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第486話 論功行賞

 その後、帝国の大多数の諸侯や貴族がリヴォリ城に一時的に集まっているということで、レオニスはこの場で今回の内乱とそのおまけの都市同盟戦の論功行賞をこの場で執り行うことにした。

 本来は帝都タイラスルスに戻って大々的にやるのが正しいのだが、リクレールをはじめとする諸侯もそろそろ自分の領地の経営が滞り始めているので、1日でも早く動員を解除させてあげたいというレオニスの心遣いであった。


「まず最初に、この内乱での最大の功労者は……アルトイリス侯爵リクレールと、エスマイル伯爵ザイドリッツである。両名、前へ」

「はっ」「はっ」


 今回の内戦において、この二人のいずれかが欠けていたら、西帝国は僭称者マルセランの手に落ちていたかもしれない。

(※もっともエスペランサからすれば、リクレールだけで十分だと考えているが)

 そのため、この両者が真っ先に表彰されることに異論をはさむ者は誰一人としていなかった。


「リクレールを正式にアルトイリス侯爵を継ぐことを認め、更に反乱に加担した者たちから没収した領地の一部を領有することを認める。また、事前の申し出通り、アザンクール山脈の街道とその周囲の統治者不在の土地もまた、アルトイリス侯爵家の領有を認める。この度は……リエナを守ってくれたこと、そしてブレヴァン侯爵の大軍を撃破してくれたこと、誠にご苦労だった」

「ありがたき幸せ。今は亡き姉マリアに代わり、西帝国の……ひいては陛下のために尽くす所存です」


 まずリクレールは、今回の戦いの褒美として、かなり広範囲にわたる領地を貰うことができた。

 ただ、もらった範囲は、元フォントラル侯爵領や反乱側に与した一部の貴族領のほかは、ほとんど山しかないアザンクール山脈周辺の土地ばかりで、一見すると広いだけであまり得したようには見えなかった。

 しかし、これはリクレール自身が望んだものであり、彼にはそれなりの狙いがあった。


(ひとまずこれで、アザンクール山脈の交通の要衝は僕が抑えた。街道を整備して、交易を活発にすれば、それだけで多大な利益を生むはず……!)

『主様はこれで「黄金の生る樹」の種を手に入れられましたわ。愚かな諸侯は、主様を無欲だと嘲笑うことでございましょうが、その真の効能を知った時、その笑いは絶望の叫びに変わるのですわ』


 東帝国ミュレーズ家の葬儀に向かう際に通った、アザンクール山脈を東西に貫く街道は、今は荒れ果て、宿場も砦もなく、山賊や魔族、魔獣が闊歩する危険地帯であるが、もしここをきちんとした交易路に整備しなおすことができれば、アルトイリス侯爵家は西帝国の経済と軍事、いずれの首根っこも抑えられるだろう。


(ものすごくお金はかかるだろうけど、お金ならたくさん貰ったし、労働力も大勢確保した。ああ、今から整備計画を練るのが楽しみだな……)

『……主様が楽しそうで何よりでございます』


 そんなふうにリクレールが頭の片隅で楽しそうな思考に耽っていると、横ではザイドリッツへの表彰が行われていた。


「ザイドリッツ……そなたがいなければ、私は生きてこの場に立つことはできなかっただろう。また、そなたの遊牧民への融和政策が功を為し、帝都を奪還できるほどの戦力を集めることができた。この功績はリクレールに勝るとも劣らない。よって、ザイドリッツにはエスマイル「侯爵」の地位を授け、同じく反乱に加担して没収した諸侯の土地のいくつかの領有を認める」

「俺が、侯爵に……! ありがたき幸せ!」


 ザイドリッツが侯爵に格上げされるのは、その功績から誰の目にも明らかだった。

 それに、ヴィクトワーレ争奪戦はここでも尾を引いており、リクレールの方が貴族として格上の状態が続くのはよくないという事情や、すでに帝国内部で始まっている貴族や官僚同士の派閥争いで、片方の救国の英雄がもう片方と比べて格が落ちることは、色々都合がよくなかったのである。


 ともあれ、これで地方の貴族にすぎなかった彼が、西帝国を代表する有力諸侯に大きく飛躍することになるのだが……レオニスから彼への褒賞はこれだけではなかった。


「それとザイドリッツ。そなたなら……きっとこれを使いこなせるかもしれない。誰か「例のもの」をこちらに」


 そう言ってレオニスが手を叩くと、何やら兵士が数人がかりで大きな荷物を運んできたのだった。

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