第493話 ご褒美の使い道
半年にわたる戦いを終えたアルトイリス軍はようやく武装を解き、今後しばらくは休養、もしくは故郷に帰ることを許された。
「あぁ、やっと戦いが終わったよ。野営ばっかりの日々は、しばらく勘弁してほしいな……」
「それよりも見ろよこのどっしりとした金貨の袋! 数年は遊んで暮らせるぜ!」
「希望者がいれば引き続き正規軍で雇ってくれるらしいわ! わたし、応募してみようかな!」
今回の戦いでどの兵士もかなりの大金を褒美として渡されたため、すっかりほくほく顔で、どのように使おうか仲間たちの間で楽しそうに語り合っていた。
また、地獄の訓練を乗り越えた後、幾度もの戦いでリクレールの指揮下で大勝利を重ねて来たことに自信を得た者も多く、臨時報酬はないとはいえ、今後も正規軍としてアルトイリス軍に残りたいと希望する者も大勢いた。
確かにずっと野営が続く生活は安心できなかったし、常に厳しい軍紀に晒される緊張感や、実際に命のやり取りをする恐怖もあったが……それらを乗り越え、帝国各地で「あのアルトイリス軍の兵士」というだけで一目置かれ、帰還した際には英雄の如き歓迎を受けたことで、アイデンティティを大いに刺激されようで、元の「ただの一般人」や「貧乏傭兵」に戻るよりは、今後も誇りあるアルトイリス軍の一員でいたかったのだった。
そして、そんな彼らをカモる……もとい、気持ちよく出費してもらうため、一人の男が立ち上がった!
「さあさあ、さあさあ、偉大なるアルトイリス候の兵士諸君! 君たちに今一番必要なものは何か、某が当てて進ぜよう! それは……戦いで傷つき、疲れ果てた身体を、安全かつ快適に休ませることができる「我が家」だ!」
少しだけふっくらしているガムランが、少しだけ着飾った女性の役人たちを引き連れて、芝居がかった口調で声を張り上げていた。
「兵士諸君の中には、このアルトイリスで自らの国……すなわち、我が家を持たぬ者もいることだろう! おそらく諸君らは、しばらく安宿か、もしくは酒場などに転がり込み、侯爵からの褒美で暫く遊んで暮らすことを考えているかもしれないが、一寸待ちたまえ! 今なら、たった金貨20枚で、家を買うことができる! それも、帝都にあるような狭苦しい集合住宅ではなく、れっきとした一軒家だ! あらかじめまとまった金を払えば、今後一生、屋根のない生活とはおさらば! それに、激戦を潜り抜けた英雄たちともなれば、男も女も、結婚相手として引く手あまた! 家はすぐに、二人の愛の巣となるのである! もちろん、追加の金でより高額な家を買いたいという相談にも乗るし、のどかな村で畑付きの家が欲しいという要望にもお応えしよう! しかし、残念ながら数に限りがある、早い者勝ちだ! さあさあ、さあさあさあ!」
どうやらガムランは、彼らの大部分が東から来たことで、この地に生活基盤がないことを見越して、不動産売買を始めたようだ。




