第31話「空飛ぶキャンピングカーの前に巨大竜(ドラゴン)が出現。〜周囲の酸素を奪って酸欠にしたら、極上のステーキ肉になって落ちていった〜」
無人島のプライベートビーチで究極のバカンスを満喫した俺とクレアは、空飛ぶキャンピングカーで『空中要塞』への帰路についていた。
「はぁ〜、すっごく楽しかったです! レン様、また海に行きましょうね!」
「ああ。キャンピングカーのバッテリー(魔石)もまだまだ余裕があるし、今度は別の街に温泉旅行でも行くか」
助手席でご機嫌に笑うクレアを見ながら、俺は鼻歌交じりにハンドルを握っていた。
高度数千メートル。雲の上を滑るように走る(飛ぶ)ドライブは、揺れ一つなく超快適だ。
しかし、その平穏は突如として破られた。
『ピピッ! 前方より巨大な熱源と高位魔力が接近中。衝突まで残り十秒』
ダッシュボードに組み込んだ探知魔道具が警告音を鳴らした直後。
前方の真っ白な雲海が大きく割れ、真紅の鱗を持つ巨大な生物が姿を現した。
「グルルルルォォォォォッ!!」
「きゃあああっ!? レ、レン様! あ、あれは……『暴炎竜』!? Aランク上位の空の王者です!!」
「……またデカいのが出たな。俺のドライブの邪魔をする気か」
フレア・ドラゴンは、銀色に光る俺たちのキャンピングカーを『見慣れない縄張り侵入者』と認識したらしい。
巨大な顎をカッと開き、その喉の奥でチロチロと地獄の業火を圧縮し始めた。
空気を焼き焦がす極大の『竜の息吹』を放つ気だ。直撃すれば、城の城壁すら一瞬でドロドロに溶けるだろう。
「レ、レン様! 避け――」
「直進でいい。燃えるもんなら燃やしてみろ」
俺はアクセルを踏み込んだまま、左手を窓の外に突き出した。
イメージするのは、大気の成分操作だ。
空気の約2割は『酸素』、約8割は『窒素』でできている。
俺は【土魔法・元素分離】を応用し、ドラゴンの顔の周囲半径50メートルの空間から、瞬時に『酸素』だけを完全に抽出して奪い去った。
直後。
ドラゴンが渾身のブレスを吐き出そうと、大きく息を吐き出した。
「ガアアアァァ……プスッ」
「……え?」
クレアが目を丸くした。
ドラゴンの口から出たのは、火炎ではなく、黒い小さな煙だけだった。
当然だ。火が燃えるためには『酸素』が絶対に不可欠である。俺が周囲の酸素をゼロ(純粋な窒素空間)にしたため、最強のブレスは着火すらできずに不発に終わったのだ。
「ギ、ギャ……?」
自分の最強攻撃が出ないことに困惑するドラゴン。
しかし、酸素がないことの真の恐ろしさはそこではない。
「ブレスを吐こうと、思いっきり『深呼吸』したよな? 酸素ゼロの空間で」
「ガ……ッ!? カハッ、ヒューッ……!!」
フレア・ドラゴンの瞳からスッと焦点が消えた。
一呼吸で肺の中の酸素分圧が急激に低下し、脳が瞬時に酸欠状態に陥ったのだ。理科の実験で習う『窒素酔い・急性低酸素症』である。
「グルゥ……」
空の王者は、そのまま白目を剥いて完全に気を失い、重力に従って真っ逆さまに落下していった。
「よし、落ちる前に回収だ。あれだけデカいと、肉が何トン取れるか分からないからな」
俺はキャンピングカーを急降下させ、落下していくドラゴンの巨体を【土魔法・亜空間収納】で丸ごと吸い込んだ。
戦闘時間、わずか数秒。
「……あ、あの……レン様。今、何が起きたのでしょうか……?」
「ん? あいつが勝手に息継ぎに失敗して気絶しただけだ。ラッキーだったな」
「息継ぎに失敗して落ちるドラゴンなんて、世界中のどの文献にも載ってません……」
クレアが遠い目をしているが、気にしないでおこう。
「これで今夜の夕食は『ドラゴンの極上厚切りステーキ』に決定だな。ガンダルの爺さんも、また泣いて喜ぶぞ」
「はい……! もう、レン様と一緒なら、魔王が来ても食材にしか見えなくなってきました……!」
俺たちは笑い合いながら、キャンピングカーの速度を上げた。
Aランクのドラゴンすらただの「空飛ぶお肉」に変えてしまう俺の理系魔法。
究極の食材を手に入れ、空中要塞への帰路は、最高にハッピーなものになった。
お読みいただきありがとうございます!
「ドラゴンのブレス? 酸素を無くせばただの不発弾です」
圧倒的な強さを誇る空の王者も、酸欠には勝てませんでした。
また一つ、空中要塞の冷蔵庫に極上の食材(ステーキ肉)が追加されましたね!
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