第488話 勝者への褒美
リクレールとザイドリッツの表彰が終わり、新たな聖武具の使い手が誕生したことへの熱気が冷めやらぬまま、論功行賞は続いた。
アルトイリス侯爵やエスマイル伯爵と同様、重要な役割を果たした有力諸侯ということで、コンクレイユ侯爵ベルリオーズと、ユルトラガルド侯爵ランツフートが呼ばれ、彼らもまた反乱を起こした諸侯から没収した領地が分け与えられることとなった。
ユルトラガルド侯爵家はブレヴァン侯爵家と長年領土紛争を抱えていた金鉱山だけでなく、激戦地だったラヴェルとその周囲の土地まで支配を認められることとなった。
今回の内乱で最も被害を受けたのもまたユルトラガルド家だったので、新たに得た土地の生産力だけで言えば、最も大きな褒賞を貰ったと言える。
一方コンクレイユ侯爵家は、ロディ渓谷で戦死したヴィシーニの治めていた、ウェアテル城を中心とするシェムスタ侯爵領を丸ごと与えられた。
そして、今回の内乱で命がけでレオニスを帝都から脱出させ、北方戦線でもザイドリッツに並ぶ功績を挙げたビュランが、新たなシェムスタ侯爵に任じられることとなる。
それ以外では、リクレールについて戦ったデルセルトやフルトヴェングラーなど、故郷を失った者たちが、故郷の土地を回復したほか、途中で仲間になって活躍したエルヴィユ侯爵サロメも皇帝から正式に侯爵家の称号と領地を継ぐことを認められた。
「ははっ、ようやくか…………ようやく故郷に帰れるんだな、俺は! あの時リクレール様について正解だったぜ」
「そうですな、皇帝陛下はもちろん、リクレール様は頭が上がらんな」
「おーっほほほ! やったわ、やりましたわ、成し遂げましたわ! ついてきた部下たちに苦労させた分、めいっぱい甘やかしますわ!」
思惑は様々あれど、彼らはリクレールに従って勝馬に乗れた……いや、自ら勝馬となれたことで、リクレールには心の底から感謝していた。
彼らは今後も、大規模な戦いがあればリクレールの指揮下で戦いたいと希望するだろう。
また、今回の内乱では全く戦うこともせず、物資の供給もしなかったが、それでも「マルセラン側につかなかった」と言うことで、モントレアル侯爵マクシマンは、フォントラル侯爵家に取られていた国境の鉄鉱山を領有することが認められた。
(一時は劣勢の側について大丈夫かと不安であったが……本当に、兵を出すポーズだけで、長年の懸案だった鉄鉱山がわが手に戻ってきた。あの時説得を聞いておいてよかった)
一時期はリクレールとの相互防衛協定の履行に難色を示していたマクシマンだったが、レオニス側に協力する姿勢を見せるだけでもよいとエレノアに説得されたことが功を奏し、見事最小限の労力で勝馬に乗ることができた。
本人としてはやや複雑な気持ちだったが、これで失われた自領の回復にまた一歩近づいたのだった。




