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第464話 ハキナトリア攻略戦 5

 港からアルトイリス軍が上陸したのを皮切りに、議事堂の陥落、城門の占領、そして外で待ち構えていた主力の突入により、ハキナトリア守備隊が南区画を守ることは不可能となった。

 無力な市民たちはただひたすら逃げることしかできなかったが、海や運河に囲まれたこの街は敵の侵入を阻止するのには非常にうってつけだが、いざ逃げるとなると、行先が制限されてしまう。

 そんな彼らが向かうことができる場所はただ一つ…………まだ攻撃に晒されていない北区画だ。


「おい、何をやっているんだ! 早く前に進めよ!」

「すぐ後ろには敵が迫っているんだぞ! 前の連中は何をぐずぐずしているんだ! 邪魔をするなら運河に放り込め!」

「バカ野郎っ! こんなにデカい荷物抱えてるんじゃねぇっ!! 道がふさがるだろ!!」


 街区を二分するミッドルタ大河にかかる三本の橋には、たちまち大勢の避難民が殺到し、北区画に逃れようと必死にになっている。

 しかし、10数万人もの人間が一度に殺到すれば、当然橋の上で渋滞が発生し、大混乱に発展する。


「うぎゃあああぁっ! 押すな!」

「お母さぁん、どこぉ?」

「どけぇ!! 邪魔だぁっ!!」

「お願いです、通してください! 子供がいるんですっ!」


 橋は完全に通行不能になっただけでなく、これから橋に向おうとする人もまだまだ大勢おり、3つの橋周辺の街路もまた大勢の人で埋め尽くされた。


 これにより最も割を食ったのは、南区画の城壁から撤収しようとしていた守備隊だった。

 彼らは唯一の撤退路である橋が通行不能になってしまい、更にすぐ後ろからアルトイリス軍が迫ってきていることもあって完全に恐慌状態に陥ってしまい、なんと道を塞ぐ市民に武器を振るって、無理やり道を切り開こうとし始めたのだ。


「道を開けろ! 開けないと殺すっ!!」

「冗談じゃない、守備隊なんだから俺たちを守れ……ぎゃあぁぁっ!!??」

「ウルセぇっ!! 俺たちはお前らのような庶民とは違うんだ!!」


 このような光景に、敵を追い詰めるアルトイリス軍も却って困惑するばかりだった。


「なんて奴らだ……! 逃げるために自分たちが守る一般人を殺してやがる!」

「い、いくらなんでもあんまりだよっ! 早く止めなきゃ!」


 ゼークトとスーシェは、自国民を殺してでも逃げようとする守備隊を止める為、慌てて敵兵の背後を突いて攻撃する。

 彼らはこれ以上の不要な被害拡大をさせないために、敵兵に対して武器を捨てるのであれば命までは取らないと降伏を促した結果、何とか一部の敵兵が逃げ切れないことを悟って降伏するが、その言葉すら聞こえないほど混乱した敵兵はまだ大勢いたため、これ以降も延々と対処に当たらざるを得なくなった。

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