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第三章 クレバスの男、顕現す

 筋力広場の巨大な鉄門が、重々しい悲鳴を上げて左右に開かれた。その瞬間、広場を包んでいた何万もの男たちの咆哮が、嘘のようにピタリと止んだ。汗の蒸気で白く煙っていた霧が、圧倒的な圧によって瞬時に吹き飛ばされ、ただ一人の男の輪郭を鮮明に浮き彫りにする。「りょ、呂布だ……! 呂布奉先が来たぞ――っ!」誰かが喉を詰まらせたような悲鳴を上げた。現れた男の肉体は、これまで広場に集っていたいかなるマッスルエリートとも一線を画していた。全身の筋繊維がまるで大地の地殻変動のように隆起し、その一つ一つの筋肉の境界には、深く、暗いクレバス(深い溝)のような筋線維が刻み込まれている。それはただ鍛えただけでは決して到達し得ない、選ばれし天賦のバルク。見る者を本能的に平伏させる、圧倒的な鬼神の肉体であった。 かつては中原で赤兎馬を駆り、方天画戟を振り回して「人中の呂布」と恐れられた男。彼もまた、麗蓮姫の「勝ったものに麗しき私を捧げます」という一言に魂を狂わされ、武器も名誉もすべてを中原に捨てて、この翠嶺国へと移住してきた一人であった。



「フン……。どいつもこいつも、浅い。浅すぎるぞ」



 呂布は一歩を踏み出すたびに、その規格外の体重と脚力で石畳の床をピキピキとひび割れさせた。彼は、自慢の肉体をさらに誇示するように、ゆっくりと両腕を広げて胸筋を大きく膨らませた。その圧倒的な質量を前にしては、丸太のような腕を誇っていた関羽でさえも、一回り小さく見えるほどであった。「あの鍛え抜かれたクレバスのような体と、全身の隆起……忘れるはずがない! あれぞ真の、人中の鬼神だ!」張飛がレッグプレス機から跳ね起き、驚愕に目を見開く。広場に集うすべてのマッチョたちが、その神域のバルクにただただ圧倒され、言葉を失っていた。



 その時、それまで退屈そうに爪を弄んでいた麗蓮姫の瞳が、初めて微かに動いた。彼女はテラスの縁に美しく白い手をかけ、身を乗り出すようにして、眼下で圧倒的な存在感を放つ呂布を見下ろした。「ほう……。少しは骨のあるバルクが現れたようね」姫の唇が、ほんのわずかに吊り上がる。その一瞬の反応を見逃さなかった呂布は、低く笑い声を漏らし、自らの太い首をゴキリと鳴らした。「麗蓮姫……。貴女のその冷徹な視線、すべて俺のこの肉体で受け止めて見せよう。中原の覇権などという安易な玩具は、すべてこの筋肉の溝に沈めてきた。俺が勝つ。そして、貴女をこの腕で抱き上げるのは、俺のバルク以外にあり得ん」呂布の参戦により、翠嶺国の筋肉至上主義は、ついに頂点へと達しようとしていた。しかし、これほどの最強の個が一国に集中するという異常事態を、周囲の国々がただ指をくわえて見ているはずがなかった。筋肉の狂気の裏側で、不穏なる贅肉の陰謀が、静かに動き始めようとしていたのである。


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