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第484話 中途半端

 講和条約の締結式が終わった後は、戦いが終わったことを祝して、リヴォリ城内で兵士も含めて大規模な宴が開かれたのだが、リクレールはシャルンホルストとヴィクトワーレと共に、個別にレオニスから話がしたいと呼び出され、リヴォリ城の一角にある小さな庭園にやって来た。


「リクレール、それにシャルンホルスト、今回の戦いにおいても君たちの活躍は聞いたよ。本当によくやってくれた。だからこそ……途中で止めてしまって本当にすまなかった」

「そんな、頭を上げてくださいレオニス殿下! レオニス殿下が都市同盟との講和を決断したのも、お考えがあってのことですよね! だったら今は、その決断を誇ってください! 僕は西帝国の侯爵であり、皇帝陛下の臣下なのですから、御下命に従うのは当然のことです!」

「そ、そうか! それを聞いて安心した! リクレールがせっかく提案してくれた作戦だったから、思うところもあるかもしれないと……」

「まあ結果的に自由交易都市同盟は屈服したし、冬に東帝国の穀物が入って来なくなる心配もなくなりました。案外丁度良かったんじゃないでしょうか」


 庭園の花壇に囲まれたテーブルで紅茶を飲みかわしつつ、レオニスは改めてリクレールの作戦を自分の判断で勝手に途中で終わらせたことを謝罪したが、リクレールは不満そうな顔を一切しておらず、むしろレオニスの決断に理解を示した。

 シャルンホルストも、なんだかんだで結果オーライでよかったと言ったことで、レオニスは彼らの忠誠を繋ぎとめることができたことにほっとした。


 何しろレオニスにとってリクレールもシャルンホルストも、そしてヴィクトワーレも、これからの西帝国を運営するうえでなくてはならない人材であり、今彼らの機嫌を損ねてしまえばレオニスの地位は再び危うくなることをよくわかっている、のだが…………


『中途半端な対応でございますね。皇太子殿下にとって、主様は今や手放すことができない重要な戦力故、こうして自ら頭を下げられたのでしょうが……だからと言ってこの遺恨が消えるわけではありませんわ』

(遺恨って……僕は別にレオニス殿下のことは恨んでいないよ。ちょっと残念だったなとは思うけど)

『それは主様のお心が深いからですわ。もし相手が詰まらぬ人物であれば、皇太子殿下は今後軽んじられることとなりましょう。なぜなら、わたくしたちは弱みの一つを握ってしまったからにほかなりません。後になって事情が変わることなど、いくらでもありましょう。そのたびに頭を下げたのでは、臣下から軽んじられてしまうでしょう。皇太子殿下がなすべきだったのは、事情が変わったことを論理的に説明することでございます』

(なるほど……僕はそうはならないよう気を付けなきゃ)

『はい、次期皇帝がこの先どう変わるかは、本人と周囲次第でございますが、主様にはわたくしが付いております。主様が立派な暴君になれるよう、これからもしっかりお教えいたしますわ』


 相変わらずエスペランサからのレオニス評は辛辣であったが、リクレールとしては彼のことをまだそこまで嫌う気にはなれなかったし、むしろこうして素直に自分の非を認めてくれた誠実さを評価したいくらいだった。

 それに、今回のことは自由交易都市同盟の裏工作の力を見抜けなかった自分にも非があると考えていて、改めてトライゾンが彼らへの警戒を怠るなという教えを深く胸に刻むことになる。


(大丈夫、レオニス様はいい人だ。アゴスティーニのことは徐々に遠ざけるよう工作して、きちんとした人物たちで固めていけばいい。ベルリオーズさんやランツフートさんがいれば、後ろ盾としても十分だ。それに、あの子がいれば……)


 その後リクレールは一言二言会話を交わした後、レオニスに「会わせたい人がいる」と言って一時的に席を外した。

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