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bdqp  作者: 山本さん
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首無し騎士は頭を垂れた④

 ガリ……ガリ…………ガリ。


 ガイガーカウンターの無秩序なテンポに耳を傾けながら、イヴァルノンはクインルと共に南へと向かった。

 断末魔が響き渡る、採れたて新鮮な海産物を処理している港から海沿いに南東へ向かって行くと、ゴミの山や骨になった残骸が流れ着いている灰色の砂浜が見えて来た。

 潮風によって赤く錆びた【危険】の看板の手前で立ち止まったイヴァルノンは、ガイガーカウンターの数値を確認して首を横に振った。

「なんてことはない普通の値だね。」

「ここら辺は法外区域みたいだね・・・皇国地域の南東端だから」

「法外区域ってなんだ?」

「地域と地域の境目に近い場所は法外区域って定めて、その区間で起きた事はどの地域もどの国も基本的には対応致しません、って事にしてるんだ。」

「例えば、隣の海陽国地域の連中がこの法外区域に遊びに来ていた火殿国の観光客をとっ捕まえて食らっても、誰も何も咎めないし、咎められないって事。」

「・・・そこに入ったら、どんなことがあっても知らねぇよ、自己責任だぞって事か?

 なんだよ、いつものことじゃん。」

「ははは、ああ、確かに。

私たちホームレスだからね」

「ただ、定住している奴らにとっては、ほいほい中に入って攫われちまっても、警備隊が助けてくれたりしないって事になるのか・・・」

「そう。視点を変えれば、犯罪を起こしやすい」

 三人の視界の中には、不法に捨てられたゴミの山に住む小さな獣族ぐらいで、法外区域を歩いている者たちは見当たらないし、建物などもない。

「本来、犯罪の温床になる法外区域の侵入を監視する塔とか、監視所が近くにある筈なんだけど・・・それっぽいのも見当たらないね。

見るからに胡散臭いおやじだったけど、目星の付け方は上手いみたいだ」

「じゃあまずは、此処から探してみよっか」




「皇国地域の悪い所は、火殿国地域でない事だ」


 設けられた椅子に断固として腰かけず、擦れる金属音を不気味に響かせながら、灰色の、二手二足用の鎧を被った黒い液体は、分厚い防護服に身を包んだ者へ背中越しにそう言った。

「数時間ぶりの言葉がそれですか・・・ヌタン殿

 伝説の火殿の英雄は寡黙でいらっしゃる」

 再び黙りこくる灰色鎧に堪らず防護服の中でパンパンに張り詰めた溜息を漏らした。


 何時間もこの調子だった。

 戦いを挑みさえしなければ襲ってこない灰色鎧は、自ずと廃工場の一室に戻った。

火殿警備隊は灰色鎧を慎重に包囲し、監視することにしたのだが、平和的に話しかけようにも、灰色鎧は実に寡黙で、警備隊の質問に答えるようなことはなかった。


 ピー・・・。

交替のチャイムが鳴り、凝り固まった腰を上げた防護服の代わりに入って来たのは、まるで古人の様な生身の男だった。七分丈のシャツとだぼだぼなズボン、黒い短髪と、血色のない不自然に白い肌。灰色鎧は頭だけ僅かに振り返った。

「あなたの身体の構成成分について調べさせていただきました。

 結果として、あなたは『ヌタン・エディアス』である可能性が高い。」

「・・・・・」

「しかし、我々には『魂』を調べる術がございません。身体が例え同じとしても、そこに宿る魂が本人であるかどうかを証明する結果ではありません。悪しからず」

「お前、火守か?」

「私はOPIC1990 火守ファルドの所有する自立―――」

「その忌々しい機械音を立てるな」

 ピタッ、と淡白な電子音が止み、OPICは時が止まったかのように固まった。

それをどう思ったのか、灰色鎧は胴体部分と連結させていたベルトを外し、兜を取った。

中身のない兜の下からは、黒い液体を纏った鬼人型の白骨が現れた。

「今の火殿はどこにある」

「お教えできません」

「殿下から賜ったこの鎧を、純金属に差し替えたのはお前たちの仕業か」

「お教えできません」

「・・・”器族“め」

 魂のない、器だけの者―――そう罵った後、白い頭蓋骨の口にすっぽりと埋もれている大きな目玉がOPICを睨みつけた。

「裏の王ウェールズマンの庇護下より私を引き剥がした・・・これは魂の冒涜だぞ。」

「―――罪深き行為であることは承知しております。

しかしこれは、あなたの失われた名誉と誇りを取り戻す機会ともなりましょう」

 OPIC自身の音ではなく、外部からの音声を通しているようだった。

「何の話だ」

「かつて、あなたを殺した者共を覚えておいででしょう。」

「・・・・・」

「皇国の創設者 不死王バルド・ストンの器が解き放たれるのも時間の問題。

 そして同時に、精霊の代替わり時期も間近に迫りながらも、火の精霊種ヴァーボ様も未だ完全に解放されておりません。

 今、我ら火守の戦力は圧倒的に劣勢なのです」



「火殿の英雄よ・・・どうか今一度、焔の下へ」


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