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bdqp  作者: 山本さん
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勇者バックアー②


「母さん、なんか魔性が使えなくなったんだけど」

「サボってないでさっさとやるの」

「えー・・・あれ?使える」

 活火山山脈の火口に連なる国、皇国。

その灼熱の町はその熱に堪える為の素材で出来ている。

 しかし、そんな建物でさえ汗をかくので、塗装剤を垂れ流す。

 建物の塗装工事はほぼ毎日で、雪国の雪下ろしの如くそれぞれの家の主婦主夫がせっせかと塗装剤を新たに塗る。それをサボった家のほとんどは溶けてしまうという。

 そんな日頃のルーチンをこなす者共が魔性の使い勝手に不調をきたす昼下がり。

(靴裏がべたべたなんだけど・・・)

 バックアーは『裸眼』で町中を散策していた。

(古人型の魔女か・・・この暑さに対策が立てられる魔性持ちなのか?)

 そんなこんな辺りを見渡しながら歩き始めた数分で

「ん」

 この世の綻びはすぐに顔を出した。


 ロストルール、失われた理。

 それは言葉通りの意味を差す。


 いつからなのか

 どうしてなのかは誰も知る由もないが

 ルールが変わった。


 ただ、神って奴があまりに杜撰なのか、新しいルールは古いルールを全て消し去るまで徹底はしなかった。今でも古いルールが記された文献やデータは続々と掘り出されてくる。

 それら知識をロストルールと呼ぶ。


 遺伝子の中に刻まれていた理が消え失せ、ぽっかりと空いたままのスペースにピタリとピースをあてがうよう、古人だけがロストルールを理解し、思い出す。

 そして身勝手に、古人はロストルールを新たに形成されたこの世に適用し、新しい理で作られたものの多くを否定する。

 ただし、その存在そのものまで消し去る程強力過ぎるものではないが

 神からの贈り物、魔性というものの発動を封じることはできる。


 これが、神殺しとも称される所以であり

 これを知る者を、狭義のロトルとされている。



 また、新しい世界にとってロトルは異質の存在なのか、新しい世界そのものが適当なのか

 ロトルの目には継ぎ接ぎした綻びが映り

 ロトルの耳には鼓膜が捩れる無音が響き

 ロトルの鼻には虚空の臭いがこびりつき

 ロトルの舌には味蕾が引き攣る無味が乗り

 ロトルの肌には魔力と呼称される圧が叩きつけられる

 だからすぐに、ロストルールではどうも説明しきれない意味不明―――おかしい何か―――を察知することが出来る。

 それが一つの、痕跡となる。


(粒子だ・・・黒い粒・・・・此処に何かがいて)


 傍から見れば誰も気になどしない、何もないただの空間であり、十字路道の真ん中だ。

 それがロトルの目には綻びに見える。道の真ん中をカーテンの様な空間ごとずるずると引き摺って歩き、引き千切ったせいで綻びとなって破れている。その破れた周りにこびりつく黒い粒子。

 空間に綻びが出来る程の存在、この世においてもあまりに大きな矛盾点。

 魔女魔男と認定するに、最も有力な要素だ。


(右に曲がった)


 首を曲げて


「おい」


 誰に向けた訳でもなく、声を出した。

 すると、一人・・・いや、一体だけがこちらを振り返った。

 黒い粒子。浮かぶ黄金色の目。その集合体。魔族だ。


「お前、魔協会員だな」


 単刀直入に言葉を放った。


 その直後


 意識が飛んだ――――――。。。。。 。 。     。 。 






「そういうこっちゃ。

 仮に大ボスへ吶喊とっかんしようって奴でも、その手前で勇者様に出くわすなんて思いやしねぇ。思わねぇってことは、対策してないってことだ。それはつまり、勝機があるってことだ。」

「へへ、お前は悪い奴だなあ、ギュビ」

「ヒェ~コポに言われたくなーい」

「どういうこったよこのやろう」

「はあ・・・くそ、やりやがった」

 覚えている会話、同じ光景、巻き戻されたかのような感覚。

 バックアーは膝を拳で叩いた。

「・・・、・・・・バック、お前は何回目だ?このくだり」

「2回目だ・・・初見殺しめ」

 言葉の意味合いと事態をある程度把握した4人が顔色を変えた。

「ムン、中に入ってな」

「むん」

 バックアーは本を取り出し、何もないページを開いた。するとムンと呼んだ小さい子が吸い込まれる様に本の中に入ってしまった。

「奴は町の中で普通にいた。魔協会員かどうか聞いた後、一瞬だった。

 姿は気体状の魔族だ。黒い粒子の集合体。宮殿方向ではなかった。周りを散策していたか、別の目的か・・」

 早口に伝えられる情報を各々で整理して、一斉に視線が壺魔人の方へ集められた。

「こんなところですね」

 そう言うと、バックアーが伝えた情報を全て箇条書きにまとめた紙を、皆の前へ差し出した。

「恐らくはその粒子状の身体を応用した魔性を使うだろう」

 特徴を見る分には近距離型っぽくないが」

「身体が粒子って事は、脳筋物理には厳しいか?」

「拡散しやすい散弾銃を使えば、かなりの確率で当たるのでは?」

「魔族なら金属に弱いだろうしな」

「念のために剣の幾つかに私の魔性を施しておきますね。」

「相手の魔性にもよるけど、俺っちの魔性も使えるかもな」

「いや、基本的には僕一人でやる。」

 バックアーはそう言い切った。

「じぃから言われているし」

「うーん、まあな・・・そりゃあ鬼畜のヨロウズはそう言ってたけどよ」

「ギュビ、いいじゃねぇか。珍しくバックがやる気なんだし。

 成長途中の勇者様を時に厳しく見守るのも御守りの仕事さ」

「勇者だなんて呼ぶのは止めてくれよ・・・僕はそんな仰々しい肩書きなんて欲しくないんだ。

 背徳者と呼ばれるぐらいがちょうどいいんだ」

 そう呟くと、バックアーは先程と同じ様に、レンズのない眼鏡をつけて、しかしながら力を込めて立ち上がった。

「みんなは一般民の避難を誘導してくれ。」



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