要があるな。


「少し痛いかもしれないが、我慢しろよ」

俺は水竜に向けて【土魔法・電磁気力制御】を発動した。


バチバチバチッ!!

水竜の周囲の空間に強力な磁場を発生させ、目に見えない「電磁の檻」を形成する。

魔法ではなく、純粋な物理法則による拘束だ。水竜はピタリと空中で動きを止められ、まるで透明な糸で縛られたかのように身動きが取れなくなった。


「キュルルルルッ!?」

「水神竜!? ば、馬鹿な、魔力による拘束の気配が全くないのに……! ひっ!?」


見えない力で水竜ごとテラスの目の前まで引き寄せられたサクヤは、その場にペタンとへたり込んだ。


「あ、ああ……終わりだ。こんな規格外の化け物(魔王)が神国に攻めてくるなんて……お父様、申し訳ありません……っ」


ポロポロと涙を流し、絶望に打ちひしがれるサクヤ。

どうやら本気で魔王軍だと勘違いされているらしい。俺はため息をつき、磁場の拘束を解いてから彼女に歩み寄った。


「勘違いするな。俺は魔王でも侵略者でもない。ただの旅行者だ」

「えっ……?」

「ほら、お姉ちゃん泣かないで! お兄ちゃんはすっごく優しいんだよ!」


シロが駆け寄り、サクヤにハンカチを差し出した。

クレアも後ろから微笑みながら、温かい紅茶を淹れて持ってくる。


「……人間の、獣人? それにあなたも……魔族ではないのですか?」

サクヤは呆然としながら、シロとクレア、そして俺の顔を交互に見た。


誤解を解き、紅茶を飲んで落ち着きを取り戻したサクヤから、俺たちは東方神国の現状を聞かされた。

現在、この国は魔族の軍勢による激しい侵攻を受けており、国境の防衛線が突破されるのも時間の問題なのだという。


「……恥を忍んで、お願いします!」


ドンッ! と、サクヤがテラスの床に額を擦りつけた。


「先ほどの、あの規格外の御力……! レン様とおっしゃいましたね。どうか、どうかその力で、魔族から神国を救っていただけないでしょうか! この命に代えても恩は返します!」


涙ながらに土下座する巫女。

俺はクレアと顔を見合わせ、それからゆっくりと口を開いた。


「命なんていらないよ。その代わり……国を救ったら、あんたの国の『最高級の白米』と『醤油』、それと『極上の温泉の権利』を一生分もらう。これでどうだ?」

「へ……? こ、お米とお醤油、ですか……? そんなものでよろしいのですか!?」


「俺にとっては、魔族を倒すことよりそっちの方が百倍重要なんだよ」

俺はニヤリと笑った。


待ちに待った東方グルメのためだ。

俺の『現代物理学』をフル稼働させて、この国の魔王軍をサクッと蹂躙してやるとしよう。


お読みいただきありがとうございます!


「水ブレス? じゃあダイヤモンドの壁で弾くわ」

理系チートによる圧倒的なバリアと電磁拘束! サクヤちゃん、完全にレンを魔王だと思って絶望してしまいました(笑)。

そして、ついに魔族討伐の依頼を受注! もちろん報酬は「白米と醤油」です!

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