↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
481/510

第481話 辞任

 もうすぐ士官学校に帰ることができることができる喜びであふれる生徒たちは、この日リヴォリ城の大食堂で揃って夕食を摂っていた。

 半数の東帝国出身の生徒たちにとって、西帝国の味気ない食事は初めのうちは大いに不満だったが、行軍中の食事がほとんど日常だった日々を経験した今、きちんとした食事を屋根の下で食べられることがどれだけ幸せな事かを実感していた。

 そんな賑やかな雰囲気の中……生徒たちに思いもよらない通達がなされた。


「みんな、よく聞いてちょうだい。私、ウルスラ・ フォーコンプレは、今日を以て正式に教師の任を解かれ、帝国立エルネスト記念士官学校を辞職することになったの」

『えっ……!?』


 ウルスラの言葉に、生徒たちは時間が止まったかのように動きが凍り付き、食器を落とす生徒も何人もいた。


「な、なんで!?  どうしてウルスラ先生が辞めるの!?」

「そうよ!  なんでよ! なにかの冗談ですよね先生っ!」

「俺たちに悪いところがあったら謝るから!」

「みんな落ち着いて、ね。私だって、教師を辞めたくはなかったんだけど……どうやら、それが許される状況じゃなくなってきたの」


 そう言うと、ウルスラは隣に座っているローレルの方をちらっと見ると、ローレルもため息をついてどこか虚しそうな顔をした。


「信じられんかもしれないが、ウルスラを辞めさせる決定をしたのは、ほかならぬ校長だ。どうやら白竜学級の生徒連中が士官学校に戻った後、自分たちのところの教師ばかり犠牲になったのは不公平だと騒ぎ立てたようでな、そこからさらに親の貴族たちが士官学校の上層部の対応を批判したようだ。場合によっては、来年以降の寄付金を取りやめると脅してな。こいつが教師になった事情から、以前からあまりいい顔をされなかったが……結局、ウルスラも辞めさせて名目上の両成敗とごまかしたんだと」

「はぁっ!? ふざけんなっ! そんなクソみたいな理由でウルスラ先生をクビにするのか!? 校長の奴め、許せねえ!」

「そうよそうよ! いっつもデュカス先生や白竜学級ばっかり贔屓する癖にっ! 今から校長室に騎兵突撃してやるっ!」

「いいこと思いついた、サンシール。お前のペット、校長室で放し飼いにしないか?」

「あんなの食わせたらケルベロスがおなか壊すだろ、いい加減にしろ」


 当然のごとく紫鴉学級の生徒たちからは非難轟々だった。

 ローレルが語った通り、どうも白竜学級の生徒たちのみならず、その親の貴族たちが、今回の大惨事に対して大変ご立腹のようだ。

 いくら実戦演習と言えども、ほかの学級の生徒たちと戦って、一方的に被害を被ったのが許せないようで、紫鴉学級側にも何らかのペナルティを課すよう圧力を加えたようだ。


 ウルスラの元には、ちょうど帝都タイラスルスが無血開城したころに学校からの辞令が届いており、後日士官学校に戻って正式に解雇となることが決定済みとなっている。


「みんな、気持ちは嬉しいけど……これはもう決まったことなの。だから、私は潔く教師を辞めるわ。私が教えたことが無駄にならないように、あなたたちは立派な軍人になるために勉強に励んでちょうだい」


 そう言って笑うウルスラだったが……その笑顔はあまりにも悲しそうで、今にも泣き崩れそうなものだった。

 生徒たちはそんなウルスラにどう声をかければいいかわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。