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第466話 上手くやりすぎた

 戦いが終わり、ハキナトリアの街を夕陽が染める。

 あれほど怒号と悲鳴が絶え間なく響き渡っていた無数の街路は、西帝国軍の支配下に置かれたことで完全に沈黙し、逃げ遅れた市民や兵士は、逃亡できないよう議事堂のある周囲に押し込まれた。

 そんな中、今回の戦いの最大の功労者であるシャルンホルストが、本隊を率いてきたリクレールやランツフートと嬉しい再会を果たしていた。


「シャル! お疲れ様! 鮮やかに奇襲を決めてくれて、本当に助かったよ!」

「ははは、運がよかっただけさ。とはいえ、戦果が完璧じゃなかったのが悔やまれるな……連中は、自分たちだけすぐに逃げられるように、議事堂の地下に水路を作ってやがった。おかげで、肝心の有力者どもを取り逃がしちまった」

「仕方ねぇさ。むしろ、ここまで出来りゃ上々だ。難しい奇襲作戦を成功させられるくらい立派な息子を持って、俺も鼻が高いぞ!」

「親父……よせやい、照れるじゃないか」

「おっ、じゃあいつも通り褒めてやろうか、ほれほれ!」

「あででででで!? か、関節はヤメロォ!?」

「あ、あはは……相変わらず親子仲がいいね」


 ユルトラガルド家の親子の微笑ましいやり取りを眺めつつも、リクレールは部隊長たちから改めて現在の状況について報告を受けていた。


 ハキナトリアの南区画を守っていた守備兵3000人は半数が混乱の中まともに戦えず戦死し、負傷兵も多数、残りも跳ね橋が開脚したことで逃げられなくなり、武器を捨てて降伏した。

 そして逃げ遅れた市民の数も10万人を超え、彼らもまたアマンディの住人と同様帝国領に強制移住させられることになるだろう。


 それだけでなく、南区画は町の中心となる議事堂があるように、住む者は北区画に比べても裕福で、運河沿いには大富豪の館がいくつも立ち並んでいる…………それはつまり、西帝国並みと言われる自由交易都市同盟の財産の大半を接収できるということだ。

 リクレールはあらかじめ、自由交易都市同盟には無条件降伏か戦争かを突き付けていたため、徹底抗戦を選んだ彼らに略奪を免れる慈悲は与えられなかった。


(ふっふっふ、これは凄い収穫だ……! 兵士たちに追加のご褒美を上げても有り余るくらいだし、これを領内の開発に回せたら、きっと今の3倍……いや、4倍は豊かになるよね! 労働力もたくさん手に入れたし、これはもう今まで温めていた領地の整備をやりまくるしかない!)

『主様……お気持ちは分かりますが、にやけ顔が出てしまっていますわ』

(おおっと……)


 莫大な臨時収入で領内の内政をフル加速する妄想をフル加速でしはじめるリクレールに、エスペランサもややあきれていたが、ともあれここまでくればもはや勝ったも同然であり、ここから先はじっくり圧力をかけつつ北区画を攻略すれば、それで終わるだろうと誰もが考えていた。

 ところが、珍しく楽観的になっていたリクレールに、ランツフートが神妙な顔で話しかけて来た。


「リクレール、それにシャルン、確かにお前たちは今回の戦いでとてもうまくやった。いた、上手くやりすぎた」

「うまく……」「やりすぎた?」


 ランツフートの言葉に、リクレールとシャルンホルストはお互いに顔を見合わせる。


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