第45話「マンネリ打破のために、要塞ごと『東方の神国』へお引っ越し。〜面倒な荷造りもゼロで、快適な空の旅へ出発だ〜」
サウナとカプセルホテルでの究極の「ととのい」から一夜明けた。
テラスで朝のコーヒーを飲みながら眼下の雲海を見下ろしていると、ふと、ある思いが頭をよぎった。
「……そろそろ、この景色にも飽きてきたな」
空中要塞での生活は、衣食住のすべてが完璧に満たされている。
シロやクレアとの賑やかな毎日、ガンダルの作るオーバーテクノロジーな道具たち。どれも最高だ。だが、ずっと同じ空域に留まっていると、どうしても刺激が足りなくなってくる。
「よし、決めた。みんな、ちょっとリビングに集まってくれ」
俺は家族全員を呼び集めると、宣言した。
「今日からこの要塞ごと、東の果てにあるという『東方神国』へ向けて大移動(引っ越し)をするぞ」
「お引っ越しですか!?」
クレアが目を丸くする。
普通、長距離の引っ越しといえば、衣類の段ボールへの荷造りから始まり、退去に伴う費用の計算、新しい家の鍵の防犯構造の確認など、面倒な作業が山積みだ。
しかし、俺の土魔法とこの空中要塞があれば、家ごと(しかも超高層の安全圏を)移動できるので、そんな苦労は一切ない。
「わーいっ! お兄ちゃん、新しいお空に行くの!?」
シロのシッポがパタパタと嬉しそうに揺れる。
「ああ。東方の国は、俺たちがいつも食べている白米や醤油、それに新鮮な魚介類の宝庫らしいからな。美味いものを探しに行く、ちょっと長めの旅行だ」
「おおっ! それは楽しみじゃわい! ワシも東方の『カタナ』という薄刃の鍛冶技術には興味があったんじゃ!」
ガンダルも腕まくりをして乗り気だ。
俺は要塞のコントロールルーム(巨大な魔石の台座)に手を触れ、推進力を司る風の魔石の出力を最大まで引き上げた。
「目標、東方神国。要塞ハイパードライブ、起動」
ゴォォォォォォォォッ!!
要塞の底面から凄まじい魔力のジェットが噴き出し、空に浮かぶ巨大な岩盤の城が、目にも止まらぬ速さで東の空へと突き進んでいく。
もちろん、要塞全体には強力な「慣性制御結界」と「防風結界」を張っているため、リビングのテーブルに置いたコーヒーの液面すら微動だにしない。圧倒的に快適な空の旅だ。
◆ ◆ ◆
数時間の超高速飛行の後。
眼下に広がっていた荒野が途切れ、巨大な海を越えた先に、美しい島々が見えてきた。
深い緑の山々と、あちこちに建ち並ぶ朱色の鳥居のような建造物。間違いなく、東方の神国だ。
「わぁ……っ! レン様、見てください! 建物が木と紙でできていますよ!」
「シッポが二つあるお狐様がいっぱい歩いてるーっ!」
クレアとシロがテラスから下界を見下ろしてはしゃいでいる。
俺も新しい食材への期待に胸を膨らませていた、その時だった。
『ピピッ! 前方より、急速接近する高位魔力反応あり』
防犯システムが警告音を鳴らした直後。
雲を突き破り、要塞の目の前に巨大な影が立ちはだかった。
西洋のドラゴンとは違う、蛇のように長くうねる胴体を持つ、青緑色の『東洋龍(水竜)』だ。そして、その頭の上には、巫女服のような装束を着た凛々しい黒髪の少女が乗っていた。
「止まれ、正体不明の浮遊城よ! 私は東方神国・第一神子たるサクヤ! 貴様らの目的は侵略か!?」
少女が、手に持ったお札を構えて鋭く睨みつけてくる。
どうやら、巨大な要塞が超スピードで飛んできたため、国の防衛隊(?)にガッツリ警戒されてしまったらしい。
「侵略ねぇ……」
俺はテラスの縁に寄りかかり、のんびりとあくびをした。
「そんな面倒なことしないよ。ただ、美味い飯と新しい温泉を探しに来ただけの、しがない旅行者だ」
新しい舞台、そしていかにも強そうな新しいキャラクターの登場。
マンネリ気味だった俺たちのスローライフに、東方の地で新たな風が吹き込もうとしていた。
お読みいただきありがとうございます!
「マンネリ気味? じゃあ家ごと東方へ引っ越そう」
ということで、舞台を一気に変えて新章「東方神国編」のスタートです!
面倒な荷造りも退去費用もゼロで家ごと移動できる空中要塞、まさに最強のキャンピングカーですね(笑)。
そして、いきなり登場した竜乗りの巫女少女。果たしてレンはどう対応するのでしょうか?
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