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第483話 講和条約

 自由交易都市同盟との停戦から10日後…………リヴォリ城にて西帝国と都市同盟の講和条約締結式が行われた。

 このために次期皇帝レオニスが、一足先に帝都へと撤退したビュランやザイドリッツたちと共にリヴォリ城に入城するとともに、都市同盟からは評議員のリヤンドールが代表として来訪し、最終的な講和条件を合意することで、双方が正式な書類に署名した。


 講和の条件は、はっきり言って都市同盟としてはほぼ帝国に屈服したも同然であった。

 300万リブラの賠償金支払い、食料品以外の品目の関税引き上げ、帝都タイラスルス内での出店規制、などなど……不幸中の幸いだったのは、領土割譲を要求されることがなかったことだが、アマンディやハキナトリアなどで帝国軍が捕虜にした民間人は結局返還されることなく、彼らは廃墟と化した都市をもう一度初めから作り直さないといけない。

 そして、講和条件の中には「西帝国内乱に加担した責任者の処罰」が含まれていたが…………


「こちらが、僭称者マルセランとブレヴァン侯爵家を支援し、西帝国に干渉しようとした有力者の首でございます」


 そう言ってリヤンドールと議員たちが差し出したのは……評議員のムジェロとアンジョルラス、そして帝都でザイドリッツが捕え損ねた工作員の商人バイユーと、その親である評議員ローレルリンの首であった。

 あっさりと差し出される首が並ぶのを見て、レオニスは思わず渋い顔をする。

 リヤンドールの口調から、彼らが蜥蜴の尻尾きりのような感覚で、責任をすべて負わされて処刑されただろうことが容易に想像できたからだ。


「なるほど、こいつらの首を持ってくるとは、わかってんじゃねぇか」

「ザイドリッツ、今は軽口をたたくな」

「あいよ……」


 あれだけふてぶてしい態度だったバイユーさえも、このように始末してしまったということは、おそらく都市同盟もそれなりに腹をくくったのだろう。

 また、彼らのみならず、その一族もろとも全員が捕えられた末に、民衆裁判で死刑になったとのことであり、特にフランシールの身柄を勝手な判断で匿ったムジェロとその一家は、使用人に至るまでが全員連座で処刑され、その財産は全て賠償金の支払いに充てられたとのことだった。

 この結末からして、裕福な実家を捨ててフランシールと共に逃げ出したムジェロの息子フォルゴーレは、危機回避の嗅覚に非常に優れていたことがよくわかる。


 ともあれ、講和条約は双方の合意で正式に締結され、調印式に出席していた帝国の将軍や貴族たちは、ほぼ自分たちの側の勝利で終わったことを喜び、しきりに「皇帝陛下万歳!」と叫んでいた。

 また、これでようやく本当の本当にすべての戦いが終わり、平和が戻ったのだから、彼らの喜びもひとしおであった。

 もっとも……


(一度始めた戦いを、前線への相談もなしに無理やり止めるなんて……皇帝の命令がいかに重いか、レオニス殿下は分かっているんだろうか? いい人なのは確かなんだけど、マルセランみたいな操り人形にならないといいんだけど)

(ヴィクトワーレの話では、リクレールは停戦の際に、独断で敵に多額の賠償金の請求したという……今回はレオニス様の側に立って戦ってくれたが、もしレオニス様をこの先軽んじるようなことがあれば……)

(あの小僧、随分聞き訳がよいかと思えば、都市同盟を脅して大金をせしめたとは、やるではないか。今後は奴に加担すべきか、それとも、エスマイル伯とのパワーバランスを拮抗させるか、いずれにしろ厄介なことこの上ない相手だ)

(帝国の野蛮人ども……今に見ていろ。我が国を好き放題蹂躙したことを、いずれ後悔させてやる)


 リクレールも、ビュランも、アゴスティーニも、そしてリヤンドールも…………誰もがこの結末に心の中で不満を持っている。

 このような決着は、おそらく今後大きな禍根を残すことだろう。

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